2014年10月2日木曜日

6_123 丸山電気石 3:人名

 鉱物に人名がつけられることは、よくあります。しかし、そこには一定の条件を満たす必要があります。その条件を満たしたので、丸山電気石という名称がつけられました。それは、どのような条件でしょうか。そして、丸山さんとは、どのような人なのでしょうか。

 丸山電気石という新鉱物は、丸山茂徳さん(東京工業大学地球生命研究所)の名前であることは前に紹介しました。鉱物名に人の名前がつくには、それなりの条件があります。
 人名を鉱物名に付ける場合、発見者の名前を使うことはできません。ですから、発見者と縁(ゆかり)のある人、あるいは恩師の名前をつけることになります。ですから、丸山さんは、この鉱物の発見に何からかのかかわりがあったとこになります。
 このエッセイでは丸山さんを何度かとりあげたことがあると思いますが、いくつもの業績があるのですが、世界で最初にプルームテクトニクスを提唱されたり、日本を中心とした沈み込み帯の解明をしてきました。また、大きな研究者グループを率いて、いくつもの研究プロジェクトを実施させてきました。日本を代表する地質学者でもあります。
 丸山さんは、日本の地質学では、非常にスケールの大きな研究プロジェクである「全地球詩解読」を1995年からスタートさせました。そのプロジェクトは、日本人研究者を中心として、地球史において重要な地質学的地域を、日本人が得意とする詳細な地質調査と年代測定、化学分析などを武器に、世界各地の研究者と協力しながら調査研究するプロジェクトでした。
 その中で、大量の試料を採取することも重要な目的でした。まだ完成していない技術、手法、アイディアができたとき、その研究対象とできる試料を、体系的に大量に入手、整備、保管することは重要だと考えたからでした。その施設として、いくつかの大学や博物館が任にあたりました。
 私がいた博物館は、全地球史解読のプロジェクトと密接な関係があり、資料収集、調査研究、試料保管などに関与していました。そして私もそのメンバーでもありました。
 研究プロジェクトのひとつとして、中央アジアのカザフスタンのコクチェタフ超高圧変成帯も調査対象地となっていました。その研究プロジェクトのリーダーを丸山さんがなされていました。日本研究者からなる調査隊は、1997から1999年にかけて、カザフスタン北部の草原地帯にあるコクチェタフ超高圧変成帯を調べました。その時、約9000個の岩石を採取してきました。
 試料のうち、古生代初期(約5億3000万年前)の岩石を、清水さんや小笠原さんら研究されていて、2005年にこれまでに知られていない鉱物を発見されました。ですから、全地球解読プロジェクトの流れを汲み、実物試料の重要性を把握していた丸山さんの先見の明にちなんで、今回の新鉱物が命名されました。

・お詫び・
毎週木曜日に発行するこのエッセイですが、
今回は校務が多忙につき、
予定通りに発行できませんでした。
お詫び申し上げます。
10年近くおこなってきて、
はじめてのことではないと思います。
発行のことも忘れるほどの多忙だったということです。

・先輩・
丸山さんには、いろいろお世話になりました。
前に所属していた博物館への転職は、
丸山さんのプロジェクトにからんでいました。
私の担当するはずの装置がどにゅうされる予定でした。
それを見越しての博物館への転職でした。
まあ、その後はいろいろありましたが・・・。
その後この大学に転職するにあたっても
丸山さんにお世話になりました。
直接の師弟関係はないのですが、
面倒見のいい、先輩でもあります。