2013年11月7日木曜日

1_121 日本の隕石衝突 3:さらなる研究を

 日本の隕石衝突の発見は、もしかすると白亜期末のK-Pg境界と同等の異変を起こしていた可能性があります。その異変は、衝突が火山かというK-Pg境界で起きたのと同じような論争が、起こるかもしれません。

 日本の隕石衝突の証拠は、世界規模で起こったらしいことがわかってきました。地層の厚さと元素の濃集程度から、隕石の大きさや重さが推定できます。佐藤さんらの見積もりによると、直径は8km~3.3km(2箇所のデータを使ったもの)、重さは約5000億トンとされています。恐竜の絶滅を起こしたK-Pg境界の隕石が直径14~6.6kmだったので、それに次ぐサイズとなります。このようなサイズの衝突があれば、地球規模の異変が起こるはずです。
 衝突は、三畳紀後期(2億年前~2億3700万年前)の2億1500万年前に起こりました。衝突の時期に対応しそうなクレータとして、カナダのマニコーガンクレータ(Manicouagan Crater)があります。マニコーガンクレータは、現在地球で見つかっているものでは二番目の大きいものです。クレータの直径が100kmで、衝突の時代が2億1500万年前で、衝突の証拠と一致しています。
 2億1500万年前ころの絶滅にかかわる異変として、ノール期からレート期の生物入れ替え事件(Norian-to-Rhaetian biotic turnover events)と呼ばれているものがあります。この事件では、哺乳類型爬虫類が絶滅しました。その後、哺乳類が新しくでてきます。哺乳類型爬虫類にかわって地表を支配したのは、哺乳類はなく、恐竜の仲間でした。恐竜たちが、多様化をしていきます。以降、中生代は、恐竜の大繁栄の時代となります。
 今まで、この絶滅をおこした原因として考えられていたのは、中央大西洋で起こった火山活動(Central Atlantic Magmatic Province)で、大量の玄武岩の噴出による火山説が有力でした。
 今後、火山か衝突のどちらが絶滅を起こしたのか、議論がはじまるでしょう。K-Pg境界でも同じような論争がありました。その再現になるでしょうか。それともあっさりと結論がでるでしょうか。
 K-Pg境界の教訓から、打開策として、年代決定を正確にすること(同位体年代学が答えを出すべき課題)、絶滅の時期を厳密に決めること(古生物学)、関連する証拠をもっと探すこと(地質学全般)などで、決着をみました。つまりは、いろいろな分野で、さらなる研究の進展が必要だということになります。
 今回の報告者の佐藤さんは、まだ若い研究者です。今回の論文の発表に至るまでの、非常に臨場感のあるエッセイが公開されています。もし興味ある方は、
コラム:「日本からみつかった巨大隕石衝突の証拠」発表までの道のり
http://www.geosociety.jp/faq/content0477.html
をご覧になららればと思います。

・若き研究者・
佐藤さんのエッセイを読んで、
自分の若い頃を思い出しました。
もちろん佐藤さんような
インパクトのある報告はできませんでしたが。
遮二無二研究に励んだ時期があり、
そのころの大変さと充実感が思い出されます。
佐藤さんは、まだ博士課程の2年生です。
若いのに、このような話題なる報告をされました。
大変な苦労の末、達成された今回の報告です。
まだまだスタートしたばかりの研究者です。
今後の活躍に期待したいものです。

・冬近し・
北海道は一気に紅葉が進み、
木々は葉をどんどん落としています。
先日の肌寒い日には、
ミゾレが降ってきて驚きました。
山には何度か積雪がありました。
里でも初雪も近そうです。
雪の話題を聞くと、
車のタイヤをいつ冬タイヤに変えるかと、
悩む時期となります。