2007年11月29日木曜日

3_61 こんにゃく石:変わった石4

 今回は、変わった石シリーズの第4弾として、こんにゃく石をお送りします。石には、硬くないものもあるのです。


 「石頭(いしあたま)」というと、ものわかりの悪く、融通がきかない人のことをいいます。変えようがなく、性格が石のように硬いことをいうわけです。ですから、石とは硬いものの象徴でもあります。
 ところが、柔らかい石があるのです。その日本名は、こんにゃく石と呼ばれています。非常の印象的な名前ですし、一度でも見るとその不思議さですぐに覚えてしまう石です。こんにゃく石は、名前の通り柔らかい石です。さずがに、本家のこんにゃくほどはぐにゃぐにゃはしませんが、それでも石とは思えない柔らかさをもっています。石の充実した博物館には、よく展示されている標本です。
 こんにゃく石は、正式名称はイタコルマイト(itacolumite)と呼ばれています。石のこのような柔らかい性質を、撓曲(とうきょく)性と呼びます。イタコルマイトは、ブラジルのミナス・ゲライス(Minas Gerais)州のイタコルミ(Itacolumi)山という地名に由来しています。もちろん、そこにはイタコルマイトがあります。
 イタコルマイトは、もともと石英がたくさん集まってできた堆積岩で、石英岩という石です。顕微鏡でみると石英の粒の間が隙間だらけになっています。本来なら粒の間も鉱物で埋められているはずなのですが、それが風化や変成作用で融けてなくなってしまっています。そのため、砂粒の間に狭いですが隙間が空いて、粒が動くことができます。一粒の動きはほんの少しですが、石のサイズになると、結構な動きとなります。これが曲がる原因です。
 イタコルマイトの産地として、インドとブラジル、アメリカのアパラチア山脈のものが有名です。インドは石英質砂岩で、ブラジルとアパラチアのものは、変成作用を受けた石英岩(雲母石英片岩)となっています。
 イタコルマイトは、以前はもっと注目されていたことがあります。その理由は、イタコルマイトとダイヤモンドが関係があると考えられていました。イギリスの世界でも有数の百科事典であるブリタニカの1911年の記述には、イタコルマイトを通り抜けてできる石英の脈の中に、ダイヤモンドができる可能性があると書かれています。しかし、当時の記述でも但し書きがあって、ダイヤモンドはイタコルマイトの中ではなく、イタコルマイトが砕けて流れた堆積物の中で見つかると記述されています。
 まだ、結晶の形成される条件もわかっていない時代のことですから、このような推定はいたしかたのないことなのでしょう。今の科学で考えると、イタコルマイトが石英岩としてたまっているとき、上流の別の場所にキンバーライトなとで地下深くから持ち上げられたダイヤモンドがあり、それが堆積物として流れて溜まったものではないかと考えられます。石英岩とは、大陸でできる岩石ですから、そこにはキンバーライトもあったかもしれません。
 こんにゃく石を見てきてわかるのですが、科学は進歩するものですが、不思議さはそのまま残り、今も驚きを与えます。

・訂正・
前回のメールマガジンに
「アポロ計画で、月に関する非常に多くの情報を、
人類は得ることができました。
それから早15年近くたちました。」
と書きましたが、35年の間違いです。
申し訳ありませんでした。
メールマガジンは修正できませんので、
ホームページを修正しておきました。
この間違いは、Fujさんからの指摘でした。
そして、今回のエッセイは、そのお礼を兼ねて、
変わった石シリーズにしました。
楽しんでいただけたら幸いです。

・冬到来・
北海道は、ここしらばく雪が続いています。
そして冷え込みも続いています。
ある程度の量も降り、根雪とはいきませんが、
草原や畑は、真冬のように白い状態です。
交通量の多い道路はすぐに融けてしまいますが、
まだ除雪が入る時期ではないので、
早朝では残った雪が氷って、歩きにくい時もあります。
今年の冬は積雪と寒さで一気に到来したようです。