2019年6月20日木曜日

6_164 月の探査 5:起源

 月の探査とは違った内容の報告です。月の形成過程に関する報告です。最近だされた成果で、これまで月の起源で課題となったいたものが、解決できるのではという報告でした。

 中国の月探査機玉兎2号が調べた地域は、月の岩石の中でも特殊な岩石が分布していると考えられる地域でした。隕石の衝突で地殻とマントルが部分溶融して固まったものの可能性がありました。そして、地殻で分析して確認しました。
 実物試料の分析は、1970年代のアポロ計画で持ち帰えった月の表側のデータが主でした。あとは周回軌道からの遠隔からの観測でした。その観測を検証することが玉兎2号の重要な任務でした。今回の探査で、月の裏側でそれも特異な岩石が出ているところを調べ、遠隔観測のデータと一致したことは重要な成果でした。
 これは、月の起源に迫れる情報となると考えられています。月は非常の大きな衛星なので、他の惑星の衛星の起源とは違ったものとだと考えられていました。月の起源には、古くからいろいろな仮説があったのですが、近年では、巨大衝突仮説が有力でした。
 巨大衝突仮説とは、原始地球に火星サイズ(地球の半分ほど)の天体が衝突したというものです。衝突で、地球や天体の岩石が飛び散ったり、蒸発したりして、地球軌道上で集まったものが月になったと考える仮説です。
 巨大衝突仮説は、月の大きさだけでなく、月の化学組成も説明できました。これまでのシミュレーションでは、月は、ぶつかってきた天体に由来する物質が多くなってくることを示していました。
 アポロ計画で持ち帰ってきた試料のデータと比べると、いくつかの成分(同位体組成)が地球のものに近いことがわかっていました。この結果は、シミュレーションと化学組成のデータが合っていませんでした、「同位体比問題」と呼ばれて、重要な課題となっていました。
 今年の4月29日にイギリスの科学雑誌「Nature Geoscience」に、海洋研究開発機構の細野七月たちの研究グループが
Terrestrial magma ocean origin of the Moon
(月の地球のマグマオーシャン起源)
という報告が出されました。この論文は、「同位体比問題」に対する答えを提示しようというものでした。
 詳細は次回にしましょう。

・涼しい・
北海道は、週末から数日寒い日が続いています。
自宅内も朝夕は涼しく、
さすがにストーブをたくほどではないですが、
冬の室内着を出して着ていました。
それでちょうどよかったです。
降雨も気温も少々平年とは違っています。
エルニーニョ現象のせいでしょうか。
農業に被害がでなければいいのですが。

・アポロ・
アポロ計画は、1961年から1972年まで実施されました。
アポロ11号から17号まで、月面に着陸して調査をしました。
ただし、アポロ内13号は、月に向かう途中に事故があり
月を周回して着陸せずに帰還しました。
アポロ計画では全6回に渡った調査になりました。
降り立ったの人類は、12名となります。
アポロ計画以降、月の試料は入手できていません。
月隕石とされるものもありますが、
場所も時期も不明で、月由来という確証もありません。
ですから未だにアポロの試料は
重要な役割をもっています。
ただし、限られた地点、表側だけの試料など
限定された試料なので月の全貌をみているという
保証がなく、それが不確実性となります。