2008年12月18日木曜日

2_73 昔の生物のDNA:マンモス4

 Natureという科学雑誌にマンモスのほぼ全遺伝子配列が解読されたという論文が発表されました。それがニュースとして、いくつかのマスコミに取り上げられました。そのニュースの意味を探っていきましょう。

 今年になってマンモスのDNAが解読されました。解読には、シベリアから発見された氷漬けのマンモス2体から得られた毛を用いられました。これが、マンモスでは最初のほぼ全遺伝子配列、つまり大部分の全DNAの解読でした。今まで、マンモスの氷漬けは、いっぱい見つかっているのに、いまごろ解読されたのかと思われる方もいるかも知れません。しかし、実は古い時代の生物のDNAの解読は、なかなか難しいのです。その理由は、DNAの保存と技術的問題、そして汚染問題があるためです。
 DNAの保存の問題とは、DNAは長期保存に適さないということです。DNAは細胞の中にありますから、死んだ細胞ではDNAは通常破損される(酸化してくずれる)か、他の生物に食べられてしまいます。DNAが保存される可能性は、時間がたてばたつほど、古くなればなるほど、少なくなります。まして、全DNAの保存されることは、非常に難しくなります。古い時代のものは、特殊な条件でない限り、保存はされません。特殊な条件とは、外気と遮断された状態で、長期保存可能なものです。樹脂詰め(コハクの中に封じ込められたもの)やタール漬け、氷漬けなどです。このような条件にあったとしても、長期になるとDNAは分断されて、情報は消えていきます。ですから、何1000万年前、何億年前の生物の全てのDNAの解読は不可能となります。
 技術的問題とは、DNAの情報は膨大で、その解読には時間も機材、そして費用がかかります。ヒトのDNAも大変でしたが、おおまかな配列は2001年前半になんとか解読されました。そのスピードは日進月歩で進み、予想以上に早く読み終わることができました。それは、超並列合成DNA配列解読という技術の進歩があったからです。このようにヒトに限らず、遺伝子(ゲノム)情報を体系的に取り扱う研究分野を、ゲノミックスと呼ばれます。
 ヒトの全DNAを解読するのに、一人のヒトのDNAを世界中の研究者が協力してやっと読み取ったのです。ところが、技術にさらに進み、個人のゲノムが読める時代になりました。アジア人とアフリカ人のある個人のDNAが解読されたという報告が、Natureの11月6日号の個人ゲノム特集で報告されました。つまり、いまや個人ゲノミックス(Personal Genomics)の時代に入りつつあります。短時間にヒトのような長い全DNAを解読できるようになったのです。その技術が、マンモスなどの過去の生物に導入されるようになってきたのです。
 もう一つの汚染の問題は、DNAが混入するという問題です。死んだ生物の体(DNAを含めて)は、土壌生物や微生物が餌として利用します。その結果、地上は死体であふれることなく、生物は分解され地表はきれいになっていくという効用があります。しかし、過去の生物では、たとえDNAが残っていたとしても、現生生物の汚染がどうしても起こることになります。
 今回、そのような問題をすべてクリアして、2体のマンモスのDNAが解読されました。その内容は、次回としましょう。

・コハク・
コハクは宝石ではないのですが、
飾り石として、宝石に準じる価値があります。
透明感のある暖かい色合いは、
それなりの美しさがあります。
虫入りのコハクは、あまり気持ちいいのいいものではありませんから、
価値がありませんでした。
コハクの中の虫やDNAが有名になったのは、
スチルバーク監督の映画「ジュラシックパーク」によってでした。
その後、なんと虫入りコハクの価値が出てきたのです。
むしろ何も入っていない透明のコハクより
高いものすらありました。
装飾品は、需要と供給によってその価値が決まります。
普通の製品のように、原価と利益から決まるのではなく、
付加価値が価格を決めていくのです。

・慌しい年末・
いよいよ大学の今年の授業も終わり冬休みとなります。
実際には、来週も講義がある週なのですが、
振り替え、補講の時間に割り当てられていて、
私の担当する講義は、今日で終わりとなります。
ですから、一息つける気分です。
ただし、来年7日から講義が始まるのですが、
その1講目に私の講義があります。
印刷物をたくさん使う講義なので、
今年中に印刷原稿を用意して頼んでおかなければなりません。
それに今週末から母がきます。
その相手で大学には25日まででられません。
ということで、年末まで忙しい日々が続きそうです。