2009年5月14日木曜日

2_75 酸素の役割:酸素の物語1(2009.05.14)

 酸素は、大気中の主要成分のひとつです。酸素は、地表のどこにでも、無尽蔵にあるように考えて、気にも留められないものです。ところが、その酸素の恩恵なしには、人類はもちろん、多くの生物たちも、一日たりと生きていけません。そのような酸素にまつわる物語を紹介しましょう。

 地球には、酸素があります。それも大気中に分子としてたくさん存在します。酸素が大気中にあったおかげで、人類は火を使うことができました。そもそも火とは、高温になった元素(たとえば炭素)が酸素と激しく結合する現象で、酸化という化学反応の一種です。大気中に酸素がなければ、火はおきないし、文明も起こらなかったでしょう。文明は、酸素のおかげといっても過言ではないでしょう。
 大気中において酸素は、分子の形で存在します。酸素分子は、酸素原子が2つ結合したものです。大気中に酸素は、体積の比率で20.949%、重量比で23.143%となっています。それ以外の成分は窒素(N2)です。その他にも微量成分として、アルゴン(Ar)が0.93%(体積比)、そして二酸化炭素が0.035%(350ppmとも表せます)含まれています。
 大気は、自転とともに地球と一緒に回転しています。昼間には、太陽の光を受けます。太陽光の中には、紫外線も大量に含まれています。酸素分子に紫外線を当てると、酸素分子が分解して酸素原子になり、新たに酸素原子が3つ結合した、オゾンの分子に変わります。ただしオゾンは不安定な分子なので、やがては酸素分子が変わってしまいます。でも、常に太陽の光が降り注ぎ、十分な酸素があれば、一定量のオゾンがいつも大気中で形成されることになります。オゾンが、ある程度でき、層をなすと、波長の短い紫外線ほど通さなくなります。これがオゾン層と呼ばれるものです。
 紫外線(Ultra Violet、約してUV)は、光(可視光)でも波長が一番短いものです。紫外線も波長が短いほどエネルギーが強くなります。もし、オゾン層や大気がなく、紫外線が直接地表に降り注げば、DNAを分断したり、ケロイドになってしまうほど皮膚を焼いてしまいます。大気やオゾン層のおかげで、生物にとって有害な波長の短い紫外線は、ほとんどさえぎられ、長いものもある程度さえぎられています。ですから、生物は、地上で太陽の光を浴びても、焼け死ぬことなく、日焼けをする程度ですんでいるのです。
 このオゾン層が安定に大気中に存在し、紫外線をかなりさえぎるには、酸素濃度が15~20%程度ないとなりません。地球の大気は、幸いなことに、その条件を満たしていたのです。
 酸素を主成分とする大気は、実は太陽系では地球だけの特徴となっています。
 両隣の惑星である金星と火星は、大気の量はまったく違っています。金星は、地球の約900倍(表面の大気圧)、火星は地球の0.007倍しかありません。ところが、金星と火星の大気の成分を比率で見ると、主成分は二酸化炭素(いずれも95%以上)であり、ついで窒素(3%前後)となっています。いずれの惑星にも、酸素はほとんどありません。これは、何を意味するのでしょうか。
 火星は、惑星全体としてみると、初期にその活動を停めています。また、金星は地球のようにマグマ活動が続いている可能性がありますが、大気はもともとあったものとマグマに由来するものだけで成りたっていると考えられます。その上で、両者の大気は、その分量が何桁も違っているのに、比率が似ているということは、原始の大気がこのような成分であったことを意味していそうです。
 ですから、両惑星にはさまれた、地球の原始大気も、このような成分でスタートをきったと考えられます。しかし、地球だけが、何らかの原因であるときから、酸素も持つ特異な大気へと変貌したのです。このシリーズでは、その変遷と由来を、最新情報を交えながら、探っていこうと思います。

・酸素のありがたさ・
私たち人類は、大気中においては、
微量成分である二酸化炭素には、
温暖化問題として非常に注目しています。
しかし、酸素に関しては無頓着です。
酸素は、生物が日々大量に消費しています。
どこにいっても、酸素は無料で、
いくらでも使える無尽蔵の、
気にも留める必要もないような成分です。
もちろん人類も他の生物に比べ物にならないほどの勢いで
消費しています。
その酸素は、本当に無尽蔵なのでしょうか。
なぜ、なくならないのでしょうか。
その仕組みは、どのようなものなのでしょうか。
その歴史は、どこまでさかのぼれるのでしょうか。
それが今回の「酸素の物語」シリーズのテーマです。

・北国の春・
ゴールデンウィークも終わり、
大学も通常の授業が戻ってきました。
北海道も桜が終わり、
春が到来しました。
ストーブともやっと離れることができます。
これから、北海道は最高の季節を迎えます。
特に快晴の日に、緑の中に出かけると
北海道に住んでいてよかったと思えます。
そんな北国の春を、今やっと満喫しています。