2005年3月10日木曜日

1_42 古生代4:カレドニア造山運動(2005年3月10日)

 地質時代シリーズです。前回は古生代の各時代で、生物がどのように進化してきたかを紹介しました。今回は、古生代に起こったいくつかの絶滅に関して、重要な要因を紹介していきましょう。

 古生代には、オルドビス紀末、デボン紀後期、そしてペルム紀末に大絶滅がありました。いずれも、地球史上の大絶滅のベスト3に数えられるものです。ただし、大絶滅であるかどうかは、以前に生きていた生物種が、どの分類レベルで、どれくらい絶滅したかが、ある程度数字でわかっているものについての比較になります。そのようなことができるのは、化石がたくさん見つかる古生代以降の顕生代になってからのことです。ですから、本当は「地球史上」という表現は、あまり適切ではないのです。顕生代以降というべきかもしれませんね。
 絶滅の数値は研究によって変わるとしても、古生代ではひとつの「代」のという時代区分の中で、何度も大絶滅が起こったことは確かです。やはり、その原因を知りたくなります。
 大絶滅に詳しい人は、隕石の衝突したのではと考えるかもしれませんが、今のところ隕石の衝突や地球外天体の影響の証拠はなさそうです。消去法によって、原因は地球内部の何らかの現象となります。
 重要な役割を果たしているであろう地球内部の営みとして、造山運動(ぞうざんうんどう)と呼ばれるものがあります。造山運動とは、山を造るような大地の運動という字になっていますが、意味としてはもっと大きく捉えられていています。地球全体におよぶような、大きな地殻変動をいいます。もちろんそのときに、山を造る作用も同時におこります。
 大規模な造山運動は、プレートテクトニクスの考え方によって、大陸同士の衝突によるものとして説明されています。衝突によって、大陸の間にあった海にたまった大量の堆積物が陸上に顔を出し、山脈となります。そして、山脈の地下深部では、変成岩や花崗岩が形成されます。これらすべてをひっくるめて造山運動と呼びます。
 古生代には、2つの造山運動が起こっています。カレドニア造山運動とヘルシニア(バリスカン)造山運動の2つがありました。
 カレドニア造山運動は、原生代末からデボン紀にかけての活動です。イアペタス海(古大西洋とも呼ばれます)という大きな海が、大陸同士の衝突でシルル紀後期に消えたのです。
 カレドニア造山運動は、現在の、北米大陸東岸のアパラチア山脈、アイルランド、イギリス(ウェールズ、スコットランド)、ノルウェー、グリーンランド東岸などに残されています。
 それぞれの地域で少々違いがありますが、イギリスの場合を例にして見ていきましょう。衝突する前に北側にあった陸地をグランピアン高地、南側の陸地を南部高地と呼んでいます。グランピアン高地は、10~5億年前に浅海にたまった堆積物が変成された変成岩(結晶片岩)、その下に不整合で28~18億年前の変成岩(片麻岩)があります。南部高地は、大部分がもとの海洋地殻の岩石からできています。それより古い岩石はほとんどでていないのですが、少しだけ16億年前より古い片麻岩があること、ドイツのカレドニア造山帯では13~9億年前の片麻岩などがあることから、大陸地殻があったと考えられています。
 この造山運動が起こるまでイアペタス海では、カンブリア紀初期からオルドビス紀、シルル紀にかけて、連続的に(整合で)堆積物がたまっていました。そして、その間に3回の海進と海退のサイクルがあったことがわかっています。
 カレドニア造山運動の終りには、造山帯全体で激しく地層が圧し縮められて褶曲しました。そして、陸地となった地域では、旧赤色砂岩とよばれる赤い特徴的な地層がたまります。この旧赤色砂岩の堆積で、カレドニア造山は終わります。
 2つの大陸の衝突の証拠として、両側の陸付近で見つかる三葉虫の化石が違っていることが挙げられています。三葉虫の種類が違うほどイアペタス海が広かったことを示しています。
 長くなってきました。もうひとつの造山運動については、次回としましょう。

・ハットンの不整合・
今回のエッセイで、旧赤色砂岩というものを紹介しました。
以前、私はスコットランドで、
「ハットンの不整合」と呼ばれているところを見に行ったことがあます。
そのときに様子は、
http://www1.cominitei.com/earth/4Travel/4_23.html
http://www1.cominitei.com/monolog/terraincognita/09.html
などで紹介しています。
「ハットンの不整合」とは、
シルル紀の垂直になった地層の上に
不整合と呼ばれる関係で、
デボン紀の旧赤色砂岩が堆積しているものです。
ジェイムズ・ハットンとは、
18世紀に活躍したスコットランドの地質学者で、
「近代地質学の父」と呼ばれています。
「ハットンの不整合」とは、
地質学の教科書にでているような有名なところです。
不整合とは、下の地層の上に、
不連続に別の地層がたまっているということです。
不整合とはある地層境界の様子を示しています。
一般的に、次のような出来事が起こったと考えられます。
海でたまる地層が、まずできます。
ある時、その地域が上昇して、地層が陸化します。
その時に、地層は傾いたり褶曲したりします。
そして、地上上がった地層は、侵食が起こり、削られます。
その地層が沈降して、海の底になります。
そこに堆積物が積み重なっていきます。
この古い地層と新しい地層の境界が、
不整合と呼ばれるものです。
不整合という境界には、
長い時間が流れていていること、
大きな変動が何度かあったこと、
連続的な変化の積み重ねがあったこと、
など地質学的さまざまな現象が起こっていることを意味します。
この露頭をみて、ハットンは、不整合というものを見抜いたのです。
私が見に行ったのも、この地層境界でした。
ハットンは、地球に時間の流れが雄大であることを示したのです。

・春まであと少し・
北海道も少しずつ春めいてきました。
先日まで暖かい晴れの日がありました。
すると雪がすごい勢いで融けていきます。
道路が水浸しです。
長靴でないと歩けません。
そして、ある時は打って変わって吹雪です。
こんな繰り返しが、春への兆しとなります。
心なしか、除雪されたうずたかく積み上げられた雪山が
低くなってきたような気がします。
春まであと少しです。
待ち遠しいものです。