2007年11月15日木曜日

1_63 日本のダイヤモンド(2007.11.15)

 今年9月上旬、テレビや新聞で日本からのダイヤモンドが発見されてというニュースが流れました。その報道が一段落したので、今回のエッセイを書きました。

 今年の9月、札幌で行われた日本地質学会の第114回学術大会で、日本ではじめてダイヤモンドが発見されたという発表が水上知行氏らによって行われました。それは大きなニュースとして報道されました。
 ダイヤモンドは、キンバーライトあるいはキンバーライトから由来した堆積物としてたまったものが大部分です。しかし、サイズが小さく、量も少ないですが、隕石の中や、隕石が衝突した場所(超高温高圧になるから)、超高温高圧の条件の変成岩からもダイヤモンドは発見されています。
 キンバーライトは火山岩ですが、日本によくある火山とはまったく違った性質のものです。キンバーライトは古い大陸地殻があるところでしか見つかりません。もちろん日本からは見つかっていません。
 ですから、日本であるとすれば超高温高圧変成岩の可能性ですが、それが短時間で上昇するのはなかなか難しそうです。地質学的な常識として、日本の火山からは、ダイヤモンドが見つかるはずはないと考えられていました。
 ところが、日本の火山岩からダイヤモンドが見つかったというニュースが流れたのです。
 発見されたのは、四国のある場所(場所は産地保護のために公開されていません)から産出する火山岩(正確な岩石名称は公開しません)があります。その火山岩中にあった捕獲岩から見つかりました。捕獲岩とは、マグマが上昇してきた時、途中にあった岩石を取り込んだもので、今回の火山岩にはマントルにあった岩石が捕獲されてきたものです。
 その捕獲石は、マントルを構成しているもので、輝石を含んでいます。捕獲岩の輝石の中に、小さな泡(流体包有物といいます)がありました。その泡のうち、二酸化炭素からできているものの中に1ミクロンメートルほどの小さなダイヤモンドの粒が発見されました。
 非常に小さいものですが、ダイヤモンドがあったということ自体に意味があります。今回見つかったタイヤモンドは、小さいだけでなく、非常に複雑な経歴と産状となっています。マントルにあった岩石の結晶の流体包有物の中です。それは、古い大陸地殻下からもたらされる通常のダイヤモンドのでき方とは明らかに違ったものであろうと考えられます。しかし、火山岩の中にそのようなダイヤモンドがあり、日本列島のような地質学的環境でも見つかるということが重要です。
 あまりに小さく、特殊な条件なので、多くの研究者はタイヤモンドがあるなどという視点でみていなかった場所です。今後、ダイヤモンドがあるかもしれないということを頭においておけば、もしかするともっといろいろなところから見つかるかもしれませんね。

・情報公開・
今回のダイヤモンドの発見を通じて、
情報公開の難しさを感じました。
発表者や日本地質学会のプレス情報では、
産地の保護を考えて、明確な場所は示されていません。
しかし、インターネットを検索すると、
研究者仲間しか知らない情報が、
公的あるいは私的に公開されています。
インターネットで情報を公開している人は、当事者でないから、
情報公開に関して無頓着にいられるのでしょう。
当事者がいくら黙っていても、情報は漏れていくという例でしょう。
もちろん、原則的に科学の成果は市民に即座に還元されるべきです。
しかし、そのような最新情報を悪用する人もいます。
マニアや興味本位の研究者には、新鉱物が見つかると、
その産地に行って対象の岩石を採集する人もいます。
その結果、本当に研究したい人が採りいく頃には
肝心の試料が取れない状態になっていることがあります。
あわてて保護しても、もう手遅れも場合もあります。
地質学者はそのような例をいくつも見聞きしているはずです。
今回のダイヤモンドについても、私もいつどこまで公開するか迷いました。
すぐに書こうかと思いましたが、しばらく間を置いた方がいいと思いました。
そして、思案の結果が、上記の文章となりました。

・冷え込み・
朝夕の冷え込む日があります。
もちろん暖かい日もあります。
わが町にはまだ雪は降っていませんが、
山並みは何度か白くなりました。
いつ里に初雪があってもおかしくありません。
近所では雪を予想して冬タイヤに換えている光景もよく見かけます。
今年の夏は暑かったのですが、
冬は暖かいのでしょうか、それもと寒いのでしょうか。
原油価格が上がっていますので、
北海道の冬は、懐が寒くなりそうです。