2016年6月30日木曜日

6_138 STAP細胞 2:条件変更

 STAP現象が起こったという新たな報告を見て、どのような視線で研究をみるかが大切だと思いました。功を焦って虚偽に走るか、素直に愚鈍に納得するまで実験を続けるか、他人の失敗を利用するとか、いろいろな行動があるようです。

 前回、STAP細胞に関する新しい報告があった、ということを紹介しました。この報告では、ある種のガン細胞(ヒト急性白血病T細胞)をある条件にしたら、万能性を持った、つまりSTAP現象(万能細胞化)がおこったというものでした。
 報告したハイデルベルク大学の研究グループは、なんらかのSTAP現象がおこったのであろうという前提に立って研究を進めようです。小保方氏のSTAP細胞の論文は撤回されましたが、それはSTAP現象がなかったということを意味しないと、彼らは考えたのです。もしSTAP現象が起こるのであれば、ガン研究や再生医療などに大きな可能性を秘めています。つまり、成功すれば大きな成果が期待できるのです。
 彼らの要領の良かったところは、すでに報告されている成果を利用した点です。小保方さんとハーバード大学の手法、また小保方さんの方法を理化学研究所が膨大な費用と人材をかけておこなった再現実験を有効に利用しました。そこからすでにわかっていた問題だけを抽出し、その問題点だけを突破する実験をしたのです。小保方さんらが使用していた液(緩衝液)が、充分に機能(緩衝能)していなかったので、その点を改良すれば成功する可能性が高いと考えました。
 独自に修正した酸性ストレスをかける方法(pH3.3という条件)で処理をした結果、STAP現象が起こったのです。ある種の細胞に死にそうなストレスがかかると、万能性を獲得するか死ぬかような極端な状態になるようです。細胞は万能性と死の境界をさまようことになります。何がその原因なのかという点が、今後の重要なテーマになります。
 もちろん、これからも手法やSTAP現象の再現性や再現率などの課題があるかと思います。小保方さんの手続きや報告の方法に問題が合ったのかもしれませんが、そもそもSTAP現象があるのかないのか、という一番根本的な点で「ある」と信じて研究を進めました。
 日本の世論は、小保方さんスキャンダルばかりに眼を向けていたような気がします。そもそもSTAP現象があるのかないのか、小保方さんは「STAP細胞はあります」の公言していました。しかしマスコミに踊らされて、もしそれが本当であったらという立場で、STAP現象を見なくなっていました。
 私は小保方さんという人は全く知りません。しかし、科学に携わる人は、根本的には好奇心にかられて研究をしている信じています。もし今までにない現象を見つけたら、それが本当かどうか、間違いではないかを自身で確認していくはずです。そして確認できれば、現象の存在を確信するはずです。
 もしその後、再現しなくなっても、最初の確信があったら、なんとか再現をさせようとするはずです。その点でもしかすると小保方さんは功を焦ったのかもしれません。もしそうなら小保方さんは反省すべきでしょう。しかし根本であるSTAP現象があったかどうか、の点は、ハイデルベルク大学の研究グループは信じたのです。そのが今回の報告となっていったようです。
 以前、私はエッセイで書きました。「もし、最初の痕跡が本当で、それを捉える試みが、今回の事件でタブーになったら、人類は大きな金脈を見過ごす可能性があります」と。

・発見のきっかけ・
科学の大発見のきっかけは、いろいろです。
私は、以前ある実験しているとき、
誤差(汚染程度)がどの程度あるかを調べていて、
ものすごくいいデータが出てきたので驚いたことがありました。
データは正しかったのですが、原因を追求しました。
すると原因は、学会発表の準備で
実験室の人の出入りが少なくっていたため
実験室が清浄な条件が出現したのです。
そのような状況があったので
原因を簡単に気付きました。
現象には、なにかの要因が働いて、
ある特別な条件が出現することが起こりえます。
原因がわかれば、その条件を利用、
改善すればいいのですが、
そこいたるまで、非常に労力を使うこともあります。
小保方さんは、それを端折ったのかもしれませんね。

・天候不順・
北海道は、先週末には大荒れで、
寒いほどの天気でした。
その後は、心地よい初夏の天候となりました。
北国の突き抜けるような青空が心地いいです。
ただし週末はまた天気がよくないようです。
今シーズンは、これまで天候不順で日照時間は少なく、
晴れの日も少ないという予測もでているようです。
どんな夏になるかが心配です。
ですから、今の青空を心ゆくまで味わっていきましょう。