2013年12月5日木曜日

6_118 かぐや 2:プロセラルム盆地

 月の表側(地球に面している方)の黒っぽい部分(海と呼ばれる)ところは、大きな衝突でできたもののようです。月の表側にだけ黒っぽい部分が多いという謎は、一度の巨大な隕石の衝突によるものなら、なんとなく納得できそうです。

 「かぐや」は日本が打ち上げた月探査用の人工衛星で、2007年から2009年にかけて、2年間弱にわたって調査をしました。「かぐや」は、大量の観測データを取得しました。その解析は現在もなされていて、成果も出されています。そんな成果として、前回紹介している月の表のクレータの謎を解き明かしました。
 月の表(地球から見える側)は、黒っぽいところ(海と呼ばれています)と白っぽいところ(高地)が織りなす模様があります。黒っぽい海は、白っぽい高地より新しい時代に形成された、衝突によるクレーターの跡であることがわかっています。海は、衝突によって引き起こされた火山活動で、玄武岩のマグマが噴出して、月面を覆ったものです。さらに、海は高地と比べて、地殻も薄く、化学成分だけでなく放射性元素も違っていることもわかっています。
 海をつくった衝突が、なぜ、地球側に集中しているかが、謎でした。本来なら地球の陰にあたり、衝突の影響が減るはずです。なのに多いのは不思議なことです。
 産業技術総合研究所の中村良介さんたちのグループは、クレーターの起源を解明しました。「かぐや」が得た約7000万地点、200億点以上の可視赤外線反射率スペクトルちうデータを解析した結果でした。
 可視赤外線反射率スペクトルの解析とは、月の表面から反射する光(可視光から赤外線の範囲)の反射の光(電磁波)を用いて、波長ごとの特性から、その地点が、どのような鉱物からできているかを調べました。月を構成している岩石の主要鉱物であるカンラン石、斜長石、高カルシウム輝石、低カルシウム輝石を見分けることができ、その量も推定できます。
 衝突の衝撃によってマントルまで溶けた岩石では、低カルシウム輝石ができることがわかっています。その分布を、「かぐや」の膨大なデータから調べました。低カルシウム輝石の多いところ(20%以上含む)は、いくつかの場所に集まっていました。
 一つは、月の裏側の南極周辺にある「南極エイトケン盆地(直径約2500km)」と呼ばれる部分に広く散らばって分布しています。もう一つは、雨の海の周縁に低カルシウム輝石が多く分布しています。さらに、雨の海を含むプロセラルム盆地とよばれるところに広く分布することがわかりました。
 プロセラルム盆地は、雨の海を含み、その周辺に分布する、表側の黒っぽい部分です。直径3000kmの広さをもっています。プロセラルム盆地は、月の表の黒っぽい部分のほとんどを含んでしまうほどの大きさです。うさぎの模様でいうと、耳以外のうさぎの体と臼もふくめた部分にあたります。非常の拾い範囲となります。
 かつて、月の表側に海が多い理由として、月の表のクレーターは巨大な衝突で形成されたという仮説がありました。しかし、証拠がなく、仮説のままでした。
 今回、中村さんたちが、鉱物の分布から、雨の海を中心とするプロセラルム盆地が、衝突の範囲であり、衝突の結果、飛び散ったものの形も示しました。
 直径3000kmもの衝突クレーターをつくるには、径が300kmもある隕石が衝突した考えられます。非常に大きな衝突です。重要なことは、一度の衝突によってできたのであれば、海の分布の不均質さが説明できます。衝突が一回であれば、月のどこにあたっても不思議ではありません。
 同じ理屈で、南極エイトケン盆地も衝突の可能性があります。黒っぽいクレーターは、あまりみられません。ここでは、玄武岩を噴出するようなマグマの活動は引き起こされなかったことになります。当たる角度は衝突の様子の違いによるものかはわかりませんが、こちらは南極付近ですが裏側での衝突です。
 月の裏と表の違いの謎は、どうやら大きな一度の衝突のせいだということになりそうです。月の形成にまつわる衝突は地球を巻き込んだものですが、プロセラルム盆地は月だけの衝突です。でも、本当に地球には影響がなかったのでしょうか。気になるとこです。

・嵐の盆地・
プロセラルムとは、ラテン語で「嵐」という意味です。
「嵐の海」という地形があります。
月では一番大きな海の地形です。
嵐の海を含む盆地のことを、プロセラルム盆地と呼んでいます。
プロセラルム盆地は、日本語にすると嵐の盆地となります。
うさぎの模様でいうと
足から胴にかけての部分にあたります。

・冬本番・
12月になり、北海道は雪になりました。
わが町にも、除雪が今シーズンはめて入りました。
湿った重たい雪で、除雪が大変です。
平日の除雪は、家内の役割です。
私は雪の中を歩いてきました。
もう、クツも冬仕様となりました。
いよいよ冬も本番となりました。

・二度とできない経験・
今、4年生は卒業研究の追い込みの真っ最中です。
皆、苦労しながら、取り組んでいます。
大変さに負けてしまいそうな学生もいますが、
その大変さを乗り越えれば、
きっと大きな達成感、満足感など
言葉に表せないような経験ができるはずです。
2年かけて取り組んできた研究の集大成です。
二度とできない経験をしてもらいたいものです。