2011年6月9日木曜日

1_102 黒色頁岩:OAE 1

 海洋無酸素事件はOAEと呼ばれています。海水中に溶存している酸素が著しく少なくなる事件です。無酸素の状態が長期にわたると、大絶滅や環境変化、それも地球規模の異変となります。その全貌は、必ずしも分かっているわけではないのですが、OAEのあらましをシリーズで紹介していきましょう。

 地層の中に黒い頁岩が見つかることがあります。黒い色の由来は、硫化物の場合もありますが、有機物のこともあります。有機物に富む黒色頁岩が今回の素材です。
 海で生物が死ぬと海底に沈みます。海底には、その死骸を処理する(食べる)生物がいて、多くの有機物は分解されてしまいます。また、生物が食べ残した有機物も、酸化され二酸化炭素や水などの分子に分解されてしまいます。ですから、ほとんどの有機物は、消費され、堆積物にはなりません。つまり、有機物は、再び生態系の中へのもどっていくことになります。炭素でみると地球規模の循環が成り立っていることになります。
 有機物の多い黒色頁岩が貯まるのは、炭素の循環を断ち切るような特別な環境が出現したことになります。そのような特別な環境が、もし広域的、あるいは全地球的にあったとしたら、それは地球史上の大きな異変となります。黒色頁岩の由来を調べれば、環境異変の記録が読み解けるかもしれません。
 地球環境を左右する重要な条件として、平均気温があります。現在温暖化が危惧されていますが、地球史においては、現在問題にされている以上の温暖化が何度も起こっています。特に急激に、そして短期間におこった温暖化の時期に、有機物に富む黒色頁岩ができることが知られています。
 急激な温暖化は、なぜ、黒色頁岩を形成する原因になるのでしょうか。そもそも有機物が分解されないような環境とは、いくつかの要因が考えられています。
 温暖化は生物にとって生活しやすい条件となります。暖かいと海での蒸発量が増え、降雨が増えます。陸地での雨量も増え、陸上生物が生育しやすくなります。繁茂、繁栄した陸地では、河川によって、有機物が大量に海域に流入します。その有機物を餌にして海洋でもプランクトンが大量発生します。このような結果として、海底には分解しきれないぐらいの有機物がたまるというメカニズムが想定できます。
 しかし、一番大きな要因は、海水循環の停止だと考えられています。
 極地に氷床がある時期は、定常的に海水が冷やされ、冷たい海水が極地から深海に沈み込み、それが海洋全域をめぐるような地球規模の海水の大循環の原動力となっています。深海をめぐる海水は、冷たく酸素を沢山含んだ塩分の多いものとなります。現在のその状態にあります。
 温暖化は、極地ほど激しく進行します。温暖化が極地で起こると、氷床が一気に溶けてなくなってしまいます。それまであった、極地からの冷たい水の流入がストップし、深海底への循環も止まってしまいます。急激な温暖化が起こると、海水のベルトコンベアが止まることになります。深海での海水の循環が停止すると、酸素を含んだ海水が供給されなくなり、深海底は、貧酸素あるいは無酸素の海水が長期にわたって滞留してしまいます。
 海面では酸素があるので、通常の生態系が維持されていますが、海底での有機分の分解の生態系が破壊されていきます。通常の深海底の生物は絶滅し、有機分の酸素による分解もストップします。無酸素の海水が有機物の多い黒色頁岩を形成する主要なメカニズムではないかと考えられています。
 つまり、海洋の無酸素の事件(Oceanic Anoxic Events、OAEの略称されています)が、黒色頁岩の形成の原因であったと考えられています。では、地球史で、そのようなOAEがどれほどあったのでしょうか。それは次回としましょう。

・OAEシリーズ・
OAEの証拠は、世界各地で見つかっています。
1976年に初めてOAEが報告されました。
ある時代の有機物をたくさん含む黒色頁岩が、
浅海や深海などの多様な環境で形成された地層でみつかりました。
OAEが、大きな海洋や全地球規模で同時期に
起こっているという証拠なので注目を集めました。
OAEの証拠は、日本各地で見つかっています。
ただ、どの時代でもあるわけでなく、
いくつかの時代にだけ見られ異変です。
また、OAEが起こったときには、
絶滅も起こっていることが多いようです。
OAEは地球における重要な異変の記録といえます。
OAEは、まだまだ研究途中でありますが、
その成果をまとめて示すのが、
今回のOAEのシリーズです。

・風物詩・
北海度では、エゾハルゼミが騒がしく鳴いています。
この鳴き声が、初夏の風物詩となっています。
いよいよ北海道の初夏の行事がはじまります。
まずは、YOSAKOIが今週からスタートします。
私は、教育実習の指導で出張が2件あり、
週末は次男の運動会になっています。
まあ、これらも季節の風物となりました。
実習指導でいろいろな地域にでかけられるのですが、
いって帰ってくるだけの余裕しかありません。
食事に道の駅などに寄ることが
唯一の楽しみでしょうか。