2007年11月8日木曜日

1_62 最古のダイヤモンド(2007.11.08)

 前回、キンバーライトというダイヤモンドを含むことのある石の話をしました。今回は、キンバーライトの中のダイヤモンドではなく、変わったところから見つかったダイヤモンドの話です。

 ダイヤモンドの多くは、キンバーライトあるいはキンバーライトから由来した堆積物としてたまったものです。しかし、実はそれ以外にもダイヤモンドはできることが確認されています。
 例えば、隕石の中や、隕石が衝突した場所(超高温高圧になるから)、超高温高圧の条件の変成岩からもダイヤモンドは発見されています。残念ながらそのサイズは、顕微鏡レベルのもので、宝石用とはなるような大きなものはありません。しかし、小さなダイヤモンドでも、科学で果たす役割は大きいものがあります。
 さて、2007年8月23日号のネイチャーという科学雑誌に、ドイツのメンネケンらが、地球でもっとも古いダイヤモンドが見つかったという報告をしました。発見場所は、地球最古の鉱物がみつかっている西オーストラリアのジャックヒルということろです。
 ジャックヒルの堆積岩は20億年前くらいに溜まったものですが、その中にジルコンという鉱物が含まれていました。1トンの堆積岩のなかに1グラムのほどしかジルコンはありません。でも、ジルコンは非常に丈夫な鉱物で、一度できたらなかなか変化することなく残っています。ジャックヒルのジルコンが地球最古の時代を示しています。ジルコンの時代は、44億0400万年前が最古ですが、それより新しいものも含んでいます。
 ジルコンの中には、いろいろな鉱物が含まれています。挙げるとアパタイト、石英、ゼノタイム、モノズ石、ルチル、黒雲母、角閃石、カリ長石、斜長石です。メンネケンらが1000個のジルコンを調べたところ、1000個の内45個からダイヤモンドを含むものが見つかりました。そしてダイヤモンドには、石墨が伴っていました。石墨は、ダイヤモンドが変わったものと考えています。
 ジルコンに取り込まれた鉱物とは、ジルコンかできた時に存在していなければなりません。ジルコンはマグマの中で結晶として形成されます。取り込まれた鉱物は、少なくともジルコンと同じ時代か、それより古い時代のものとなります。
 ダイヤモンドを含むジルコンの年代は、42億5200万から30億5800万年前のいろいろな年代のものから見つかっています。その中に、3つの古いダイヤモンドが見つかっていて、ジルコンの年代は42億5200万年前、41億3200万年前、40億9600万年前です。今まで見つかっている地球のダイヤモンドでは、33億年前のものですが、それより古いものとなっています。ダイヤモンドはこれと同じか、それより古い時代にできたものだということになります。
 メンネケンらは、ダイヤモンドの年代に広がりがあることから、ダイヤモンドが形成される条件が何度かあったか、あるいはある時できたダイヤモンドが循環していたか、ということを意味していると考えました。そして、地球初期が特異な条件でなければ、42億5000万年前にはすでにダイヤモンドをつくれるような環境があったということになります。その条件とは、比較的厚い大陸リソスフェアができていて、地殻とマントルの相互作用が起こっていたというものです。
 さてさて、本当のところはどうでしょうか。まだまだ検討の余地がありそうです。

・時間の制約・
メンネケンらの発見は、重要な意味を持ちます。
それは地球の冷えるスピードを大きく変えてしまうからです。
最古の岩石は40億年前で、表面がマグマが固まる温度、
つまり地殻ができたことを意味します。
最古の堆積岩は、38億年前に水があったことを意味しています。
今までなら、地球の誕生が45億年前ですから、
地殻ができるまで5億年の猶予があったのですが、
今回の発見は、地球の地殻ができるのに
2億5000万年しかないということです。
今までの半分の時間で、一気に冷めたことになります。
地球の形成時は、ある見積もりのよりますと
6000度にもなっていたと考えられます。
それが、2億5000万年間で、
表層に水ができる温度まで下がるということです。
短い時間の間に多くのことが起こったとして考えなければなりません。

・難題・
もう一つ不思議なことがあります。
ジルコンは、普通、花崗岩のマグマから結晶します。
花崗岩のマグマは、浅いところで低温で形成されます。
そして水があればできやすくなります。
ところがダイヤモンドは、
少なくとも地下100kmより深くなければできません。
ダイヤモンドが花崗岩のマグマ、それもジルコンに中にできるには、
複雑なプロセスが必要になります。
浅いところまで何らかの作用で
ダイヤモンドをいったん持ってこなければなりません。
そして、ジルコンの中に取り込まれなければなりません。
今回の発見は、地球の歴史に、
なかなか難しい問題を提起したのです。