2007年4月19日木曜日

4_75 銭石:沖縄3

 沖縄の旅の紹介も今回が最後です。最後は、沖縄の砂の中からみつけた不思議な砂粒を紹介しましょう。

 沖縄本島北部、本部半島よりさらに北の西海岸沿いに、塩屋湾があります。大宜味村にある塩屋湾は、入り組んだ形をしていますが、さらに地形を複雑にしているのは、湾の入り口に、宮城島があるためです。
 かつて、西海岸を走る県道58号線は、この湾の海岸線を縫うように走っていました。しかし、現在では、宮城島に2つの橋をかけて、塩屋湾をバイパスしています。宮城島から南側にかかる短い橋は宮城橋、北側かかる塩屋大橋は全長307mもあります。
 この塩屋大橋の宮城島のたもとに、小さいな海岸があります。少しの砂浜があり、岩も顔を出しています。この岩は、黒っぽい色で薄くはげやすいもので、黒色片岩という変成岩からできています。
 私がここを訪れた目的は黒色片岩ではありません。砂でした。砂を採取することもさることながら、砂の中に含まれている不思議な「銭石(ぜにいし)」を見つけることでした。
 銭石とは、直径数mm程度の小さいコイン状のものです。これは、有孔虫の仲間のマルギノポラ(Marginopora)というものの遺骸です。
 有孔虫とは、アメーバーなどの原生動物の一種で、単細胞動物です。単細胞生物ですから、それほど大きなものはなく、小さいものがほとんどです。しかし、銭石のように数mmを越えるものや、時には、パレオジン(古第三紀)の貨幣石と呼ばれる有孔虫には、15cmにものあるものがあります。
 海岸の砂の中にみられる有孔虫は、目で見える大きいものがあるので目をひきます。その中には、おみやげ物で有名な、星砂(バキュロジプシナ)や太陽の砂(カルカリナ)もありますが、銭石と同じ有孔虫の仲間です。
 有孔虫は殻をかぶっており、海を漂って生活するものと、海底で生活するものがあります。銭石などは、海底で生活しています。海底といっても、サンゴや海草などにくっついて生活するものも含まれています。銭石は、殻にあいた小さな穴から透明な偽足を出し、リュウキュウスガモなどの海藻にくっついて移動しながら、えさをとって暮らしています。ですから銭石の生活に適した海草が多い海岸には、銭石が打ち上げられています。宮城島の塩屋大橋のたもともそんなところなのです。
 銭石は、少ししか見つかりませんが、丹念に探せば、変わった形をしているので、子供でも見つけることができます。

・貨幣石・
上のエッセイで15cmもの大きさの貨幣石あるといいました。
貨幣石とは、銭のような形をしたものですが、
非常に大きいものが、世界各地から見つかっています。
貨幣石はたくさん出ることと、生存時期が短いので、
示準化石(時代を示す化石)として利用されています。
フランスでは、パレオジン(古第三紀)を
貨幣石紀と呼ぶほどたくさん出ていたのです。
学名は、ヌンムリテス(Nummulites gizensis)といいます。
学名についているgizensisは、
エジプトのギザのピラミッドから由来しています。
ピラミッドの石材には石灰岩があり、
その中に貨幣石の化石がたくさん含んでいるものがあります。
沖縄の始新世の地層からも貨幣石が見つかっています。

・発見・
砂浜で、我が家の家族も銭石を探しました。
最初の1個は、私が見つけました。
それは小さいものですが、その形の不思議さに家族は驚きました。
自分でも見つけたいと、皆で探し始めました。
小学生の子供たちも、家内も、15分ほど探して、
1個から数個は、見つけることができました。
これくらいの頻度で見つかるのが、
発見の面白さ、珍しさ、でもだれもが手にできる喜び
などを味わうには、いいかもしれませんね。
もちろん一番たくさん見つけたのは、私でしたが。

・画像・
銭石という形の不思議さは、
言葉で聞いてもなかなかわからないかもしれません。
もし、興味がある方は、私がとってきた銭石の写真を
http://terra.sgu.ac.jp/geotravel/2007/Okinawa2007/index.html
に掲載してます。
覗いてみてください。