2018年3月22日木曜日

5_154 深海から陸の環境を 3:シリカの循環

 層状チャートは、シリカが主成分となっています。そのシリカの地球での循環を考えると、海洋での層状チャートの堆積が果たす役割が理解できます。その役割を定量化するアイディアがあります。

 昨年、静岡大学の池田昌之さんと共同研究者たちが、イギリスの科学誌「Nature Communicationsに、
Astronomical pacing of the global silica cycle recorded in Mesozoic bedded cherts
(中生代層状チャートに記録された全地球的シリカ循環の天文学的周期)
という論文を報告されました。
 この論文では、層状チャートが大陸の風化速度の指標になるという可能性を指摘されています。本シリーズで示しててきた、層状チャートのでき方がその原理になっています。層の形成機構はまだはっきりしていないのですが、陸から遠く離れた遠洋で生物のシリカの殻が、深海底に堆積物してできたものがチャートです。
 池田さんたちは、岐阜から愛知にかけて分布している約2億5千万年前~1億8千万年前の層状チャートの堆積速度を調べました。その結果、2つのことが明らかになりました。
・チャートになっているシリカの堆積量が、全海洋の9割を占めること
・シリカの堆積速度に周期性があること
が、重要な発見となっています。
 ひとつ目の発見を見ていきましょう。海洋にあるシリカのうち、深海底でチャートになるのはどの程度なのか、そしてそのシリカがどこから由来しているかに関する発見が、ひとつ目の内容です。
 シリカの海底への堆積は、いろいろな堆積のメカニズムがあるはずです。砂粒が沈むようにシリカも海底に沈降、沈殿していくことがあります。もちろんプランクトンの殻として沈むこともあります。成分ごとに海水中の滞留時間や沈降速度など細かく検討していく必要があります。それを考える時、海洋だけでなく、大陸や大気、岩石の風化や侵食なども考慮して、全地球的に物質の循環を考えていく必要があります。このように成分ごとに、全地球的にどのような物質循環をしているかは、地球化学的数理モデル(改良版GEOCARBモデル)として計算していく手法があります。
 GEOCARBは、過去の大気二酸化炭素濃度を計算するためのモデルなのですが、炭素や硫黄、ストロンチウムの同位体組成などを利用しいて、池田さんたちは推定されました。過去2億5000万年間のシリカの挙動を計算して、層状チャートの堆積した時代の大陸風化速度を推定しました。すると、チャートになっているシリカは、9割が大陸由来であることがわかってきました。つまり、海洋のシリカは大陸の岩石が溶けて河川から海に流れ込んだものを供給源としており、大半が層状チャートになっていくようだということがわかってきたのです。ですから、チャートの堆積速度は、大陸の風化速度をみる指標となり得るのです。深海底のチャートの大陸が風化が結びついていたのです。
 2つ目の発見は、次回としましょう。

・学位記授与式・
先週末、大学では学位記授与式がありました。
大学全体で進めるセレモニーがあり、
その後は、学科ごとに学位を全員に授与します。
集合写真を撮影して、保護者を交えて歓談をしていきます。
小さな学科なので、学生の他にも
保護とも親交ができているので、
味わい深い学位授与式となります。
その後は場所をホテルに移して、卒業祝賀会、
さらに学科の卒業を祝う会と続きます。
4年生との別れを、一日かけて惜しむ
いい一時となりました。

・別れの儀式・
私は、学位授与式が終わると、
撮影した写真を整理しながら、
ゼミや関係の深かった学生に、
餞(はなむけ)の文章を作成します。
学位授与式やゼミの集合写真、
祝う会など写真も交えて作成していきます。
これが教員として、私から最後のメッセージとなります。
学生の顔を思い浮かべながら、書きます。
学位授与式から餞の文章の送信までの一連の作業が
私の4年生との別れの儀式になっているようです。