2001年2月23日金曜日

5_4 年代決定の原理

 ジルコン一粒からも年代測定ができます。これは、科学技術が進んだおかげです。しかし、いったいどうして、そんなことができるのでしょうか。その原理や仕組みは、理解できないほど複雑なものなのでしょうか。今回は、年代決定の原理と仕組みを紹介します。

 年代決定は、放射性元素(正確には放射性核種(かくしゅ))を用います。放射性核種とは、放射能をもつ核種のことです。核種とは、元素の中で質量数の違うものを区別して呼ぶ時に使う用語です。放射能を持たないものを安定核種といいます。放射能とは、ある核種が放射線を出して別の核種に変わる現象のことです。
 年代決定の原理は簡単です。天然の物質には、何種類かの放射性核種がいくらか含まれています。その核種の量を精度良く測定することができれば、年代決定ができます。
 年代決定ができるには、重要な条件をいくつか満たす必要があります。
 最初の条件は、「年齢に適切な放射性核種を選ぶ」ことです。放射性核種は、地球のような物理・化学条件では、時間あたり一定の量で放射線を出して壊れて(崩壊(ほうかい))いきます。壊れるスピード(半減期もしくは崩壊定数)は、ほとんどの放射性核種で、正確に決められています。もとあった放射性核種(母核種)の量と、できた核種(娘核種)の量が測定できれば、半減期から、経過した時間(年代)が計算できます。
 放射性核種ごとに、崩壊のスピード(半減期)が違います。短い時間を計るのにストップウォッチを用い、中くらいの時間は掛け時計を用い、長い時間には地球の公転(年という単位)を用います。それと同じように、その物質が経てきた年齢に応じた「時計」、つまり放射性核種を用いなければなりません。もし、非常に古い鉱物に短い半減期の放射性核種を用いたら、母核種はなくなり娘核種だけになっており、年代決定に使えません。古いものには長い半減期のものを、新しいものに短い半減期の放射性核種を用いなければなりません。
 億年という古い年代には238U(ウラン)、235U、232Th(トリウム)、147Sm(サマリウム)、87Rb(ルビジジウム)が、万年から千年の短い年代には、14C(炭素)が、億から万年の中間的な年代には40K(カリウム)が用いられます。
 必要な条件の二番目は、「放射性核種が物質に適切な量あり目的の精度で分析できるか」です。適切な半減期の放射性核種を選んだとしても、目的の物質に、測定可能な量なければ、測定することができません。測定可能な量は、技術の進歩によって、微量でも測定が可能となってきました。しかし、やはり最新の科学技術を駆使しても、測定できる限界もあります。
 最後の条件として、科学者の「鼻が利(き)くかどうか」、重要となります。「鼻が利く」とは、まず実際に最古のものを見るけるというのは、科学者が、野外調査で古そうだ思える岩石を採取することやどの核種、どの道具を選ぶかは、科学者自身の判断にゆだねられます。ですから、最後に一番重要な条件は、科学者の「鼻が利く」かどうかとなります。
 このあたりの詳しいことは、拙著、NTT出版「石ころから覗く地球誌」(ISBN4-87188-399-X)で、やさしく紹介しています。書店や図書館で覗いて見てください。