2006年4月6日木曜日

2_45 生物の分類4:分類の基本

 分類についての話が続いています。今回は、種の名前の付け方についてみていきます。

 生物の分類は、種(しゅ)が最小の単位、基準になっています。種には、地域、国ごとに違った名前が付けられています。日本では和名(正式には標準和名と呼ばれる)も付けられているものもありますが、これは日本独自の呼び方となりますす。
 その種の名前のつけ方(命名といいます)が、研究者によってばらばらだと、混乱を招きます。また、一つの種について、国や地域ごとに違った名前がつけられると、種の比較をすることができません。ですから、世界で統一された命名の方法が必要となります。現在は、命名規約として、国際的に統一されたものが定められています。命名規約に基づいて決められた世界共通の種の名称を、学名と呼んでいます。
 学名は、種の名称と、種より上の分類基準である属の名称をあわせて付けることになっています。順番は属名の次に種名(正式には種小名と呼ばれます)となります。正式には、その後に命名者の氏名と記載した論文の出版年が付けられます。ただし、分類学以外の論文では、命名者や年号などは省略してもいいことになっています。さらに、学名は、ラテン語で表記することになっています。
 このような2つの分類名を用いて名前を付ける方法は、「二命名法」と呼ばれ、スウェーデンの博物学者リンネ(カール・フォン・リンネ、1702年~1778年)が、1758年に「自然の体系(Systema Naturae)」という著書で提唱したものです。その方法が、現在も使われています。
 リンネは、当時知られていた動物と植物について整理して、分類表を完成させました。リンネは、属と種の名称をあわせて用いること、ラテン語を用いることの他にも、重要なことを定めました。それは、分類の階層構造です。種、属の上に、目、綱という分類の階層を設けました。現在では、分類の階層は、下位から、種、属、科、目、綱、門、界の7つとなり、より詳しいものになっています。
 これらの分類の階層の中で、同じところに属するものは、同じ祖先から進化してきたものと考えられています(単系統と呼ばれる考え方)。ただし、このような進化に基づいた考え方は、リンネより後に付け加えられたものです。なぜなら、リンネが生きていたころには、まだ、進化という考えがなかったからです。ダーウィンが進化論を提唱した「種の起源」の出版は、リンネの「自然の体系」より100年後の1859年のことです。
 種を決めるのには、その種についての「記載論文」が報告されなければなりません。それが出版されてはじめて、種が認定されることになります。一度命名された種名は、分類が変更されない限り変更できません。もし、種名の発表時に誤植があっても、そのままの種名が使われることになります。ですから、この「記載論文」は、非常に重要なものとなります。
 さらに重要なのが、その「記載論文」に用いられた生物の標本(模式標本)です。それ以降の種の基準となるものですから、永久保存されることになっています。そして、似たものが同種なのか新種なのかは、模式標本をしらべて結論が出されことになります。
 しかし、人間のやることですから、間違いはあります。同じ種について、別の名前が付けられることがあります。たとえば、同じころに同じ生物の記載を、別々の研究者が発表したり、先人が記載していたのを知らずに新たに新種として記載してしまう、などのような場合が生じます。
 そんな時は、先に発表されたものが、優先されます。これは、先取権の原則と呼ばれています。先に記載されていても、誰も気づくことのなく、後発の学名が広く使われてしまった場合は、学会で審査を受け学名とされることがあります。古い誰も気づかなかった種名を遺失名と呼び、使えない学名はシノニム(同物異名)と呼ばれます。
 種は、現在も新しいものが次々と見つかっています。さすがに大型の哺乳類では、めったに新種は見つかりませんが、昆虫や海洋生物では、毎年、実にたくさんの新種が発見されます。私達の記載してきた種の数は、実は現在生きている生物のほんの一部に過ぎないという見方もあります。まして過去に生きていた生物(古生物)の種の数ともなると、ますます知っている比率は少なくなることは、簡単に予想できます。まあ、どれだけの過去に生物がいて、今どれだけ生物がいるかもわからないのですから、比率を考えること自体が、無駄なことなのかもしれませんが。
 私達が自然について知っていることは、すべてでないこと、いやほんの一部であることを、心しておく必要があるようです。

・L・
二命名法は、実はリンネより200年前に
ボーアン兄弟によって最初に用いられたことが
現在ではわかっています。
しかし、リンネが二命名法を普及させたため、
リンネの業績と考えられています。
学名には記載者の名前がつけられるのですが、
正式な氏名を記さなければなりません。
しかし、記載者でL.と略称で書ける人が一人だけいます。
それはリンネで、L.はCarl von LinneのLなのです。
ただし、種名として、リンネの記載が、
現在も生き残っている場合だけですが。

・進化の考え・
リンネの分類の研究は、最初は植物からはじまり、
動物へと広がっていきました。
リンネは人間を分類学上に組み入れました。
人間は、属名をホモ、種名をホモ・サピエンスと命名されます。
ホモとは人という意味で、ホモ・サピエンスは賢明な人という意味です。
やがてその分類は、鉱物にまで広がりました。
鉱物は、現在ではまったく違った概念で分類されています。
しかし、リンネの時代には、進化という考えはなかったのです。
リンネは、自然界を構成するものを細分していき、
たどり着いた要素に、分類を適用していったのかもしれません。

・新学期・
いよいよわが大学でも、入学式が先日終わりました。
わが校の卒業生であるカーリングの小野寺歩さんがゲストで呼ばれました。
昨年は日本ハムファイターズのヒルマン監督でした。
いずれも夢を持ち、追い続けることの重要性を話されていました。
私も同感であります。
今週は在学生と新入生に対してのガイダンスがあります。
週末には、1泊2日の合宿オリエンテーションがおこなわれます。
あわただしい一週間の後の来週の月曜日からは、
いよいよ新しい学期の講義がはじまります。
私は、新学科で、はじめての講義となります。
準備がなかなか大変ですが、がんばっていくしかありません。