2018年6月14日木曜日

3_171 核の姿 6:二酸化ケイ素の結晶

 核には、鉄に軽い元素として、ケイ素と酸素が含まれているようです。液体の鉄の中で、結晶化することが実験でわかってきました。結晶化が起こす現象が、地球には重要な意味があったようです。

 東京工業大学の廣瀬敬さんとその共同研究者は、2017年2月に、イギリスの科学誌ネイチャーに、
Crystallization of silicon dioxide and compositional evolution of the Earth's core
(二酸化ケイ素の結晶化と地球の核の化学組成の進化)
という論文を報告されました。
 これは、地球の核では二酸化ケイ素の結晶ができるということを、実験的に示し、さらに結晶することで核に何がおこるのかを検討したものです。
 何度も述べてきましたが、核は、金属鉄からできています。隕石などの類推から、鉄を主とし、ニッケルを少し含む(5%ほど)合金となります。ところが、地震波のデータからみると、その密度をもっと軽くする成分が加わっている必要があります。その量は鉄の密度を10%ほど小さくするほどです。軽い元素ですから、その量はかなり多く混じっていることになります。
 軽い成分の候補として、硫黄と酸素、水素、ケイ素などが考えられ、議論されてきましたが、まだ定まっていませんでした。地球の形成史を考えていくと、最初から核があったのではなく、初期に徐々に形成されていったと考えられます。
 材料物質の隕石が、次々と衝突していた時期があり、その材料のから溶けた鉄が深部に向かって沈んでいったはずです。鉄が、高温のマントルを通り抜けるとき、岩石の主成分であるケイ素と酸素が、鉄に取り込まれたと考えられます。そのため、核の軽元素として、ケイ素と酸素が有力だと目されていました。
 廣瀬さんたちは、液体の鉄にケイ素と酸素が溶け混んでいたと想定して実験をおないました。このシリーズで紹介したダイアモンドアンビルセル装置を用いて高圧を発生し、そこにレーザーで加熱することで高温にもしました。その条件は、133~145万気圧と3600~3700℃という高圧高温で、核の条件に近いものでした。そこで、溶けた鉄の中で二酸化ケイ素がどう振る舞うかを調べました。
 その結果、二酸化ケイ素の結晶化ができることがわかりました。そこから重要なことがわかってきました。核の対流の起源と、そこから地球磁場の形成の問題への答えがでてきそうだということです。
 実験によれば、核最上部で、溶けた鉄の中にケイ素と酸素があれば、それが二酸化ケイ素として結晶化していくことになります。二酸化ケイ素の結晶は、溶けた鉄より軽いので、浮いていきます。浮いた二酸化ケイ素は、マントルの一部になっていきます。
 一方、二酸化ケイ素の抜けた液体鉄は、軽い元素を含む液体鉄より重くなります。同じ液体鉄でも、密度の差があれば、重いほうが沈んでいくことになります。そして核で対流が起こることになります。そこで、重要な関わりでてくるのが、前回の内核の形成時期が若いという結果です。
 その関係は、次回としましょう。

・変動する天候・
北海道は、肌寒い日が続いています。
晴れると暑いくらいなのですが、
曇ったり雨だと、一気に肌寒くなります。
夏になったり、春に戻ったり、変動の激しい天候です。
皆様の地域はいかがでしょうか。
体調を崩さないように、
気をつけなければなりませんね。

・恒例のこと・
大学の前期の講義も、折り返しとなりました。
私のいる学科では、4年生では教職の教育実習、
3年生では介護等体験、特別支援の実習、
2年生では保育士の施設実習など
いろいろな実習が次々と行われています。
そして教職の採用試験もあります。
担当の教員は、その対応に追われます。
このような慌ただしい状況が、7月上旬まで続きます。
その後は、教職の1次の合格発表と
2次試験のための対策講座などが続いていきます。
これは、恒例のことなんですが、
風物詩というには、かなり生々しすぎますね。