2012年7月12日木曜日

2_105 大不整合 2:データベース

「大不整合」は北アメリカで広く認められ、その直上には似たような堆積物がたまっています。広い範囲にたまっている地層に対して、地質データベースを用いて、データ解析をして、その特徴を探ろうとしたのが今回の報告でした。

 2012年4月19日のネイチャー誌に報告したのは、ペーターとジャイネス(S. Peter and R. Gaines)でした。不整合とは何かは、前回紹介しました。アメリカ大陸では、広範囲でみつかる「大不整合(Great Unconformity)」として有名なものがあります。その不整合は、グランドキャニオンの谷底に連続的に見つかり、多くの人の目に触れる典型的なものでもあります。それだけでなく、地質学的にも、先カンブリア紀とカンブリア紀の境界にあることで、非常に重要な意味があると考えられます。そのために、わざわざ「大(Great)」がつけれられ、「大不整合」と呼ばれています。
 先カンブリア紀の岩石は、大陸の古いもので変成作用を受けています。その上に不整合として、浅い海でたまった堆積岩が重なっています。その時代には、似た堆積物が、北アメリカの大陸に広く分布しています。その下には不整合があります。同じような不整合と堆積物は、アメリカ大陸だけでなく、世界的に見られるものであることがわかっています。そのため、「大不整合」がどんな意味をもつのかが重要だと考えられます。
 ペーターとジャイネスは、アメリカ大陸の「大不整合」の意義を調べるために、少々変わった方法を用いました。彼らは、地質のデータベース(Macrostrat)を活用しました。
 Macrostratというデータベースは、世界各地の地質について、1475地域から、3万3965の層序的ユニットについて、9万以上の属性について記録されています。属性は、位置や年代区分だけでなく、化石や岩石種、環境、地質構造などのデータがあります。
 北アメリカから、大不整合の直上に堆積したソーク層(Sauk Sequence)と、それに相当する地層をデータベースから選び、特徴を調べました。
 ソーク層のたまった年代は、カンブリア紀からオルドビス紀初期(5億4200万から4億7200万年前)です。それ以前は大不整合なので陸地化しているので、地層は欠損しています。その間、北アメリカは陸地化していたことになります。その陸地化が、カンブリア紀になって海が広がった時(地層の堆積時)にどのような影響を与えたかを、データベースから探っています。
 カンブリア紀のはじまりは、生物に大きな進化が起こった時期です。「カンブリア大爆発」と呼ばれています。それと大不整合とはどんな関係があったのでしょうか。次回、それを紹介しましょう。

・休みなく・
大学の講義も終盤となりました。
15回の講義をしなければならないので、
7月一杯講義をすことになります。
そして、8月の上旬に定期試験となります。
その後、採点、集計、評価をして
お盆明け直後が成績の提出になっています。
その後すぐに、夏の集中講義が続きます。
気の休まることがありません。
その合間をぬって研究もしなければなりません。
今も論文の締め切りに追われています。
大学教員は、夏も休むことなく
働かなけばならないようです。

・Macrostrat・
地質データベースであるMacrostratは
http://macrostrat.org/
というサイトにあります。
私はまだ使ったことのがないのですが、
統計的に処理するには便利なデータベースだと思います。
ただしまだベータ版でバージンも0.3となっています。
一部の機能しか公開していなようなので、
今後、完成すれば公開されることになるようです。
現在北アメリカ、ニュージーランド、深海掘削のデータ、
カリブ海が公開されています。
現在オーストラリアが準備中だそうです。
「数は力(Strength in numbers)」としています。
その証明の一つとして、今回の報告があります。