2017年1月12日木曜日

EarthEssay 5_146 ニュー・ホライズンズ 1:送信完了

 記憶の薄れている方も多いかもしれませんが、ニュー・ホライズンズという冥王星探査機は、近年、科学界に大きな話題を提供しました。気の長い探査計画と、根気よく待ち続ける研究者たちの思いを紹介しましょう。

 ニュー・ホライズンズ(New Horizons)、「新しい地平」という名称をもった人工衛星は、冥王星探査を目的として、2006年に打ち上げられました。9年におよぶ長旅をして、2015年にやっと冥王星までたどり着きました。冥王星は太陽から離れているため、ソーラー発電を利用できませんので、原子力電池が使用されています。
 移動の間は、探査機は休止状態になります。途中に天体があると観測はしていましたが、約半年に一回のペースで、定期的に再起動と点検がなされ、2014年12月6日に冥王星が近づいたので、休眠モードから再始動させられました。
 2015年1月15日から観測を開始し、2015年7月14日には冥王星に最接近し、その後も観測を続け、2016年1月で探査を終了しました。しかし、観測データはその後も送り続けており、2016年10月28日に、やっと全てのデータを送信し終わりました。
 なぜこのようにデータ転送に時間がかかったかというと、観測データを収集することが最優先され、データ転送は二の次にされていたためです。例えば、冥王星と衛星のカロンに接近しているときの観測の速度は、データを送る速度の100倍以上の処理速度でおこなわれました。もし、何かあったときに備えての配慮でしょう。観測で蓄えられてきた膨大なデータを2015年9月から送信をはじめ、総計50ギガビット以上のデータを、15ヶ月かけて2016年10月にやっと送り終えました。
 観測のための探査機ですから、観測最優先で、接近しているうちに可能な限りデータ収集しておく必要があります。そして、データ送信も重要ですが、送る時間は観測が終わってからいくらでもあるはずです。優先順位を考える必要があります。市民にも興味がある冥王星の真の姿を伝える画像も優先され送信されました。
 冥王星の姿は、ハッブル宇宙望遠鏡のぼんやりとした画像しかなく、実態がよくわかっていませんでした。ニュー・ホライズンズが打ち上げられたときは、冥王星は惑星とされていたのですが、2006年に準惑星に区分されるようになりました。ですから、だんだん注目されなくなってきていました。
 しかし、太陽系の外縁天体の代表として、冥王星型天体と呼ばれる存在でもあります。今回のニュー・ホライズンズの観測によって、注目が高まりました。科学的成果はいろいろありますが、市民にとっては、冥王星の鮮明な画像が一番インパクトがありました。冥王星の新たな姿を示すとともに、その科学的成果に期待させました。
 ニュー・ホライズンズが上げた成果は、次回、紹介しましょう。

・原子力電池・
原子力電池とは、放射性元素が崩壊する時の
熱エネルギーを電力に変換する方式です。
プルトニウム(238Pu)やポロニウム(210Po)など
放射性元素のアルファ崩壊で生じた熱を利用しています。
放射性物質を積んでいるので、
打ち上げに失敗すると危険なのですが、
遠くの天体の観測では、太陽光が少なくなるので
どうしても原子力電池を使用する必要があります。
現在ではソーラーパネルの性能もよくなって
木星軌道あたりまではソーラーパネルが使えるようになってきました。
しかし、木星より遠くの天体の探査には、原子力電池が必要になります。
原子力電池こそ、核の平和利用ではないでしょうか。

・始動・
正月、成人式の連休もおわり、
やっと正月気分も抜けたでしょうか。
大学も始動しました。
そして週末には早速、センター試験がはじまります。
今年は、少々、慌ただしい始動となりました。
北海道の小・中学校は、長い冬休みなので、
来週からの始業となりますが。