2011年1月13日木曜日

2_87 極限生物:GFAJ-1 その2

 NASAの発表は地球外生物ではなく、アメリカの湖から発見されたバクテリアでした。しかし、そのバクテリアは、生物学者を驚かすものでした。それは、どのような生物だったのでしょうか。

 前回、NASAが、12月初めに、地球外生命の証拠探しに衝撃を与えるような発見の記者会見を開くというところまで紹介しました。その会見の内容は、残念ながら、地球外生命の発見ではありませんでした。
 アメリカの科学雑誌「サイエンス電子版」の12月2日(米国時間)に掲載された論文のタイトルは、

A Bacterium That Can Grow by Using Arsenic Instead of Phosphorus
(リンの代わりにヒ素を使って成長できるバクテリア)

というものでした。
 発見されたバクテリアは、れっきとした地球上の生物でした。発見場所は、アメリカ、カリフォルニア州のモノ(Mono)湖です。モノ湖は、塩分の濃度が非常に高く、アルカリ性で、通常の生物では、非常に生きづらい環境です。さらに、湖水のヒ素の濃度も高く、生物にとっては極限的な環境となります。ヒ素は通常の生物には猛毒となります。
 ところが、そんな環境でも、生きている生物がいました。このような過酷な環境で生きる生物を極限生物と呼ぶことがあります。
 そのバクテリアは、プロテオバクテリア門ガンマプロテオバクテリア綱オセアノスピリルム目ハロモナス科に分類される真正細菌で、GFAJ-1と呼ばれています。
 このGFAJ-1自体は、2009年にフェリッサ・ウルフ-サイモン(Felisa Wolfe-Simon)博士がすでに発見していました。今回、彼女とその共同研究者が、この生物を培養して、その特徴を明らかにしました。
 その特徴は、論文のタイトルどおり、リン(P)の代わりにヒ素(As)を使って成長できる生物であったということです。
 生物における主要6元素と呼ばれているのは、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)、酸素(O)、イオウ(S)、そしてリンです。他の元素も使われていますが、その量は少なくなります。
 これらの元素が、別の元素に置き換わることがあるのは知られていますが、その量は微々たるものでしかありません。6つの元素のどれかを、たくさん入れ替えて生きている生物は、今まで知られていませんでした。
 6元素の中でリンは、DAN(生物の中で遺伝情報を記録しているもの)やタンパク質(生物の体を構成するもの)、ATP(エネルギー代謝を行うもの)などを形成するために、不可欠な成分となっています。ですから、リンがなかったら、生物は成長することも、生きていくこともできないと思われていました。
 ところが、GFAJ-1は、リンの代わりにヒ素を使って生きていき、成長できることがわかったのです。これは、今まで知られている地球上の生物では、想像もできない仕組みでした。地球以外の環境(例えばリンが少ない天体)や、地球生物とは違ったメカニズム(6元素以外の代替元素で)で生命活動をする生物がいる可能性を示しています。それが「宇宙生物学的」に貢献し、「地球外生命の証拠探しに衝撃を与える」ことを意味しているということだったのです。
 そもそもヒ素は、なぜ生物に有害なのでしょうか。それは、周期律表をみるとわかるのですが、ヒ素は、リンの下に位置しているために、化学的にはリンと似た性質をもっています。ですから、リンとヒ素は、簡単に置き換わってしまいます。生物は、リン酸イオンとして使っていますが、その化学的な振る舞いは、ヒ酸イオンと似ています。
 ところが、ヒ素は、多くの生物にとっては毒として作用します。かつてヒ素は、殺鼠剤や暗殺に利用されましたし、森永ヒ素ミルク中毒事件、和歌山毒物カレー事件などはで何人も死人がでています。もちろん微生物のようなものにとっても、毒になります。
 さて、GFAJ-1が、ヒ素を利用しているというのは、どのようにして調べてきたのでしょうか。その内容は、次回としましょう。

・寒波・
正月からしばらくは全国的に寒波が襲い、
寒い思いをされている方も多いと思います。
私も、北海道と愛媛とで
それぞれ違った寒さを味わっています。
先週の6日に愛媛に戻ってきました。
長く空けていた家は冷え冷えとしていて、
ストーブをつけてもなかなか温まりません。
北海道の家は、ストーブをつけっぱなしでので
暖かく快適でした。
まあ、その分エネルギーもたくさん使っていることになります。
今年の冬は、四国で小さなストーブで暖をとりながら、
過ごすことになります。
でも、これも四国での研究生活の一部です。
愛媛の山奥の寒さも、せいぜい楽しみましょう。

・深酒・
先日、友人宅で久しぶりに酒を飲みました。
宴会は長時間に及んだのですが
どうも調子にのって飲み過ぎたようで、
朝8時前に起きたら気分が悪く、
久しぶりに二日酔いになりました。
9時半くらいまでもうひと眠りしたら
やっと酒が抜けました。
でも、飲み過ぎた翌日は、
仕事がなかなか思うようには進みませんね。
やはり、飲み過ぎには注意ですね。