2011年3月3日木曜日

4_100 トゥファ2:西予2月

 トゥファのシリーズです。西予は月に一回の連載のつもりでしたが、あと一回予定があり、合計3回のエッセイが続きそうです。継続中の「ケプラー」のシリーズが中断されていますが、西予の名残としてご容赦ください。

 トゥファとは、冷たい湧き水から地表で炭酸カルシウムが沈殿したものです。それが、西予市城川町中津川の支流で見つかります。広島大学の狩野彰宏さん(現在九州大学)らが、1年以上にわたって、水質や水量などを調べました。その結果、いろいろ面白いことがわかってきました。
 トゥファのある沢では、年間72.6トンの炭酸カルシウムが流れでています。その内、5.8トンがトゥファとして沈殿していることがわかりました。また、沢水は、地表に出てすぐ二酸化炭素の溶解度(正確には二酸化炭素分圧といいます)を急激に減少し、下流ほどさらに下がっていることもわかりました。さらに、堆積するトゥファの量は、夏に多く、冬に少ないということがわかりました。
 このようなデータは何を意味するのでしょうか。
 沢水で二酸化炭素分圧が減少すると、炭酸カルシウムの溶解度は過飽和(飽和以上に溶けている)状態になります。すると、炭酸カルシウムが沈殿して、トゥファができるわけです。沢の湧き出し口で急激に分圧が下がるので、上流にたくさんのトゥファができます。そして、下流になっていくほど減ります。つまり、沢の奥の限られたところにトゥファができることになわるけです。これでトゥファの不思議な産状も理解できます。
 また、堆積するトゥファの量の季節変化も、水温と二酸化炭素の関係で理解できます。
 化学的な性質で、二酸化炭素の水の溶解度は、温度に逆比例します。正確には比例ではなく、曲線です。0℃から30℃あたり(日本の気温のあたり)では、急激に溶解度が減少します。地下の温度は、気温(大気温度)をあまり受けません。ですから、地下水が地表にでたとき、沢水となって、一気に大気温にさらされます。その時、暑い時のほうが溶解度が小さいのでより沈殿するわけです。
 実際には、地下の温度変化、地下での溶解度の変化なども関係していると考えられています。しかし、中津川のトゥファの面白さは、地域限定の話題ではなく、古気候解析まで話が進んでいくことです。それは次回となります。

・残された時間・
西予市の滞在もあと一月となりました。
2月中旬から暖かくなり、
動きやすくなりました。
寒いと、動くのがいやでついつい支所にこもっていました。
それに行事もいろいろ行われるようになりました。
先月も高知県津野町で大わらじを
つくる地域の祭りがありました。
今週末は、梼原で津野山神楽があります。
それに来週にある地域の以来を受けて
石灰岩地域を見に行く予定をしています。
いろいろ忙しくなりそうですが、
残された時間を有効に使いましょう。

・温暖化・
二酸化炭素の水の溶解度が
温度に逆比例するという特性は、
地球温暖化において、重要な条件となります。
つまり温暖化すれば、海洋から二酸化炭素が放出されて
ますます温暖化が促進されるということになります。
まあ、ことはそう単純ではなく、
沈殿する炭酸カルシウム、
海洋の膨張による堆積の増加
などなど・・
複雑な要因があるのですが。
そういえば、最近温暖化の話題が少なくなりました。
また、温暖化を否定しているようなデータや論文も
当たり前に見かけるようになりました。
さてさて、どうなっていくのでしょうか。
このままトーンダウンしていくのでしょうか。