2009年9月10日木曜日

5_84 ホット・プルーム:テクトニクス8

 D"層がプレートの墓場ですが、そこはプレートの揺りかごでもあります。核で温められたD"層が、ホット・プルームとして、上昇してきます。これが、上昇するマントル対流となります。これが解明されれば、マントル対流の全貌がわかることがになります。このようなマントル対流全体が、プルーム・テクトニクスと呼ばれています。

 D"層が海洋プレートの墓場だというのを、前回、紹介しました。D"層は、マントルの底に、部分的にしか見つかりません。長年地球はプレート・テクトニクスが働いていたわけですから、海洋プレートは大量に沈んでいったはずです。それが、D"層が全域にないのは、不思議な気がします。D"層がコールド・プルームの到達後、形成されるわけですが、その後が、少々気になるところです。
 D"層は、時間がたてば、核から伝わる熱によって温められることになります。でも、D"層の岩石は、下部マントルのもともとあった岩石(カンラン岩)とは違った経歴で、性質も違った岩石となっています。D"層は、いったん地表を経由した岩石で、なおかつ不均質です。このような物質が温められると、地震波の速度は低下していくので、周囲の下部マントルのカンラン岩と、地震波では見分けがつかなくなります。
 だたし現在では、地震波の解析技術も進み、D"層には、一箇所だけですが、異常なところが見つかっています。カリブ海の下に見つかっているものですが、ここD"層では、海洋プレートの玄武岩の成分が、一部分が溶けているのではないかと考えられています。
 海洋プレートの中で一番解けやすい成分は玄武岩です。溶けた玄武岩は、鉄の成分が多いため、周囲のマントル物質より重くなる可能性があり、マントルと核の境界に溜まってしまうことが考えられます。そのようなマグマが集まれば、異常な低速度層となるはずです。中央太平洋のD"層の底には、マグマが集まっているかのような低速度層が見つかっています。
 このようなD"層の実態は、現在も研究中で、上で紹介した解釈も、今後二転三転する可能性があります。まだ未解決な部分が多々あり、こからの課題です。
 さて、コールド・プルームが発生すると、必然的にホット・プルームが発生します。なぜなら、コールド・プルームとして大量の物質が、マントルの底に向かって降下していけば、その量に見合った物質が上にいかなければ、物質の収支があいません。
 上昇するところは、長年D"層として温められた部分が主力となるはずです。上昇していくマントル物質は、暖かく、メガリスの大きさに見合ったものになるはずで、巨大なマントル上昇流となります。塊としていくより、細い管のような流れとして上昇していくと考えられます。これを、ホット・プルームと呼んでいます。
 この上昇の仕方と規模が特異なのですが、それは次回としましょう。

・プルーム・
ホット・プルームは、最初は、スーパー・ホット・プルームと
呼ばれていました。
少々まどろっこしい用語なのですが、
プルーム・テクトニクスを考えだされた丸山茂徳さんが
そう呼ばれたため、しばらくその名称が使われていました。
ただし、コールド・プルームはそのままです。
当時、プルームといえば、
ハワイなどのプレートの真ん中で活動する、
マグマの由来がはっきりとしないマントル上昇流に対して
ホット・プルームと名称が事前に使われていました。
それとは規模が違うので、スーパーをつけて区別されました。
しかし、ハワイの火山も、実は、D"層から来た
ホット・プルームに由来するものであると考えられています。

・宮崎調査・
このメールマガジンが届く頃には、
私は、宮崎で地質調査をしてます。
4日に宮崎入りをして、11日までいます。
1週間の調査ですが、いくつかの目的があるのですが、
今回は、宮崎層群を調べることが目的です。
調査の様子は、別の機会に紹介しましょう。