2015年9月10日木曜日

4_120 竜串 3:海岸の堆積物

 竜串のシリーズではじめたのですが、実はタイトルだけで竜串は今回がやっと登場となります。竜串のような海岸の堆積物は、堆積場の形成には付加体が関連するのですが、地域性が現れれやすいところでもあります。さらに環境変化も激しいので、なかなか面白い地層がたまるところでもあります。

 さて、前置きが長くなりましたが、やっと竜串の話しになります。
 竜串の海岸には、海に向かってまっすぐに地層がつきだして広がっています。アプローチも便利なので、見学しやすいところです。ただし海岸なので、波の影響を受けるので、見学は天候や干満に注意する必要があります。
 竜串の海岸では、地層の断面を見ることができます。いろいろな地層の構造を見ることができます。前回紹介したタービダイトとは、一味違う地層です。
 竜串の地層は、付加体の上にたまった地層です。下にあるはずの付加体は、漸新世後期(5000万~4000万年前)から中新世(3000万~2000万年前)のものですが、その上にたまった地層は、化石が少なく時代はあまり明らかになっていないようですが、前期中新世の化石が地層の下(基盤といいます)の方からみつかっています。竜串層はもっと新しい時代のもののはずです。
 竜串に分布する地層は、竜串層と呼ばれていますが、三崎層群のもっとも上部になります。三崎層群は非常に厚くたまった地層で、3000m以上もあると考えられています。付加体の上、大陸斜面の海岸付近にまたった地層だと考えられています。堆積物が大量にたまる場だったようです。
 このような環境は、よく形成される環境です。それは、海溝から離れて陸に近いところでは、プレート(竜串ではフィリピン海プレート)に押されて、付加体が盛り上がり、隆起する部分ができるためです。この隆起が堆積物を貯める場(堆積盆といいます)となります。ただし、場所ごとに特徴が形成されやすくなります。
 三崎層群の環境は、上に向かって堆積物が粗いものになっていくことがわかっています。堆積物がたまった堆積場として、海岸の沖で日常的な波浪の影響を受けず台風などの影響でしか受けない浜(沖浜)から、波の影響を受ける海岸近くの浜(外浜)、そして陸域の河口へと変わっていったと考えられています。
 竜串層は、もっとも陸に近い、あるいは陸域の堆積場であったと考えられます。地層は砂岩の多い互層になっています。そして、地層内や境界部(もともとの海底面)には、生物の生活していた跡(生痕化石といいます)がよくみつかります。これが、大きな特徴となっています。
 生痕化石には、パイプ状や表面にコブ状突起をもっている奇妙な形のものがたくさん見られます。これらの生痕は、オフィオモルファ(Ophiomorpha)とよばれるもので、甲殻類の巣穴の跡です。干潟から海岸の砂地(前浜)に住む生物の跡です。
 生痕化石から、竜串層は、蛇行する河川や網状河川などの環境が考えられてきました。ある地層には、楕円型あるいはアーモンド型の生痕化石も、多数見つかるところがあります。こちらは、二枚貝があわてて逃げた跡(逃避痕とよばれます)だと考えられています。これらの生痕化石の研究から、竜串層は、砂がたくさん供給されているところで、網状の河川で、蛇行する川などの場に限定されてきました。
 前に紹介したように、付加体は、多様な起源の岩石が混在させられるメカニズムがありました。また、タービダイトにも、たまる場所なや流れこむ土砂の量、それらの重なりぐあいにより、形成される地層は、多様性が生まれました。そして、付加体の上、あるいは海岸付近でも特徴的な堆積物がたまります。それらが複雑に絡み合っているとことが日本列島なのです。
 さて、竜串の不思議さは、ここだけではありません。少し場所は離れますが、まったく起源の違う岩石を、次回は紹介しましょう。

・竜串が少ない・
このシリーズは、5月に調査にいったときの話を書くため
竜串とタイトルでスタートしました。
竜串周辺の地質の話をしているのですが、
もともと、竜串だけでシリーズを
まとめるつもりではなかったのですが、
付加体やメランジュなど
ついつい興味のあることから書き始めてしまいました。
そのため、前置きが長くなってしまいました。
次回は、竜串というより足摺に近いところの話しになります。
まだ、紹介をしたことのないところなので
書こうと考えています。

・調査中・
実は、前回と、今回のエッセイの発行は、
予約を配信したものでした。
野外調査にでています。
このエッセイの発行する日に帰ってくる予定なのですが、
発行が間に合わないので、予約配信しました。
その調査の話は、近うちにしていきたいと思っています。
今回の調査は、大分から宮崎北部を中心としています。
何度かいっているのですが、
再度調査したいところ、
まだ見ていないところなど
いくつか調べたいポイントがあります。
それを順番に見ていくことになります。
予定通りに見れるかは不明ですが、
天気が心配ですがどうなったいることでしょうか。