2015年7月16日木曜日

1_143 月の新起源説 4:タングステン

 ある仮説でこれまでわかってきた特徴を説明されてきました。ところが、新しいデータが出てくると、その仮説では説明できなくなることががあります。そこに新たしい仮説が登場します。しかし、その仮説で一応の説明ができたとしても、納得しがたいことも・・・

 月は、地球に火星サイズの天体ティアが、斜めに衝突したことでできたと考えられています。斜めの衝突であったため、地球のマントル成分だけが飛び出し、それが材料となり、月が形成されたと考えられています。ですから、月は、地球ともティアとも少々違った組成ですが、どことなく地球のマントルに似ているところもあるわけです。
 ところが、それだけでは説明できない成分が発見されました。タングステン(元素記号W)という元素の、同位体組成においてみられる違いでした。タングステンには、多数の同位体があります。
 同位体とは、同じ元素で陽子の数は同じなのですが、中性子の数が違うものを指します。タングステンは、陽子数が74(=原子番号)で、中性子の数が106(質量数は180)、107(181)、108(182)、109(183)、110(184)、111(185)そして112(186)までのものがあります。このうち、質量数が、182、183、184、186ものは安定ですが、それ以外のものは不安定な放射性核種で、一定期間を経過すると崩壊します。タングステン180は放射性核種なので、半減期が異常に長く(1.8垓年)で、ほとんど変化がないといえるほどです。他の放射性核種は数ヶ月の半減期となります。
 元素の存在度でいうと、安定な核種が99%を占めます。質量数182のタングステンは26.5%、183は14.3%、184は30.6%、186は28.4%となっています。
 さて、問題は核種は、安定な核種で一番軽いタングステン182です。月の岩石は、地球のものに比べて、タングステン182が少ないことがわかってきました。その差は、0.0025%と非常に小さいものです。このデータは、分析技術の発達のおかげで、有意な差(本当に違っていると断言できる)があることがわかってきました。
 さて、このタングステン182の差を、衝突モデルでどう説明するかが問題なのです。2つの考えが提案されています。
 ひとつは、月が形成された後、別の天体が地球にいくつか衝突したと考えるものです。それは、重いタングステンをもった天体だったので、地球のマントルの同位体組成を変更したというものです。地球はさらなる衝突でタングステンの組成だけを変えたというものです。
 もうひとつの考えは、地球とティアの化学組成は似ていたのですが、タングステンだけは、違っていたとするものです。特別な天体を用意する必要はなく、形成時間に差があればいいという提案がなされています。タングステンは核に分配されやすい元素で、核の成長は形成時間に依存するとされています。ですから、両天体は、同じような組成を持っていたとしても、できからの時間が違えば、タングステンの組成も変わることになります。これでタングステンの同位体組成の違いを説明できるという説です。
 いずれの説も、反論はあります。ですから、まだまだ検討が必要でしょう。このように新しい考えがいくつも提案されることで、注目され、議論が沸き起こり、研究が深まります。今後に進展に期待したいものです。

・気の持ちようで・
今日の朝の講義が終わった出張します。
一泊ですので、用事を済ませたら、すぐに戻ります。
土、日曜日も用事が入っていて、夜は飲み会です。
なかなか休めません。
体の疲れは眠ればとれます。
心の疲れは、気の持ちようで乗り切るしかありません。
出張も用事も楽しいものだという気持ちで望めば
それは気分転換になります。
そんな心の余裕が、重要だ最近強く感じています。

・天候不順・
北海道は天候不順です。
毎週、書いている気がしますが、
ここ最近は本当にそう思える天候です。
一昨日までひどく蒸し暑かったのですが、
昨日は半袖は肌寒いほどです。
朝快晴だと思ったら、午後から曇ったり、
めまぐるしく天気が変わります。
忙しく休みが取れない時で
天候不順ですから、体調だけには、
気を付けなければと思っています。
体調不順にはならいようにしなければ。