2016年6月9日木曜日

5_140 太陽系外物質 3:スターダスト

 太陽系外からの物質が、かなり以前から隕石から見つかっていたことは、前回紹介しました。今回は、新たな場所から太陽系外粒子が見つかったという報告です。これまでも、そしてこれからも長い時間をかけて研究されます。

 昔におこなわれプロジェクトの成果が、かなり後になって成果として報告されることが時々あります。今回紹介するものも、長い時間をかけてでてきた成果です。
 1999年に打ち上げられた無人探査機「スターダスト」がというものがあります。スターダストは、彗星(ヴィルト第2彗星)の尾の中に入りこんで、観測するというものです。そのとき観測だけでなく、試料を採取することも目的としていました。さらに、太陽系の星間にただよっている物質も採取するプロジェクトもおこなわれました。
 採取容器は、アルミホイルとシリカエアロゲルでできており、アルミホイルにぶつけシリカエアロゲルで停めて採るという仕組みです。問題は試料をいかにして地球に送り返すかですが、2006年1月15日に試料を入れたカプセルが、無事アメリカのユタ州のグレートソルトレーク砂漠に無事、着陸し回収されました。すごい高速での突入だったので、大気との摩擦でカプセルは火球になり、衝撃波も発生したのですが、少々風に流されましたが、ほぼ予定通りの位置に落下しました。すごい技術でした。
 届いた試料は、岩石の主成分(カンラン石、不明の珪酸塩、集合物)やアミノ酸の一種(グリシン)などがあったことはすでに報告されていたのですが、長年分析が続けられて、2014年8月15日にその結果がサイエンス誌に多数の共同研究者の連名で報告されました。
 50個以上の試料が採取されました。他にも、微小の粒子がぶつかった痕跡があったのですが、高速すぎたので収集容器内で蒸発したと考えられものがあります。しかし、ホイルの中には、まだ微小の粒子が残っているかもしれないと考え、今後も探していくとのことです。
 見つかった試料の内、7つは太陽系外から飛んできた可能性があるものだということです。見つかった7つのうち4つは、直径1μmにも満たない微小なものなのですが、そのうち3つには太陽系の星間物質には存在しないと考えらるイオウ化合物を含んでいました。これらは太陽系ができる数百万年前におこった超新星爆発によって形成されたものではないかと考えられています。
 7つのうち3つの粒子には、大きいものから「Orion」と「Hylabrook」、「Sorok」と名付けられたものがあります。いろいろな分析がなされているのでが、その量は、4から3ピコグラム(pg)です。ピコはマイクロ1000分の1のことなので、非常に微量だということです。それでも分析して成分を割り出しています。すごい技術だと思います。
 微小のものでは酸素同位体まで測定されていますが、大きな粒子についてはこれからの分析んなります。貴重な試料は、なくならない限り、さまざまな研究素材になります。ですから、最初の非破壊の分析で、データをとりつくしたら、消費、破壊する分析へと進みます。酸素などの微量成分では試料を蒸発させて使用していきますので、分析に用いたものは消滅します。
 眺めるだけでは、答えは得られません。勇気をもって分析をする必要があります。結果に期待しましょう。

・プレッシャー・
長年、化学分析に携わっていると
非常に貴重な資料を分析をするという
経験をすることがあります。
どんなに慣れ親しんでいる分析であっても、
それなりに緊張します。
慎重の上にも慎重におこないます。
私も、数週間かけて分離した貴重な鉱物が
一回の分析量しかないことがありました。
その分析は、失敗すると
今までの苦労がすべて水泡に化すという状況でしたが
幸いにも成功に終わりました。
私の場合は失敗しても、自分の苦労が無駄になるだけなのです。
今回のような試料は、巨額の国家予算を投じて得たものが
一度しか使えないのです。
それを、ひとり、あるいは数人の研究者に託されるのです。
託された研究者は、失敗ができないという
プレッシャーはいかほどのものでしょうか。
その先には大発見があるかもしれませんね。

・エゾハルゼミ・
今、エゾハルゼミがけたたましく鳴いています。
エゾの名称がついていますが、
本州から九州まで広く分布しているそうです。
本州にいる時は気にしていなかったのですが、
北海道では、街の近くでもけたたましく鳴きます。
最初に鳴くセミなので、かなり目立ちます。
音の風物としては、早朝にカッコウの鳴き声も
聞こえることがあり、なかなかいいものです。
そんな鳴き声が、北海道の初夏の風物詩となっています。
初夏といえば、YOSAKOIソーランです。
8日からはじまりました。