2008年1月24日木曜日

2_62 オスとメス3:有性生殖のメリット

(2008.01.24)
 「有性生殖のパラドックス」は、どのように解消されるのでしょうか。今回は、このパラドックスについて見ていきます。

 生物が増えていく方法として、2種類あることを紹介してきました。1つの個体が2つに分かれる無性生殖と、オスとメスが交配する有性生殖です。
 生物が増えるという点で見ると、無性生殖の方が効率がいいのに、有性生殖をする生物が多数います。このような不利な点があるのに、生物は進化の過程で、そのような戦略を獲得してきました。なぜ、このような戦略が選ばれたのでしょうか。これを「有性生殖のパラドックス」と呼んでいます。
 このパラドックを説明するのために、前回2つの仮説を紹介しましたが、どうもすっきした説ではありませんでした。少なくとも私は、納得できないものでした。
 今回紹介する仮説は、環境への適応あるいは進化のスピードが、有性生殖の方が有利だというものです。
 有性生殖のプロセスでは、オスとメスから遺伝子が半分になった生殖細胞がつくられ、それらが合体して子供が生まれます。この時、オスとメスそれぞれがもっている遺伝子が、交じり合います。必然的に、両親の遺伝子を半分ずつ受け継いだ、しかし、まったく別の個体が誕生します。この時、遺伝子の多様性が生まれることになります。
 確率的には、オスとメスから減数分裂で半分の遺伝子になる時、それぞれ2通り生殖細胞をつくることになります。その組み合わせは、4通りとなり、無性生殖の1通りより、4倍もの多様性が生まれることになります。
 遺伝子の優勢や劣勢などの条件を考えると、もっと多様性が生まれることになります。多様性をもった子供が生まれることが必然的に起こる仕組みが、有性生殖に組み込まれています。多様性を起こる仕組みをもっていれば、環境変化が起こっても、適応しやすくなります。
 一方、無性生殖では、基本的には同じ遺伝子をもった個体が誕生します。多様性が生じるのは、突然変異によってということになります。いつ、どこで、その程度の突然変異が起こるかは、予測不能です。無性生殖で環境変化に適応するには、個体数と増殖率で可能性を挙げるしかありません。緊急を要する対応のに、偶然に頼るのは、非常に効率が悪いことになります。適応する、あるいは進化するという点でみると、無性生殖は、効率が悪い戦略といえます。
 以上のようなことを考えると、有性生殖の環境への適応能力は、生殖と成長に時間がかかるというハンディを補っても余りあるメリットといえます。適応や進化という視点で見ると、有性生殖こそ有利な戦略だったのです。このような見方をすれば、「有性生殖のパラドックス」はパラドクスではなくなくなります。有性生殖が有利か不利という判定は固定しているのはなく、自然はその都度、選択するという方法で答えを出しているようです。その判断を人間が見極めようとしても、非常に難しいものなるようです。
 さて以上の説明で、納得できたでしょうか。私は、前回紹介した説よりは、納得できました。次に、いつ、このような有性生殖が始まったのでしょうか。それは、化石から探ることになりますが、これがなかなか難しいものなのです。それは、次回としましょう。

・センター試験・
センター試験が終わりました。
我が大学でも、教員が全員体制で臨むことになります。
私は、日曜日担当で試験監督をしました。
厳密に決められた手順で進行し、
一言一句指示通り読み上げていかなくてはなりません。
受験生は、ほんの些細なことも、気にかかりことはずです。
ですから、監督も慎重に、厳密に進めなければなりません。
ついついこれが学問するために、本当に必要なことなのか、
これが学問をする姿かなと思ってしまいます。
全国のすべての学生に平等にやるには、
このような方法しかないのでしょうかね。

・春に向かって・
北海道は、ここ2週間ほど例年以上に寒い日々が続きました。
雪も結構降りました。
これからも、まだまだ寒い日が続きますが、
12月下旬の冬至以降、確実に日は長くなってきています。
北海道は、東に位置していますので
もともと早く夜が空けるのですが、
今では、私が歩いて大学向かう頃に朝日が出始めます。
12月下旬は、大学につくころにやっと日が昇りはじめるのでした。
寒さはこれからですが、天体の動きは、
すでに春に向かって進んでいるのですね。