2013年12月19日木曜日

3_121 本源マグマ 2:結晶分化作用

 火成岩の多様性をつくる要因を探りました。それらの要因から生まれる多様性は、現実の岩石で多様性を越えています。一番大きく働いている要因は、結晶分化作用のようです。

 マグマの多様性を生み出す話しをしています。多様性を生み出す要因として、前回、起源物質、溶融作用、結晶分別作用というものがあることを紹介ました。要因にすると単純になりますが、それぞれの要因が、条件をいろいろ変動すれば、非常に大きな多様性を生み出せます。
 例えば、起源物質では、その候補として、マントルの岩石(カンラン岩)だけであれば比較的単純な鉱物の組み合わせのものになります。しかし、地殻深部が起源物質になると、複雑になります。地殻は、多様な既存の岩石からできていることがわかっています。非常に複雑な起源物質が候補になりえます。それを限定できないと、どのような多様性を生むかは推定できません。実際には、地表でみられる要因が働いた結果の岩石から、起源物質の情報は断片的にしか読み取れません。なぜなら、溶融作用や結晶分化作用を経てマグマは変化し、そのマグマから岩石ができいるからです。
 上で述べたように起源物質という多様性を生む要因はあるのですが、実際の火成岩をみると、どうもその効果はあまり大きくないようです。似た環境、似た条件では、似たマグマができることがわります。岩石は、それらのマグマから、結晶分化作用によって生まれる多様性の範疇におさまってしまいそうです。となると、ある地質条件の場所では、どこでも一様なマグマが形成され、そのマグマから結晶分化作用によって、多様性が生まれるというメカニズムがありそうです。
 結晶分化のスタートとなるマグマの種類が、それほど多くないことになります。つまり、起源物質や溶融作用の効果は、火成岩の多様性に、それほど大きな効果はなく、似た地質環境では、似たようなマグマができることになります。 以上のことから、火成岩の多様性においてマグマの結晶分化作用が、現実に大きな役割を果たしていそうだと推定できます。結晶分化作用とは、結晶が晶出することによって、マグマが化学組成の変化をしていき、多様な火成岩を生むというメカニズムです。これらの一連のマグマの変化は、マグマ系列と呼ばれています。
 マグマ系列は、海洋底の火成岩である中央海嶺玄武岩(Mid-Oceanic Ridge Basalt:MORBと略されます)のソレアイト系列や大陸や海洋島の火山でみられるアルカリ岩系列、日本列島に特徴的にみられるカルクアルカリ系列などが代表的なものです。他にもマグマ系列はありますが、多様な火成岩が、いくつかのマグマ系列で代表されるという、単純な図式があるということになります。いく種類かのマグマから、多様な火成岩が形成されることになります。ある限られた種類のマグマ(本源マグマあるいは初生マグマといいます)があると推定されます。
 では、そのいく種類からの本源マグマは、どのようにしてできたのでしょうか。それは地表に噴出して、手にできるものなでしょうか。それがなかなか厄介な問題となります。詳細は次回にしましょう。

・起源物質・
起源物質は、実際には手にできない
地下深部に存在するものです。
それは、科学的に推定するしかありません。
私は、かつてマグマの起源物質を調べていました。
いくつかの方法があるのですが、
私は、同位体組成を用いて調べていました。
素材としていたのは、マントル由来の火成岩でしたが、
同位体組成を調べると、
どのような履歴のマントルであったのかを
推定することができます。
今思えば、遠い昔のような気分ですが。

・忘年会・
いよいよ12月も押し詰まってきました。
子供達は今週で学校が冬休みです。
大学は、25日までです。
私は、4年生の卒業研究の発表会の
予行演習につきあいます。
発表会は1月ですが、
プレゼンテーションの準備ができていれば、
彼らも安心して暮と正月を迎えられるでしょう。
毎年私のゼミではこの予行演習を行なっています。
その後は、忘年会をします。
3年生とは、同日の昼間にやることになりました。
大学内でノンアルコールの昼食会です。