2015年12月3日木曜日

2_133 41億年前の生命 2:ジルコン

 報告では、堆積岩の中にある鉱物の粒から、生命の痕跡が見つかったというのです。実はこの堆積岩は、30.6億年前で形成されたもので、最古のものではありません。少々複雑な履歴が想定されますので、整理しておきましょう。

 今回、最古の生命が報告された岩石は、堆積岩です。ここまでは、堆積岩から化石が見つかったということになり、当たり前のことになります。実はここから、問題があります。
 この堆積岩は、30.6億年前で形成されたもので、最古の岩石でも、最古の堆積岩でもありません。堆積岩の中にあった鉱物の粒から、生命の痕跡が見つかったというのです。ただしその鉱物は古いもので、41億年前の年代もっており、そこに生命の痕跡があったと報告されています。話が複雑になってきました。
 堆積岩の産地は、西オーストラリアのジャックヒルということろです。そこには、かなり古い堆積岩、とはいっても30.6億年前にできたものがあります。ジャックヒルは、地球最古の固体物質、鉱物の産地と有名で、44億年前に形成されたジルコンが見つかっています。その岩石のジルコンが今回の報告の対象でした。ただし、最古の44億年前のジルコンではなかったのですが。
 ジルコンは、火成作用で形成される鉱物です。結晶構造が丈夫なので、一旦形成されると、少々の変成作用でも変化することなく、できた時のままの情報を保存していることが知られています。この堆積岩も変成作用を受けているのですが、頑丈なジルコンには、できたときの情報(化学成分)が残っていました。
 次に火成岩でできた鉱物に、なぜ生命の痕跡が残るのかという問題です。ジルコンという鉱物は、珪酸ジルコニューム(ZrSiO4)という化合物で、火成岩でも、珪酸の多いマグマ(酸性マグマと呼びます)から形成されます。そのような酸性マグマは花崗岩を形成するので、大陸地域で形成されたと考えています。ですから最古のジルコン44億年前が、最古の大陸の形成時代を示しているという報告がされたことがありました。これは以前紹介しました。「1_5 「最古のもの」より古いもの」や「1_6 最古の鉱物のもつ意味」などです。
 さて、花崗岩には、いくつか起源があると考えられてます。マントルで形成された玄武岩質マグマが結晶分化作用でできたタイプや、地殻の玄武岩が熱や高度の変成作用で融けてできたタイプ、堆積岩が溶けてできたタイプなどがあると考えられています。堆積岩が溶けてできるタイプのものは、マグマでありながら、堆積岩との関係が出てきます。
 今回の報告も、堆積岩由来の花崗岩で形成されたジルコンが堆積物の生物の痕跡がみつかったとされているのです。少々複雑な履歴が理解していただけたでしょうか。

・宝石・
ジルコンは鉱物の一種なので
いくつかの特徴がある。
ジルコンは、屈折率が高く、
硬度もそれなりにあります。
よく輝き、無色透明なものもあります。
鉱物の中ではもっとダイヤモンドに似ています。
それにダイヤモンドより頻度が多くでています。
そのため、金額も安いため、
ダイヤモンドの代わりに
使われていることがあります。
色も多様で、人工的に熱処理で色を出すこともされるので
ジルコン自体も宝石となります。
でも、地質学では年代を測定のための素材として
重要な役割を果たしています。

・花崗岩の分類・
上記の分類で、でてきた花崗岩の分類は
ホワイトとチャペル(White and Chappell, 1979)が提唱したものです。
起源をいろいろ細分化したので古い論文ですが
花崗岩を概観するとき、利用されています。
堆積岩由来の花崗岩はSタイプと呼ばれてます。
上では説明しなかったのですが、
非造山帯にでててくるタイプ(Aタイプ)も区分されています。
Sは堆積岩の英語、sedimentaryの略号です。
ほかタイプは、I、Mタイプなどがありますが、
専門家だけの用途ですから、説明はやめておきましょう。