2009年9月17日木曜日

5_85 巨大火山:テクトニクス9

 コールド・プルームの反作用のように、マントルの底から暖かいホット・プルームが上昇します。その上昇流がマントル対流のスタートですが、その上昇流がさまざまの火山活動、そしてプレート・テクトニクスの基本となる海嶺の活動をも説明していきます。

 ホット・プルームはマントル物質(カンラン岩)が細い管のような状態で上昇していく流れです。このホット・プルームが、少々不思議な上昇プロセスを取ることが分かってきました。
 物性を調整して小さな水槽の中で、マントルを再現するモデル実験がなされました。すると、上昇流の最上部がキノコのような形状になることが分かってきました。キノコの傘の部分が、くるくると内側に巻き込まれていきます。その規模は、巨大で上昇流の何倍もの大きさになります。そのキノコ状の部分に、温かいマントル物質が溜まることになります。つまり巨大なマントルだまり(マグマだまりでないので注意)になります。そこから、枝分かれしたマントル物質が上昇します。
 もし、そのマントル物質の流れが、直線的な割れ目に入っていけば、中央海嶺になります。太平洋には、非常に古い海洋地殻があるので、その活動時期は少なくとも1億5000万年以上に達するはずです。中央海嶺といえば、海洋プレートの形成の場でもあります。つまり、プレート・テクトニクスのスタート地点でもあります。
 キノコからそのままマントル物質が上昇すれば、活動域が最大1000kmに達するような超巨大火山を形成することもあります。海嶺も巨大火山も、巨大なマントルだまりがあるため、活動期間は数1000万年から数億年におよぶ長いものとなります。非常に息の長い火山活動となります。
 このようなホット・プルームがどのような履歴をもっている物質かを調べたところ、ある見積もりでは、10億年前の海洋プレートに由来するという説もあります。沈み込んだ海洋プレートが、コールド・プルームとして下降し、D"層として長らくマントルの底にあったものが、10億年の時を経て、地表に戻ってきたことになります。
 地球全体で見たとき、ひとつのホット・プルームが上昇してくると、火山活動が活発な時期ができます。実際に地球の歴史で、火山活動の活発な時期をみていくと、数億年に1度の割で、激しい活動が起こってきたことがわかってきました。これが、メガリスの落下、ホット・プルームの上昇などのサイクルに対応していると考えらます。
 以上が、地球全体におよぶテクトニクスとなります。テクトニクスとは、地球の大地の構成をつくりあげるためのモデルのことです。このような、ホット・プルームやコールド・プルームによるテクトニクスを、プルーム・テクトニクスと呼びます。プレート・テクトニクスが地表部分の営みの解説であったの対し、プルーム・テクトニクスは、マントルにまでおよぶ地球全体のテクトニクスといえます。
 プルームは、定常的なマントルの流れを意味するのではなく、間欠的に起こるもので、総体としてみると対流となっています。このプルーム・テクトニクスは、マントル対流を意味し、プレート・テクトニクスもモデルの中に組み込んでいます。現状では、一番多くのことを説明可能なテクトニクスのモデルです。

・科学の流れ・
プルーム・テクトニクスは、丸山茂徳さんが
当時名古屋大学におられた深尾良夫さんが作成された
地震波トモグラフィを始めて見せてもらったとき、
思いつかれたと本人から伺っています。
丸山さんは、地球の各地の地質をたくさんみてきて、
まとめてこられたからこそ、思いついたのでしょう。
しかし、それをモデルとして、多くの人が納得する形に
データや論理を積み重ねていくことが、本当の科学というものです。
それには、多くの研究者の協力が必要になります。
最初は少数派でしょうが、そのモデルがいけるとなると、
だまっていても多くの研究者は研究していきます。
そのような流れを生めるかどうかが重要なのかもしれません。
プルーム・テクトニクスは現在では主流となっています。

・夏休み・
北海道も、いよいよ秋が深まってきました。
大学も来週から後期が始まります。
ですが、私の夏休みはまだ終わっていません。
今度の連休は京都にいきます。
家族で里帰りです。
家族での里帰りは久しぶりです。
墓参りと京都の奈良へもいってみよう思っています。
それが終われば、後期のスタートです。
秋めいてきての夏休みは少々奇異な感じがしますが。
私は、9月が一番、調査できる時期なので、
9月が私の夏休みとなります。