2007年7月26日木曜日

3_58 正珪岩:変わった石2

 大陸でできた砂粒が、長い地球史の旅の末、日本列島の地層の中から見つかります。そんな石ころから、自然の営みの悠久さを、感じることができるでしょうか。


 orthoquartziteは、オーソコーツァイトあるいはオルソクォーツアイトと呼ばれる石があります。英語をカタカナ書きにしようとすると、発音の違いでいろいろな表記が可能で混乱します。日本語では、オルト珪岩あるいは正珪岩と呼ばれていますが、一般方には、なじみが少ない石の名前だと思います。そして、そのような石を見たことのある人は少ないでしょう。その理由は、日本では珍しい石だからです。
 そもそも珪岩は、堆積岩の一種で石英の粒子が集まって固まったものです。石英砂岩とも呼ばれています。珪岩の中の石英の粒は、ほとんど丸みを持っているという少々変わった性質を持っています。
 砂岩をつくっている粒子の90%以上が、石英からなるものについて、オルソ、「正」という名称をつけ正珪岩と呼ばれます。
 珪酸を95%以上含むもので似たものに、チャートとよばれる岩石があります。以前は、チャートのことを珪岩と呼んだことがありますが、今ではチャートと珪岩は別物として区別されています。チャートも堆積岩の一種ですが、チャートの多くは深海底で、生物の遺骸が集まってできたものです。正珪岩とは明らかに起源の違うものだとわかっているので、区別されています。
 日本では、正珪岩が地層をつくることはありません。上で珪岩の仲間は、丸い砂粒からできているといいました。このような大量の砂粒は、大陸内部の砂漠などをつっている砂です。ですから珪岩は大陸内部の湖などで溜まった岩石ではないかと考えられています。大陸地域の地層中には、正珪岩からできたものがよく見られます。
 日本はもともとは大陸の縁にあったのですが、内陸ではなく、海からおし寄せるプレートの断片や堆積物、そして火山などからできているようなところです。正珪岩がたまるような環境ではなかったのです。日本列島を構成する岩石からみると、やはり珪岩、特に正珪岩は、変わったと石といえます。
 ところが、日本各地で、地層の中の礫として、正珪岩は時々見つかります。礫岩の中にはたくさんの正珪岩の礫を含むこともあります。ですから地質学者には結構なじみのある岩石なのです。
 正珪岩のでき方を考えていきましょう。大陸の内陸部を構成している岩石が地表にあると、長い時間の経過で、風化を受けてきます。物理的や化学的に弱い結晶は、長い時間の風化に耐え切れず、小さな破片となり、風で遠くに飛んでいったり、川で流れていきます。なかでも一番頑丈な結晶である石英は、侵食に耐え、丸くなりながらも生き残ります。それがたまたま地層ができるような湖に流れ込み、堆積すると、正珪岩からできた地層になります。
 その正珪岩の地層も、地表にあれば、やがて浸食を受けます。侵食を受けたものは正珪岩の小石として、川となって海に運ばれます。その中には、礫岩として大陸周辺に地層に紛れ込むこともあります。これが今、日本列島に見つかる正珪岩の由来なのです。
 私が学生の頃は、日本で正珪岩が見つかっていたのは、四万十層群の礫岩中だけでしたが、今では、日本の各地のいろいろな時代の地層から見つかってきました。日本列島には、このような長い旅をしてきた石ころもあるのです。

・大地の営み・
正珪岩を礫として含む地層は、
四万十層群、山口県幡生累層上新地礫岩層、
手取層群赤岩亜層群、大阪層群、
矢良巣岳礫岩、刀利礫岩層、綴喜層群礫岩、
などなど、いろいろな時代、各地の地層からみつかっています。
私は、日本でも上の例の2箇所で見ることができました。
ネパールでは、正珪岩からできた地層を見ています。
しかし、日本の礫岩の中の正珪岩は、小さいものが多く、
よく見ると、その小さな石の中に、
石英の丸い粒が見えることがあります。
そんな粒を眺めると、大地の営みの偉大さを感じてしまいます。

・定期試験・
大学は、現在、定期試験の真っ最中です。
今週が試験週間で、これが終われば、大学も一段落です。
私は、まだまだ仕事があり、日曜日にオープンキャンパスで
高校生向けのミニ講義を担当しなければなりません。
試験が終われば、前期の採点とその入力がまっています。
大変ですが、これも重要な仕事です。
それが終われば、私にも楽しい夏休みがきます。
多分9月になってからですが。
一段落したら、早速調査に出かけたいと思っています。
今年は少々新しい調査法を実行したいと考えていて、
わくわくしています。
新しく開発してもらった装置も試してみたいと思っています。