2014年9月11日木曜日

1_134 ファーストスターの痕跡 3:巨大ブラックホール

 モンスター星は、予想を遥かに超える質量をもっていた可能性があります。モンスター星は、巨大ブラックホールになって終わります。このシナリオは、今まで謎とされていた、銀河の中心にある巨大ブラックホール誕生の答えになるかもしれません。

 シミュレーションによるとファーストスターは、太陽質量の40倍程度のものができることが判明してきて、実際の観測とも一致しました。ところが、さらにシミュレーションを詳しくおこなっていくと、ファーストスターの中には、太陽の質量の100倍を超えるような、巨大天体もできることがわかってきました。もちろん、そのようなモンスター星が観測されたこともありませんし、その痕跡も見つかっていませんでした。
 そもそも、星の質量の違いをどう検証するかが問題となります。そこで星の化学組成が重要や役割を果たすことになります。
 太陽質量の40倍の天体では、カルシウムなどより重い元素はほとんと合成されません。ですから、見つかっている第二世代にあたる星は、炭素、マグネシウム、カルシウムを含みますが、鉄はほとんど含んでいませんでした。
 太陽の質量の100倍を超えるようなモンスター星では、星の中や超新星爆発で、カルシウムよりもっと重い元素が合成されて、飛び散ることがわかってきました。シミュレーションでは、そのような天体が存在しうることはわかったのですが、観測ではまだ見つかっていませんでした。
 モンスター星があったのではないかという予想のもと、150個ほどの星の探査がなされました。狙いは地小さいな質量の星、つまり古い星から、モンスター星の痕跡を見つけることです。探査で、調べられた多数の古い星の中から、1つだけ特異なものが見つかりました。それが、青木さんたちが発見した「SDSS J0018-0939」でした。
 鉄が太陽の1/300程度で、炭素やマグネシウムも1/1000以下でした。鉄が比較的多く、その他の元素が非常に少ないことが特徴でした。このような鉄は、太陽の100倍以上の巨大な質量のファーストスターでの元素合成に由来したと推定されます。つまり、シミュレーションで予測されたモンスター星です。
 ただし、問題もありました。それは、鉄のような重い元素を生み出せるようなモンスター星は、質量が300倍、時には1000倍の天体になります。ですからモンスター星の最後は、巨大なブラックホールになる可能性があります。巨大ブラックホールから、元素が大量に放出できるのか、という問題があります。一部の物質が放出される可能性もあるようですが、まだ十分解明されていません。
 今回の発見によって、もしモンスター星で合成された元素による「第二世代の星」だということが確定すると、有利なことがあります。ファーストスターの中でも巨大な質量をもった星は、最終的に巨大ブラックホールとなっていきます。巨大ブラックホールは、現在の銀河の中心に見つかるようなサイズだと予想されます。今まで銀河の巨大ブラックホールの起源はわかっていなかったのですが、その答えを示したことになるかもしれません。
 ただし、ファーストスターにどの程度の頻度でモンスター星ができるのか。その量は銀河の巨大ブラックホールの数(銀河の数)に匹敵するものなのか。さまざまな疑問は湧いてきます。でも、いろいろと想像を掻き立てる報告でした。

・予約発行・
昨日まで調査にでていました。
そのため、この一連のエッセイは、
事前に用意して書いてあったものを、
予約発行していたものです。
旅先でもネットに接続は可能なのですが、
安定した接続をできるかどうかは不明です。
ですから、調査に出る前にはいつも予約発行しています。
帰ってきてからでは、発行は間に合わないので
すべてを準備して、心置きなく調査に向かいました。

・そんな境遇に・
夏休みは私にとっては、全くありませんでした。
校務と研究に勤しんでいるということで
充実した夏ということでしょうか。
出かけることが多かったので、
気分転換にはなったのですが、
体力的にはつらいものがあります。
しかし、そんな境遇になる時期というものでしょう。
なんとかのり切らねばなりませんね