K-Pg境界の地層のルテニウムの同位体組成から、衝突天体は、炭素質型小惑星という結論をだしています。その根拠はどのようなものなのでしょうか。少し詳しく紹介していきましょう。
前回、衝突天体が、炭素質型小惑星だったということを紹介しました。ルテニウムの同位体組成を根拠に決定したのですが、その詳細を見ていきましょう。
フィッシャー・ゲッデらは、K-Pg境界に濃集しているルテニウムの同位体組成を、高精度に分析していきました。同位体組成の測定は、精度を上げるために、101Ruの値を分母にして100Ruとの同位体比でおこなわれます。その値を、比較するときは、違いが小さいために、ある基準にされている物質(標準試料)と比較した値でおこなわれます。
標準試料としては、南アフリカのブッシュベルド(Bushveld)クロミタイト(UG2と呼ばれます)を用いられています。試料でえられた値(比)を、標準試料の値(比)で割った値(比)として規格化していきます。この値は小さいので、1万倍(1万分率)して示されます。このような比率はε100Ru(イプシロン)として表します。ほかにも1000倍にするパーミル(‰)、100倍したものは馴染みのあるパーセント(%)などの表示法があります。
隕石でも、新たにルテニウム同位体組成を高精度に測定してε100Ruを求めています。分析された隕石としては、炭素質コンドライト、エンスタタイト・コンドライト、普通コンドライト、鉄隕石でした。その結果、K-Pg境界の試料は、炭素質コンドライトに非常に似ていることが明らかになりました。
次に、論文タイトルにあった炭素質型小惑星についてです。炭素質型小惑星は、小惑星をスペクトル分析によって区分されたものです。スペクトル分析とは、光(天体の場合は太陽光)が天体に当たったとき、表面の物質によって、吸収されたり反射されたりする光の波長が決まっています。波長を細かく調べることで、表層の物質を区分していくことができます。例えば、ものの色などは、その物質の特徴を表していることを意味します。
小惑星帯周辺には、小天体が多数あるので、望遠鏡を用いてスペクトル分析がされています。そのスペクトル分析をもとに小天体が分類されています。
隕石と小惑星が対比されています。隕石は小惑星帯から飛来していることが、落下時の軌道計算からわかっています。小天体と隕石は、それぞれをスペクトル分析して比較していくことで、両者の対応関係を決めることができます。
炭素質型小惑星とは、隕石の炭素質コンドライト(carbonaceous chondrite)と似ているC型(炭素のC)に区分されるものです。炭素質型小惑星は、木星軌道より外側に多く分布していることもわかっています。
K-Pg境界で衝突した天体は、隕石としては炭素質コンドライトの同じルテニウム同位体組成をもち、炭素質コンドライトは、木星軌道より外側から由来した炭素質型小惑星に類似していることになります。以上のことから、論文のタイトル「衝突天体が炭素質型小惑星だった」ということになったわけです。
さて、この論文では、地球のほかの時代の衝突クレータの物質も分析しています。それは、次回としましょう。
・三寒四温・
2月末から3月初めにかけて、
雨が降ったり雪が降ったり
根雪が溶けたり凍ったりを
繰り返しています。
冬が終わる頃なので、
三寒四温の様相を呈しています。
春先の三寒四温が終わると、
本格的な春がはじまります。
北海道の春は、雪解けの時期が長く続きます。
今年の雪解けは早く進んでいるようです。
・不足の事態・
3月になりました。
ただし、このエッセイは、
前回のエッセイでも紹介しましたが、
研究室の退去が2月末になったので、
自宅でのコンピュータや研究環境を
整えなければならないのですが
バタバタしている可能性があります。
そのため、早めに予約配信して
不足の事態に備えました。