2015年7月9日木曜日

1_142 月の新起源説 3:斜め衝突

 月と地球は化学組成でみると、似ている点と異なる点もあります。両方をうまく説明するのは、少々工夫が必要です。新しい論文では、いくつかのアイディアが紹介されました。

 惑星形成は、太陽系の初期におこったことで、衝突合体を繰り返しながら、大きな天体へと成長してきます。やがて衝突が暴走的に起こり、小さな物体はすべて微惑星と呼ばれる天体に吸収されていきます。軌道上には、成長した微惑星だけになり、やがてそれらも衝突合体を繰り返して、ひとつの惑星、原始地球へとなります。惑星形成の初期には、衝突合体により、地球軌道付近の物体は、すべて地球に集積してしまいました。
 2015年4月Natuer誌に掲載された論文のシミュレーションによると、近くの軌道で形成された天体同士は、衝突しやすく、太陽形成初期の衝突の20%は、似た天体同士のものだとという結果が得られています。軌道上の微惑星の化学組成が似たものがぶつかれば、そこから飛び出した天体(月のようなもの)や、合体した天体も似た組成になることも当然となります。地球軌道に火星サイズの天体が残っていて、最後に衝突したとすると、月の起源も説明可能となります。
 ところが、問題もいくつかあります。地球と月のいろいろな化学組成が似ているということは、衝突説で説明可能ですが、違う点もあります。化学的違いを説明することが、今度は、困難になります。
 また、衝突頻度が20%は、そんなに大きな確率ではないということです。月の形成には、似た組成の天体が衝突が必要なのですが、その確率が低いのは少々問題がありそうです。80%は違う組成の天体で、それが衝突したとすると、今度は月と地球の化学組成の類似性が問題となります。ですから、似た天体の衝突が必要になります。
 そこで考えられたのが、似た組成のティアの衝突はあったのですが、飛び出したのは、主に地球のマントル物質で、それが月の材料となったというものです。そんなに都合よく、ぶつけられた地球のマントル物質だけを飛び出すことが可能なのでしょうか。
 その方法として、ティアの斜めの衝突が考えられました。斜めの衝突によって、飛び出したのは地球のマントル物質で、ティアの物質は地球に加わったとするのです。飛び出した物質は、地球やティアとは少々違った成分を持つことになます。このメカニズムで月が地球とは、似た点と違う点をもつ不思議さを説明しています。
 ところが、似た組成の天体の衝突では、説明できないものもありました。それは、次回としましょう。

・やっと快晴が・
北海道は、天候不順が続いています。
まだ曇りがちの日があったり、
晴れていても雲がすぐにでてきたりと安定しません。
ここ2日ほど、やっと快晴になったのですが、
半袖だと少々寒いくらいの天気です。
涼しいのは、過ごしやすくていいのですが、
寒いくらいだと、農作物について心配になります。

・受け流す・
現在、論文の大詰めにかかっています。
来週が締め切りなので、大変です。
自分の研究のノルマとしているものなので、
なんとか終わらせたいと考えています。
論文にかかりきりになっていると、
他のことがおろそかになっていきます。
それが少々心配で、ストレスにもなっています。
ただ、ストレスを跳ね除ける余力はなく、
ストレスを受け流ようにしています。
受け身ではなく受け流す姿勢です。
そんな姿勢が、いいことなのか、
悪いことなのかはわかりません。
一種の防衛本能のなせる技なのでしょうか。