2010年5月13日木曜日

2_84 ダイノバード:恐竜から鳥へ3

(2010.05.13)
 古生物学は、まず化石の発見から研究がスタートします。たくさんの化石がみつかれば、いろいろなことが分かってきます。ところがダイノバードという生物は、化石も見つかっていないのに提唱されたことがありました。それは、ミッシング・リンクですが、架空の化石でした。

 鳥類とは、そもそもどのような特徴をもっている動物をいうのでしょうか。私たちがよく知っている鳥(分類学上は鳥綱になります)の特徴は、羽毛に覆われ、羽があり、卵を産み、恒温性で、歯がなくくちばしをもち、声を出すというところでしょうか。これらは、分類学上も重要な特徴です。
 でも、このような特徴は鳥類だけのものでしょうか。前回までで紹介したように、羽毛をもち、羽を持つ恐竜の化石は見つかっています。もちろん恐竜は卵を産むことは化石からもわかっています。また、くちばしは、恐竜の獣脚類(オルニトミムス、オヴィラプトルなど)でも、鳥盤類(カモノハシ竜、角竜など)の多くが、持っていたことが分かっています。
 ただ、恒温性については、まだ決着をみていません。なぜなら、恒温性は化石から判別できないからです。しかし、根拠となりそうな重要な証拠があります。アメリカの古生物学者オストロム(John H. Ostrom)が、1964年にディノニクス(Deinonychus)という恐竜の化石を発見しました。そのディノニクスが、重要な証拠になっています。
 ディノニクスは、体長が2mから4mほどで、2足歩行をする恐竜でした。その特徴は、大きく鋭い鉤爪、そして大きな脳を持っていることでした。前肢もよく動くことが化石からわかり、鋭い鉤爪は狩をする肉食獣の特徴です。脳が大きいことから知能が高かったと考えられます。さらに、ディノニクスの化石は、いくつもの個体が集まってみつかることから、群れで暮らし、狩も共同でしていたと考えられました。
 このような活発な行動をする動物は、恒温性がなければならないとして、オストロムやその弟子のバッカー(Robert T. Bakker)は、恐竜の恒温説を唱えました。
 まだ、恐竜の恒温性を持っていたかどうかは不明ですが、科学者によっては恒温説を唱える人もいるわけです。
 以上見てきたように、個々の特徴を比べていくと、恐竜と鳥はよく似ていることがわかります。
 鳥類が恐竜の類似性は、古くから知れていました。ダーウィンの進化論に賛同し急進的に広めようとしたことで有名なハクスリーは、恐竜から鳥が進化したとすでに主張していました。
 しかし、当時知られていた恐竜の化石には鎖骨がなく、鳥類にはあることが問題でした。解剖学的には、恐竜から鳥類が進化したと考えるには、無理があるということになります。その問題を解決するために、恐竜と鳥類の共通の祖先(古生代末に誕生した槽歯類)から進化したという説(ダイノバード、dinobird)、あるいは鳥類のほうが先に誕生して恐竜があとから進化してきたという説(BCF仮説、Birds came first hypothesis)などが提唱されました。
 しかし、これらのダイノバード説は現在では否定されています。その証拠を見つけたのも、やはりオストロムでした。それは次回にしましょう。

・調査・
こちらに来てやっとまとまった調査に
出ることになりました。
高知県の西部を調査しています。
3泊4日で見て回っています。
北海道からすると、近いので、車ですぐにいけます。
天気を見ながら、晴れが続きそうなときに
宿を予約してさっといけます。
これが近場のメリットです。

・母の日・
皆さんは先週末の母の日になにかしましたか。
私は、電話をしただけでした。
電話をしたら、法事で、親戚にいっているときで、
何人もの人に電話で話をすることになりました。
知っている人ばかりなのですが、
懐かしい人の声も聞けました。
弟も一緒に法事にいっていたのですが、
母とその姉妹の親戚とたくさん話しました。
これも親孝行なのでしょうかね。