2022年2月24日木曜日

2_202 全球凍結と生物進化 3:レフュージア

 全球凍結が3度起こったことがわかってきました。いずれも、陸上生物がいない時代のできごとです。全球凍結は、生物にとって非常の過酷な環境で、大絶滅がおこったはずです。生物はそれでも生き残りました。


 24億年前に全球凍結が起こったことが、最初に指摘されました。当初、あまりにも荒唐無稽とだとされ、誰も信じていませんでした。7-6億年前ころの地層が調べられていくについて、全球凍結が起こっていたことがわかってきました。前回示したような根拠で証明されてきました。
 いろいろな時代の地質学的証拠が検討しなおされて、全球凍結になるような氷河期が、24億年前に1度、7-6億年前には2度、起こっていたことが明らかになってきました。
 全球凍結は生物にとって、大きな影響があったはずです。7-6億年前、生物は陸上には進出しておらず、海洋生物だけでした。そこで問題が起こってきます。全球凍結になると、海洋が表面から1000mまで凍ったと推定されています。1000mより深いところでは、凍っていない海水もあったでしょうが、太陽光は数100m程度までしか届きません。氷の下の海水まで太陽光が届きません。そうなると、海洋性の光合成生物は絶滅してしまいます。光合成生物が絶滅すると酸素が供給されなくなります。酸素のない環境では、好気性の生物(酸素を利用する生物)は生きていけず、嫌気性生物だけになってしまいます。
 生物の進化の順番として、嫌気性生物が最初に誕生し、光合成をする生物が進化(25億年前以降)して酸素が生産され、酸素のある環境ができてくると、好気性生物が繁栄してきます。陸上生物がいない環境で全球凍結が起こると、光合成生物も好気性生物が全滅してしまいます。生物進化でみると、嫌気性生物だけの世界に戻ってしまいます。
 ところが、3度の全球凍結の後にも、光合成生物は、全滅することなく生き延びています。その後も大気中に酸素が供給され、地球表層は酸化的条件になっていることがわかっています。光合成が可能な海洋域が、表層には残されていのに光合成生物が生き残っていることになります。
 光合成生物も含めて、生物多様性が保持されるために、生物が生き延びられる条件や環境(レフュージア refugia 待避地という意味)が、存在したと考えられています。そのような場があれば、生物進化を継続できます。
 レフュージアは、まだ発見されていませんが、海洋島がその候補と考えられています。地球には多数の活火山があります。海にもあります。海洋島は海面に顔を出している火山です。海洋島で火山活動があれば、温泉水が湧いたり、溶岩の流出したりして、周辺で凍っていない海もあった考えられます。このようなレフュージアが100個程度あれば、生物多様性を維持できるというシミュレーションもあります。活火山のかずはもっと多くなっています。
 これまで、地質学的証拠がありませんでした。今回、地質学的証拠が報告されました。静谷あてな(博士課程後期時代に報告)と海保邦夫、Jinnan Tongさんの共同で、Global and Planetary Changeという雑誌で発表されました。タイトルは、
Marine biomass changes during and after the Neoproterozoic Marinoan global glaciation
(原生代のマリノアン全球氷期の間と後の海洋生物量の変化)
というものです。
 その内容は次回としましょう。

・ワクチン接種・
3月中旬に集中講義があるので、
その準備のために、毎日、何名かずつ遠隔で指導しています。
対面ではないので安心ですが、指導がなかなか大変です。
まん延防止等重点措置が3月6日まで2週間延長されました。
仕方がない処置かと思います。
私は自宅と大学の往復だけになっています。
自由に出歩けるのはいつになるでしょうか。

・排雪・
今年は雪が多く本当の困りました。
今週から我が地区で排雪がおこなわれます。
例年おこなわれているもので、
市と地域が協力して、道の雪を取り除き、
雪捨て場に持っていってもらいます。
地区ごとに1週間かけて業者が来て排雪をします。
予定通りであれば、我が家の前は来週の頭になりそうです。
その間、車の出入りはできません。
人は雪山を乗り越えればなんとかなるのですが、
車はその間出入り禁止になります。
しかし、作業は豪快なので見ごたえがあります。
特に今年はすごいことになるのでしょうね。

2022年2月17日木曜日

2_201 全球凍結と生物進化 2:地質学的証拠

 氷河期が起こっていたという、地質学的証拠が見つかってきました。しかもその証拠の中には、全球凍結を示すものも含まれていました。全球凍結を示す証拠とはどのようなものでしょうか。


 全球凍結の状態になってしまうと、理論的には海のある状況には戻れないことがわかっていました。地質学的にも、海が継続的に存在していることがわかっていました。ですから、全球凍結はなかったという考えが定説となっていました。
 地質学的証拠を先入観なくみていくと、氷河があったことがわかってきました。現在では当たり前になっている第四紀の何度かの氷河期ですが、最初には多くの人が信じていませんでした。氷河期には、山脈に氷河があったのですが、中緯度でも平地にも氷床が形成されていたことがわかってきました。
 もっと古い、生物の化石が見つからない時代にも、氷河期が見つかってきました。
 ある時代の氷河の分布を見ると、非常に広い範囲に広がっていました。大陸移動を考え当時の大陸配置を復元していくと、現在では決してみられない地域にも、氷が覆っていた証拠が見つかりました。例えば、低緯度(赤道付近)で氷河が削った堆積物が見つかったり、氷床が運んだ礫が低緯度の海底堆積物から見つかったりしました。これらは、赤道付近の大陸まで氷床や氷河があったという証拠になります。
 赤道まで氷床ができる状態の地球を考えると、理論で示された全球凍結が起こったと考えられます。地質学的証拠からはそうなってきました。太陽からの入射光を熱源として、地球のアルベドの変化を理論で考えていました。そこでは、大気の組成の大きな変化などは想定していませんでした。理論は、想定外の条件は計算には反映されません。
 過去に全球凍結が起こっていたとしたら、全球凍結からどのようして海のある状態に戻れるか、という点が問題となります。その謎を解く手がかりも、堆積物にありました。
 氷河の痕跡を残していた海成層の上には、分厚い炭酸塩岩層が堆積していました。ここから推測をしていきましょう。
 炭酸塩が堆積するということは、大量の炭酸が海水に溶けていたということです。炭酸塩の厚い層ができるということは、沈殿が継続することを意味し、炭酸が海水に供給され続けていたはずです。炭酸は、大気中の二酸化炭素が海に溶けることで供給できます。大気中に大量の二酸化炭素が存在していたことになります。そのような大量の大気中の二酸化炭素は、火山ガスが長い時間を供給されていれば、蓄積可能です。もしこのような推測が正しければ、大気中に大量の二酸化炭素があったことになり、強烈な温暖化効果が起こったはずです。これが、全球凍結から海のある状態へ戻るメカニズムになるはずです。
 火山ガスが大気中に蓄積するのは、現状の火山噴火の量でも、十分可能だと見積もられています。現在の地球では大気中に二酸化炭素は植物や海洋に吸収されていき一定量に保たれています。もし、二酸化炭素が陸上植物や海が吸収されることがなければ、大気中に蓄積していきます。
 全球凍結が起こっていた時代は、陸上生物がまだ出現してません。また、全球凍結で海洋もすべて凍っていたので、海水と大気は接していませんでした。
 以上のことから、なんらかのきっけかで、寒冷化に向かっていけば、全球凍結の状態になることで、地球の気候は安定します。しかし、火山活動は地球内部からの熱放出なので、継続しています。火山ガスから供給された二酸化炭素は、どこにも吸収されることなく、大気中に堆積していきます。
 やがて大気中の二酸化炭素は、強烈な温暖化を起こしはじめます。氷を溶かし、現在の海のある状態に戻していきます。このようなシナリオを描くことができます。全球凍結が起こっても、自動的に戻ってこられるメカニズムが、地球には組み込まれていることになります。
 では、全球凍結は、どの時代に起こったのでしょうか。それは何度あったのでしょうか。次回としましょう。

・帰省のキャンセル・
全国でまん延防止等重点措置の延期が決定されました。
2月末から3月にかけて、
横浜と京都に帰省する予定でしたが、
急遽キャンセルしました。
高齢の親にも、しばく会っていませんが、
会いにいくと、今度はコロナ感染が心配です。
息子たちにも、しばらく会っていません。
お互いに、感染拡大地域なので
接触はしないほうがいいでしょう。
残念ですが、今回も諦めました。
これで丸二年、家族のいることろに帰省できていません。

・集中講義・
大学は、後期が終わり、通常の授業がないので、
厳しい措置は取られていません。
ただし、資格取得に必要な授業は
対面で進められています。
3月には、私が担当する
教職に関係する授業もあります。
これは対面で集中講義としておこなわれます。
それまでの個別指導は遠隔ですが。

2022年2月10日木曜日

2_200 全球凍結と生物進化 1:スノーボールアースとは

 過去に全球凍結(スノーボールアース)が起こったと考えられています。全球凍結と生物の進化に関する研究が報告されました。その報告から、両者の関係を紹介していきましょう。


 スノーボールアースという言葉をご存知でしょうか。スノーボールは雪玉です。アースは地球なので、「雪玉のような地球」となります。これは、地球表層の水がすべて凍ってしまい、雪や氷になってしまった状態であるという仮説になります。
 陸地に雪として降ったものもあるでしょうが、雪も時間が経てば圧縮され氷になります。地球の水の大半は海にあるので、海も全面が凍ったことになります。私たちがよく知っている第四紀に何度か襲った氷河期も、海全面が凍ることはありませんでした。ですから、スノーボールアースとは、氷河期とは比べものにならないほどの寒冷な状態を意味します。
 そんな状態は地球では起きないと考えられてきました。なぜなら、地球は惑星の公転軌道がハビタブルゾーンにあることと、全球凍結が安定状態であることからです。ハビタブルゾーンとは、惑星の表面に水が存在できる惑星軌道をもっているということです。全球凍結とは、惑星表層の水がすべてになることです。
 両者は矛盾しているように見えます。少し説明が必要でしょう。
 惑星の表層の気温などの条件は、地表の状態や雲の存在が重要になります。地表の状態として反射能(アルベド)という考え方が、もっとも重要になります。現在の地球では、太陽光は地面や海を温めています。もし惑星の表層が氷で覆われたとすると、アルベドが高くなり、太陽光は反射され大地を温めるエネルギーになりません。現在は3割程度を反射しますが、一旦全球凍結の状態になると、8割が反射されると考えられます。つまり、地球表層を温めるために利用されないことになります。
 雲は、水蒸気として上昇した水が、大気中で凍ったものです。雲が多くなると太陽光は7割が反射されますが、地表からの熱は保持します。寒冷化が進むと、雲も雪となりやがてはできなくなり、全球凍結へ一気に進みます。全球凍結になってしまうと、アルベドが大きいままなので、冷たい状態が維持されることになります。
 全球凍結は、地球としては安定した状態でもあります。ですから一旦全球凍結の状態になってしますと、海のある状態に戻れないことになります。この理論を受け入れることにします。次に、地球の地質学的証拠をみていきましょう。地球には38億年前以降、各地でいろいろな時代で、海でたまった堆積岩が、存在しています。当然、現在も海があります。
 理論と地質学的証拠を合わせると、全球凍結の状態にはなったことがないと考えられます。
 これがかつての定説でした。しかし、今では定説は壊れ、全球凍結があったと考えられています。

・論文・
今回紹介する論文は、Global and Planetary Changeという雑誌に
静谷あてな、海保邦夫、Jinnan Tongさんの共同で
Marine biomass changes during and after
the Neoproterozoic Marinoan global glaciation
(原生代のマリノアン全球氷期間と後の海洋生物量の変化)
として報告されました。

・一般入試・
国公立の大学入試はこれからですが、
我が大学の一般入試が終わりました。
3月にも私立大学では入試がありますが。
私立大学では、いろいろな入学チャンスを用意しています。
これまで入学してきた学生の多い地域での受験や
大学共通テストを利用した試験、
各種の推薦入試などなど。
大学に入りたい人は、
いろいろな方式で入学できることになります。

2022年2月3日木曜日

5_192 系外惑星の多様性 7:多様な惑星

 私たちの太陽系にも多様な惑星があります。系外惑星でも多様性があるということは、私たちの惑星の多様性形成が、他の星系でも起こっていることになります。多様性の説明は普遍性をもっていることになります。


 私たちの太陽系の表面が岩石からできている惑星には、水星、金星、地球、そして火星があります。水星は太陽にもっとも近く、そして小さい惑星です。水星の質量と半径から、密度を計算すると大きくなり、惑星の内部には重いものが多く含まれていることがわかります。太陽系の他の惑星との比較から考えると、核は鉄(7.9g/cm3)でできおり、マントルの岩石(3.5g/cm3)より密度が大きくなっています。水星が重いのは、マントルに比べて大きな核があると考えられます。
 現在の惑星形成モデルによるシミュレーションでは、チリ(鉄や岩石)が集まって微惑星ができ、それらが衝突、合体して原始惑星へと成長してきます。しかし、鉄だけが多く集まる惑星を形成することは、なかなか難しいようです。ジャイアント・インパクトで地殻が剥ぎ取られた仮説、太陽によって岩石質の地殻が蒸発する仮説などがありますが、まだ確定していません。もしシミュレーションで再現できないとすれば、太陽系だけの特別、例外的な事例の可能性もありました。
 前回紹介したように、通常の惑星より、鉄に富んだ惑星が太陽系外にはあることがわかってきました。それら鉄の多い惑星の形成メカニズムは、どのようなものになるでしょうか。そのメカニズムは、水星にも適用できるはずで、逆に水星の形成メカニズムがわかっていれば、系外惑星にも適用できるはずです。
 ところが、今回の研究で、鉄の多い系外惑星も、何割か存在していることがわかってきました。鉄を多く含む惑星の存在が確かだとすると、惑星形成において、必然的にできるメカニズムがあったことになりそうです。
 また、太陽系の外側にある巨大ガス惑星(木星、土星)や氷惑星(天王星、海王星)などの形成過程も、まだ充分に解明されていません。
 さらに太陽系から想像されていなかった、多様なそして異形の系外惑星が見つかってきました。岩石惑星でも地球の何倍もの質量をもったスーパーアースや、木星ほどのサイズなのに恒星に近い軌道を周るホットジュピターなども見つかっています。
 これまで私たちの太陽系が典型的な恒星系と考えてきたのですが、多様性の一部に過ぎないことがわかってきました。私たちの太陽系の形成が説明できるだけでなく、他の多様な系外惑星の形成も説明できるような、もっと汎用性のあるもの、普遍的恒星系形成モデルを目指さなければなりません。

・大学入試・
大学では、一般入試がスタートします。
地区により各大学の一般入試の時期が異なりますが
大学間でも日程がぶつからないようしています。
これは、受験生の選択肢を増やすことになりますが、
大学としては、第一志望に落ちて
第二志望として受かっていれば、
入学のチャンスができるからです。
大学では、いろいろな入試制度があるので、
希望の大学、学部、学科が決まっていれば、
学力に問題がなければ、受験機会が増えたので
入学しやすくなってきたことになります。
これは私立大学のことで、一流の国公立大学は、
いまでも一発勝負のところが多いですかね。

・ブースター接種・
コロナのオミクロン株の感染爆発が続いています。
ワクチンの3回目のブースター接種もはじまりました。
3回目が、どの程度新しい株に効果があるかわかりません。
2度のワクチンの効果も下がっていることは確かなようです。
ですから、3度目の接種ができるだけ早く
多くの人が行き渡ることを願っています。

2022年1月27日木曜日

5_191 系外惑星の多様性 6:鉄の含有量

 系外の恒星の化学組成と惑星の質量と半径の観測値から、いくつかの仮説から、個々の惑星の鉄の含有量が推定されました。系外惑星の鉄の含有量に、相関関係とギャップが見えてきました。


 系外の恒星の組成と惑星の質量と半径の観測データがそろいました。そこから惑星の化学組成を推定していくことになります。
 惑星の質量と半径がわかっているので、平均密度が計算できます。太陽系の惑星を参考にして、平均密度から内部がどのような物質が分布しているかを、構造モデルを作成していきます。
 同じ分子雲コアから形成された恒星と惑星は、似た化学組成、もしくは化学組成になんらかの相関があると考えられます。私たちの太陽系では、太陽と惑星の化学組成で、ケイ素、鉄、マグネシウムなどが相関があることがわかっています。これらの元素は、岩石惑星の主成分となっています。
 これら2つの情報、惑星の構造モデルと恒星と惑星の鉄の化学組成の相関関係から、惑星の主成分となる鉄の含有量を見積もっていきます。
 次に、その結果を考察されています。恒星の鉄の含有量が近いもの同士で、系外惑星の特徴を比べていくと、恒星の鉄含有量と、系外惑星の鉄含有率には相関(傾き4程度)があることがわかりました。ただし、推定された鉄の含有量には、多様性があることがわかってきました。つまり、同じ鉄の含有量の恒星でも、惑星の鉄の含有量には幅があり、多様であることがわかりました。
 また、鉄の含有量の多い恒星には、少ない恒星との相関を越えてかなり鉄の含有量が多い惑星も存在していることがわかってきました。鉄の含有量は、連続することなく、鉄の多いものへとジャンプするようなギャップがありました。
 以上ことから、恒星の組成が似ていても、惑星の鉄の含有量には多様性があること、そして特別に鉄が多い惑星もあることがわかってきました。鉄の含有量で系外惑星をみると、非常に多様性があることがわかってきところになります。
 しかし、このような多様性は私たちの太陽系にありました。これについては、次回としましょう。

・豪雪・
わが町や札幌は豪雪が続いて積雪が多く、
除雪、排雪が間に合っていません。
道の脇には除雪された雪がうず高くなり、
道幅も半分以下になってきました。
車がすれ違えないところもあり、
深い雪の轍で埋もれるような道もありました。
幹線道路がかろうじて排雪はなされてきましたが、
公共のバスも2週間ほど運休の路線もあります。
これまで雪が少なかったので
突然の豪雪で対処しきれないようです。

・自粛・
家内は、豪雪なので買い物も最低限にしています。
また、できるだけ食料も備蓄するようにしています。
そこにオミクロン株です。
札幌だけでなく、わが町、わが大学でも
感染が広まっています。
コロナでの自粛も重なります。
またまた不自由な生活が続きそうです。

2022年1月20日木曜日

5_190 系外惑星の多様性 5:恒星と惑星の化学的相関

 恒星とその系外惑星の観測された情報から、惑星の特徴を考えていく方法が提案されました。いくつかのモデルをおいていますが。直接の観測データから考えている点が重要です。


 これまでのシリーズでは、白色矮星の化学組成から、その周囲にあった惑星の化学組成のうち、体積が多く化学組成を反映しやすいマントルを、間接的に探った結果を紹介しました。その結果より、太陽系の地球のマントルのような組成の岩石は珍しいものでした。
 このシリーズでは、もうひとつ直接調べた論文があり、それも一緒に紹介していくことにしていました。2021年10月15日のScience誌に多数の著者(20名)によって
A compositional link between rocky exoplanets and their host stars
(岩石系外惑星と恒星との間の化学的相関)
という報告がされていました。次に、これを紹介していきましょう。
 ハワイのすばる望遠鏡やチリ、カナリア諸島などの世界各地の望遠鏡を用いて観測されたデータを分析した結果です。太陽系外の恒星と惑星の化学組成に関係があるという報告でした。
 とはいっても、直接、系外惑星の化学組成を調べることは未だにできていません。では、どうして調べていくのでしょうか。
 恒星系は、分子雲コアという場で恒星も惑星も一緒に形成されていきます。回転する分子雲コアの中心に恒星が、その周囲の円盤状のところ(原始惑星系円盤と呼ばれています)に惑星ができていきます。惑星に使われなかった材料は恒星に落ちていき、ガスは吹きはらわれていくと考えられます。
 恒星も惑星も、もともとは同じ材料で形成されたはずです。形成環境や形成過程によって、それぞれ違いは生じたでしょうが、恒星と惑星の間には化学的に何らかの関係があったはずです。そのような化学的関係を前提にして考えていきます。
 今回研究には、系外惑星で岩石の表層をもっていると考えられ、観測が進んでいる21個の惑星が用いられました。観測でわかっているのは、恒星のスペクトル分析から推定された化学組成と、系外惑星で質量と半径です。これらの観測データのセットをもとに、いくつかの仮説(モデル)を立てて、系外惑星の化学的特徴を調べたという報告です。
 詳細は、次回以降としましょう。

・暴風雪・
大学入学共通テストが先週末にありました。
初日は、北海道では暴風雪でJRは運休だらけでした。
二日目も少し運休便がありましたが、
かなり復旧していました。
初日は、会場によっては、
繰り下げ開始や別室受験などの
対処がなされたところもありました。
一部支障がでましたが、北海道は
大雪に慣れていて、対処法もできているため、
なんとなったかと思います。
コロナ禍や津波警報、東大の事件の影響を
直接受けた受験生にとっては、
大きなストレスになったと思います。

・積雪量・
今年の北海道は地域によって違いがあるでしょうが
降雪量や総積雪量が例年になく多くなっています。
わが町の雪情報では、
過去5年平均の積雪量と比べて倍になっているとのことです。
道路も除雪による雪山が高くなり、
道幅も半分になっています。
そのため、車の通行だけでなく、歩行者も危険です。
雪の事故が多くなりそうです。
注意して外出しなければなりません。

2022年1月13日木曜日

5_189 系外惑星の多様性 4:形成と履歴の多様性

 系外惑星を構成していたマントルの岩石は、地球とは異なったものであることがわかってきました。そして、多数派であることも明らかになってきました。そこから見えてきたことは、地質学がより普遍性を求めていく必要性でした。


 前回、白色矮星の化学的特徴の違いから、系外惑星のマントルの岩石としては、石英+斜方輝石の組わせか、ペリクレース+カンラン石の組み合わせになると想定されました。著者らは、このような岩石を、石英輝石岩(quartz pyroxenites)とペリクレイスダナイト(periclase dunites)という名称を提唱しています。
 いずれも、すでに知られている鉱物です。そして、稀ではありますが、地球にも存在している岩石です。しかし、マントルなどを構成する主要な岩石ではありません。地球では、カンラン石+斜方輝石の組み合わせでした。似た鉱物からできていますが、系外惑星の方が、マグネシウムが多く、ケイ素が少いことを反映した鉱物組み合わせとなっています。
 このような組成の異なった惑星が形成されるのは、その恒星系の誕生時の履歴を反映している可能性があります。白色矮星に飲み込まれる惑星は、恒星の近くにあったものです。恒星近傍に、材料物質が集まる時、そこで起こる化学的分化に、太陽系とは、違っていたことを匂わせています。
 調べた23個の白色矮星の中で、地球に似たものが1つで、それ以外がすべて石英輝石岩かペリクレイスダナイトとなるようなマントルを持ったものになっていました。つまり、私の太陽系の惑星形成とは異なった形成プロセスが多数派、普遍的であり、地球が例外のようです。
 地球と異なったマントルの岩石があるということは、形成された惑星でも、地球とは異なった特徴や履歴を持つ可能性があります。
 著者の一人のPutirkaは、地球のマントルよりは多くの水を取り込めた可能性があり、その惑星の海洋の起源に影響を与えた可能性があると考えています。また、地球のマントルより低温で溶けやすくなるため、マグマが大量に形成され、厚い地殻をもっていた可能性もあると考えています。そうなると、プレートテクトニクスも異なった様相を呈することになりそうです。
 地質学、あるいは岩石学、火成論などは、地球をモデルにして、その仕組みを調べ、一般化してきました。その一般論を、他の惑星へと適用してきました。しかし、今回の系外惑星の多様性がわかってきたことで、どうもこれまでの地球でのモデルは、多様性の一つに過ぎないことになりそうです。

・大きな普遍性へ・
このエッセイの最後でも述べましたが、
今回の論文が示した可能性が、
もし多くの惑星系における典型だとすると、
地質学の立ち位置を考えなおさければなりません。
今回の石英輝石岩かペリクレイスダナイトは
地球も存在する岩石です。
根拠をもって、地球とは異なったマントルが推定されたのなら
その惑星は、どのような形成過程があるのか、
またできた惑星でどのような地殻形成やテクトニクスが働くのか、
などを考えていく必要がありそうです。
これは地質学において、より大きな普遍性を探っていく
チャンスかも知れませんね。

・排雪・
北海道は年末から年始にかけて、
繰り返された寒波の到来で
個々数年の冬よりは、積雪は多くなっています。
歩道と車道の間にうず高く積み上がった雪は
道路を横切る時、見通しが悪く危険です。
また、車道の幅も狭くなっており、
車の通行も細心の注意が必要です。
こんな時は、自治体による早目の排雪作業が必要です。
しかし、年ごとに雪の量は異なりますので、
経費のかかる作業で、
自治体としても悩ましい問題でしょうね。