2017年11月16日木曜日

2_156 最古の生命化石 4:炭素同位体組成

 古い化石の化学的な特徴を捉えるのに、炭素同位体が用いられます。しかし、その値は変成作用などで変わってしまうことが弱点でした。その弱点を工夫で乗り越えたのですが、その値の意味するところはどんなものでしょうか。

 前回、最古の生命化石の検証過程を紹介しました。古い時代の化石は有機物は残らず形態も消えていることが多く、さらに古い時代の岩石は変成作用を受けていることが多く、もともとあった化石の痕跡がなくなっています。しかし、もし岩石中に、有機物の痕跡としてグラファイト(炭素からできている鉱物)があれば、その炭素同位体組成を測定することで、生命の痕跡が検証できることが示されました。
 炭素同位体組成から、変成作用から生まれる傾向と、それと相反する有機物から生まれる傾向を見出し、変成作用を受ける前の有機物の値を見積もることができるという検証方法でした。論文では、炭酸塩岩(変成作用の効果)とグラファイト(有機物の変化)と値の比較検討から、初期(堆積時)の有機物の値を見積もっています。その値は、生物起源の最小値は-28.2‰(パーミルと読みます。千分率のこと)となり、無機的な値との差が25.6‰以上という大きな開きができることがわかってきました。
 このような同位体組成の差、および有機物の値は、生物しかつくれない値、つまり生物起源であることを示している、と報告しています。少々複雑なステップを踏んでいますが、一応、筋の通った説明となっています。
 では、その炭素同位体組成から、どのようなことが読み取れたのでしょうか。
 化石を含んでいたのは海でできた堆積岩なので、39億5000万年前の海洋で生物が存在していたいことが、第一の重要な点です。次に、炭素同位体組成から、その炭素同位体組成は、還元的アセチル-CoA経路やカルビン回路などの代謝作用によるものと考えられるとしています。
 還元的アセチル-CoA経路とは、無機的な化学反応だけで栄養をつくる細菌が用いる代謝の方法です。カルビン回路とは、二酸化炭素(CO2)を使って糖を合成する反応です。まあ、代謝反応のあたりのは、まだ検討の予知がありそうですが、生物の活動があったことは確かのように見えます。
 いずれにしても、35億年前以前になると、今のところ、誰もが認める形態をもった化石の認定には、なかなかたどり着けないようです。しかし、研究者の努力により、堆積岩から次々と生命の痕跡が見つかってくるようになりました。変成作用を受けている堆積岩からも化石の痕跡が見つかるようになりました。
 各地から、そして古い時代へと生命活動の痕跡が遡られていくと、生命の誕生は、比較的短時間にそしてどこでも起きそうに思えてきます。地球で海と生命活動にいたるエネルギーの供給源があれば、どこでも生物が誕生するかのように思えてきます。まあ、それは妄想でしょう。今後も検証作業の継続が必要ですね。

・地質屋・
田代さんたちの報告には、
露頭の写真が何枚か添付されていました。
露頭の岩石の様子を示す写真でした。
しかしその周囲には植物が少し写っていたりして
周りの景観を想像できそうな写真もありました。
少しの景観から、その地への思いが馳せていきます。
地質学者の性(さが)、地質屋だからでしょうかね。

・大荒れの週末・
週末は北海道は大荒れでした。
風が強く、雪混じりの雨の降る荒れた天気でした。
各地で警報もでていました。
日曜日は大学の行事があったのですが、
少々残念な天気となりました。