2015年12月17日木曜日

2_135 41億年前の生命 4:履歴

 ジャックヒルで見つかったジルコンは、「選ばれし」ものでした。そのジルコンは、複雑な履歴と論理を背景に今回の報告に至ります。分析自体は既存の方法でしたが、それを用いた素材とアイディアが優れていました。

 今回報告に利用された「選ばれしジルコン」は、花崗岩を形成するようなマグマからできた結晶でした。その花崗岩マグマは、堆積岩に水が作用してできた可能性が高いものでした。生物にとって、水は重要な環境を提供し、生存するためにも水は不可欠な素材となります。41億年前、多くの生物活動があったとすれば、その痕跡は堆積物に残されることになるはずです。ですから、マグマとともにあった堆積物や水の痕跡をうまく探れば、生物の痕跡が残っているかもしれません。
 生物の痕跡が、何らかの物質に取り込まれ、現在まで残る可能性が一番高いものは、ジルコンでしょう。41億年前の「選ばれしジルコン」には、多数の包有物が含まれていました。包有物には炭素原子からでているグラファイトもありました。そのグラファイトの炭素同位体組成を調べたところ、生物もっていたと考えられる値が得られました。
 この炭素同位体組成は、古い時代の化学化石には常用される手法です。手法自体は新しくはないのですが、それを適用した対象がなかなか素晴らしいアイディアだったのです。ただし、その対象は1万粒から1粒しかなく、それを選び、測定をしていくということがなされました。それが優れた点です。ジルコンの年代は、41億年前のもので地球最古ではなかったのですが、重要な指摘でした。
 最後に、今回の複雑なジルコンの来歴をまとめておきましょう。報告に用いられたジルコンは、堆積岩が水の関与のもとで溶けて花崗岩のマグマができ、そのマグマが固まる時に晶出しました。
 マグマの材料となった堆積岩のできた時代は不明です。その時代には堆積物となるほどの痕跡が残せるほど生物がいて、マグマができても消えないほどの炭化物があったようです。年代は、マグマの年代の41億年前より古いものになります。
 生物の痕跡をもった花崗岩は、44億年前から38億年まえくらいの大陸の一部となっていました。地球深部で固まった花崗岩は、やがて陸地に顔をだして、浸食を受けて30.6億年前に堆積物になりました。その堆積物が変成作用を受けながらも現在まで残ったのです。
 ジルコンは複雑な履歴を持っていました。そのジルコンの成分から更に過去に遡るのです。今回の報告は、いろいろな紆余曲折、複雑な論理をもった報告であることがおわかりいただけたでしょうか。もしここで出された根拠が正しく、生物の存在が41億年前まで遡れるのであれば、多くの人が認めている最古の化石とされる35億年前より6億年、あるいは最古の堆積岩である38億年前より3億年古い記録となります。
 まだまだ検証やデータも必要になるのでしょうが、重要な報告です。今後の議論が気になります。

・エルニーニョ・
現在、観測史上最大のエルニーニョが発生してようです。
エルニーニョが発生すると、
日本では、暖冬と冷夏になるそうです。
北国の住人は、暖冬はありがたいものです。
除雪や雪の害が少ないので助かります。
大雪があると交通も混乱します。
予報通りなるかどうかは、不明です。
予報と現実がどこまで一致するかは、
その時が来るまでわかりません。
それが予報というものです。

・ジャックヒル・
グリーンランドの39億年前の堆積岩とともに
オーストラリアのジャックヒルの堆積岩中のジルコンも
地質学では重要な報告に何度も登場してきます。
重要な報告が何度もでてくる地域となるには、
そこにしかない特徴あるためです。
単に最古を追いかけるだけであれば、
さらなる最古が見つかると、
以前の最古は忘れられる存在となります。
最古はつぎつぎと塗り替えられるのです。
しかし、そこにしかない特徴があると
何度も学問の歴史を彩る重要な地点として現れます。
ジャックヒルもそんな地点になりつつあるようです。