2010年12月16日木曜日

6_84 粒がざくざく:イトカワ3

 前回、イトカワ由来の根拠を説明するといっていたのですが、最新ニュースがありました。なんと、コンテナを逆さにしてたたいたら、大きな砂粒がたくさん出てきたそうです。そのニュースを紹介しましょう。

 「はやぶさ」がイトカワの試料を回収してきたコンテナは、地球からの汚染を恐れて、クリーンルームやその中に特別に用意されたクリーンチェンバーの中で、慎重に処理されてきました。
 「はやぶさ」は、イトカワに2回着陸しています。それぞれの着陸では、別々のコンテナで、試料を回収していました。最初に開けられたのは、イトカワに長く(約30分)接地していたほうのコンテナでした。
 2つのコンテナのうち一個分の検査がやっと終わり、小さいですが多数の試料が見つかりました。そして、それらがイトカワからのものであるという結果が発表されました。それを受けて、このエッセイのシリーズをはじめました。
 ところが、新たなニュースが流れてきました。なんと、大きな砂粒がたくさん一個目のコンテナの中から出てきたというのです。
 最初のコンテナの中を見たところ、何も見えなかったので、慎重な取り出し作業が進められていました。ところが、コンテナは非常に複雑な構造をしているため、奥まで見ることができません。複雑な構造なので、特注の専用ヘラを使って、取り出しにも苦労をしました。その様子は、前回までのエッセイで紹介しました。
 11月29日、2個目のコンテナの検査に移る前に、念のためにコンテナをひっくり返して側面をたたいところ、なんと、数百個の粒子が出てきたとのことです。もともとこのような方法でのチェックを最初にするつもりだったそうですが、目でみたとこと、何も確認できなかったので、その操作は省いたのです。
 ひょうたんから駒、まさに逆転の発想でしょうか。
 粒子は、100μmから10μmほどの大きさがあります。それまで見つかっていたものより大きなものも、かなりあったようです。さらに、これまではすべて小さな鉱物片でしたが、今回のは、鉱物がいくつかくっついた複雑なもの、つまり岩石も見つかったそうです。数百個のうち20個ほどを電子顕微鏡で調べたところ、半分ほどがこのような岩石質だったそうです。
 その岩石については、これから由来を調べるそうです。イトカワのものであれば、ますます期待が高まります。
 前回、砂粒がイトカワ由来である根拠を説明するといっていたのですが、最新ニュースがあったので、それを優先させました。次回、その話を紹介します。

・経験の蓄積・
今回の逆さにしてたたくという
「きわめて原始的」方法は、
人の先入観が生み出した
いい例かも知れません。
外からX線で確かめても砂はなく、
目で確かめても見えませんでした。
だから、あったのしても目に見えないような
非常に小さいものだと考えたのでしょう。
予定していた手順を省いて
より慎重な方法へと急いだのでしょう。
そんな先入観が、回収作業をより難しく
困難な道へと導きました。
しかし、そこで生まれた技術は
今後必要になるはずです。
ひっくり返したとき
粒子が壁にくっついたかもしれません。
2個目のカプセルの時の手順は
今回の経験で、変わってくるでしょう。
いろいろな失敗も含めて経験です。
そんな経験の蓄積が、
知的資産となってくのかもしれませんね。

・想像・
ひっくり返した担当者は、
さぞかし驚いたことでしょう。
そして、大いに喜んだでしょう。
その喜びは、試料が見つかったことより、
容器をさかさまにしてたたくという
思いつきの方が大きかったのではないでしょうか。
思い付きを実践してみた自分の行為こそ
喜びだったのでしょう。
そして、多分その日は、関係者一同
祝杯を挙げたことでしょう。
きっと、大笑いしながらの
楽しい宴席となったことでしょう。
そんな想像をしてしまいました。