2012年11月8日木曜日

2_111 ウイルス 3:関係の有無


 ウイルスと他の生物の系統上の違いは、それほど大きくかけ離れているものではないようです。他の生物内にみられる違いよりは少ないほどのようです。ただし、ウイルスと他の生物との系統関係を論じるには、いくつかの課題もあるようですが。

 2012年8月24日にナシャーたちは、「巨大ウイルスは細胞を持つ祖先と共存していて、古細菌、細菌、真核生物などのグループとともに一つの別のグループをなしていた」という論文を発表しました。ウイルスは、すべての生物と共通の祖先から進化してきたことになるということを報告したものです。
 生物の系統関係は、DNAの塩基配列を比較することが通常の調べ方です。今回、ナシャーたちは、タンパク質を大規模に比較する方法を用いて検討して、系統樹を再構築しました。もちろん、分析したタンパク質は、ウイルスや他の生物も共通してもっているものです。系統解析したのは、ウイルスとバクテリア、古細菌、真核生物です。まあ、すべてのドメインの生物に対しておこなったということです。
 実は、私には、論文に示された系統解析の図の見方がよくわかりません。論文では、いくつかの図が示されていますが、それらの図から類推すると、ウイルスは、やはりバクテリア、古細菌、真核生物とはかなり違っているようです。
 ある図では、ウイルスを根っこ(root)とすると、そこから古細菌につながり、そしてバクテリアと真核生物に分かれるという系統樹が示されています。また別の図では、やはりウイルスは古細菌に一番近縁のようですが、ウイルスと古細菌の違いは、真核生物と古細菌の違いほどのようです。見ようによれば真核生物内の違い大きくは、古細菌とウイルスの違い以上にありそうです。
 もしこの研究結果が本当であるならば、ウイルスは生物の仲間になります。現生の生物とは分子レベルでみると結構違っているようですが、その違いは、生物のドメイン間の違いやドメイン内の違いよ大きくはなさそうです。
 さらに、もしかするとウイルスが生物のより祖先に近いのかもしれません。そうなると、ウイルスは生命誕生の謎を秘めているかもしれません。
 ただし、いくつかの疑問もあります。
 そもそも系統関係がない生物で系統解析ができるのか。できるとしたら、共通するなんらかのタンパク質があるということになり、すでに生物として系統関係があることが判明しているのではないか。
 ウイルスは、生存戦略として寄生という仕組みをとっていますので、不要な機能は極力排除、捨てていく方向で進化しています。DNAがやタンパク質でも同じことが起こっているはずです。となると、そもそも「間引かれたタンパク質」による系統解析を適用していいのかという疑問があります。するにしても、消えた情報をどう補って比較するのかという疑問があります。
 もし従来通り、ウイルスは生物でも無生物でもないと所属不明の存在と考えるなら、ウイルスと生物の進化上の関係は、解けない謎となります。でも、今回の研究をもとに「関係あり」として進めば、ウイルスの誕生の謎を解き明かすことできるかもしれません。そんな可能性を感じさせてくれる研究でした。今後の展開が期待できるのですが、生物学ではあまり注目されていないのは、なぜでしょうか。

・学問の限界・
ウイスルを生物でないといっているのは、生物学者です。
ウイスルを調べているのも、生物学者です。
ウイルスを生物として調べているのも生物学者です。
今回のウイルスは生物と
密接な系統関係があるとしたのも、生物学者です。
こうしてみると、生物学界内の意見の不統一が
外部に漏れてきているにすぎないのかもしれません。
ウイルスという実在のものが、
生物か無生物かすらわからないのは、
あまりに生物学が非力にみえます。
なにも生物学だけに限ったものではありません。
学問全体が同様の限界をもっています。
今回のような究極の生物?ウイルスは、
その学問の限界を見るために
いい話題なのかもしれません。

・秋深し・
北海道はここしばらく冷え込みも一段落です。
ただし、自宅はもう冬モードになっているので、
室内のストーブは温度設定をして
つけっぱなしです。
20度を下回ると自動的に点火するようになっています。
ですから、自宅内では寒さを感じることはないのですが、
着込んでさえいれば外部もそれほど寒くありません。
次男は、自宅で温かいとすぐに裸足、半袖になってしまいます。
そのまま学校にいってしまうので風邪をひかないか心配ですが、
今のところ大丈夫のようです。
秋は深まっているのですが、
里の雪はもう少し先のようです。
次男にも冬はまだまだのようです。