2013年8月1日木曜日

5_114 炭素14年代 3:1950年

 過去の年代測定の値は、「○○年前」と表記されます。「前」とは「現在から」を意味しています。ところが、炭素14による年代は、現在からではなく、「1950年から」という基準を持っています。その基準は本来なら1945年とすべきでした。1945年がもっている意味は、日本にも関わる重要なものでした。

 大気中の炭素14は、地球外からの宇宙線によって定常的に形成されています。その結果、大気中の炭素14は、ほぼ一定の比率で含まれていることがわかっていてます。できた炭素14は、すぐに二酸化炭素になります。
 植物は、大気中の二酸化炭素を吸収して光合成をしています。生きている限り代謝をして、細胞を維持しますので、大気中の二酸化炭素と同じ値を保ち続けています。しかし、植物が死ぬと、代謝も止まりますので、大気中の炭素14の値からずれていきます。放射性核種の崩壊がはじまります。つまり、炭素14の時計がスタートします。
 さて、植物の炭素14を用いて年代測定をしたデータは、「今から○○年前(BPと略されます)」と表現されます。例えば、1980年に測定された値と、2010年に測定された値を比較するときは、1980年の年代値は、30年プラスして考えなければなりません。すべての測定値は、毎年1年ずつプラスしなければなりません。そんな作業をするのは大変ですし、中には測定時期の定かでないものも混じっているかもしれません。そうなると、その年代値は用いることはできません。
 そんな煩わしさや問題を解消するために、すべての年代値を1950年を基点として表現することに決められています。つまり「○○年前」とは、「今から○○年前」ではなく、「1950年から○○年前」ということになっています。
 なぜ1950年という年代にされたのでしょうか。切りのいい数字だからというわけではありません。それはBPという略号にヒントがあります。
 BPは、通常「Before Present」と頭文字をとったものとされています。「今から○○年前」という意味になります。ただし、上で述べたように、「今から」とすると、問題があり、適切なものとは思えません。本来なら「Before 1950」が正式なものとすべきでしょう。でも、年代値のあとに別の数字が並ぶのは、混乱を生じます。
 もう一つ、BPの解釈として「Before Physics」の頭文字だとする考えもあります。「物理学前」という意味です。その意図するところは、核実験などをして、炭素のなどの同位体比が変わる前というものです。
 1945年7月16日に、アメリカで最初の核実験はおこなわれています。この直後、1945年8月6日には広島に、1945年8月9日には長崎に原爆が落とされていました。米ソの冷戦による核開発競争がスタートして、1950年ころから核実験が多発します。その結果、炭素14の値も自然のものから変動していきます。
 人類が核兵器で改変した炭素14の値ではなく、自然の状態の値という意味で、「Before Physics」なのです。本来なら1945年を基準年とすべきでしょう。アメリカの研究者たちが、反対するかも知りませんが。
 年代測定をする試料は、そもそも古いものなので、人類が改変した値の影響を受けてはいません。愚かな人類の行為の記憶として「Before Physics」という名称を使いましょう。できれば、基準年が1950年とされているが、本当は1945年にすべきということも覚えておいてください。被爆国の国民として。

・夏・
数日天気が悪くて、湿度も高かったのですが、
久しぶりに晴れました。
すると湿度が高いまま気温が上がり、
少々深いな状態となっています。
まあ、それでも本州の湿度ではなく、
北海道の蒸し暑さですから
耐えられるものです。
ただし、北海道人はこれでも蒸し暑いといって
ぐでぇーとするのですが。

・ドタバタ・
今週は大学の定期試験の真っ最中です。
夏休みは暑いから休みになるはずです。
私が大学生の頃は、前期は夏休みを挟んで
9月にも授業があり、その後定期試験がありました。
でも、今では夏やすみ前に
前期に定期試験まで終わらせるということになっているようで、
一番暑い時期に定期試験をやっています。
学生は暑いのに試験は大変です。
まあ、この1週間が終われば、彼らは夏休みです。
教員はこれからもしばらくは
ドタバタが続くのですが。