2017年12月7日木曜日

6_148 5回目の重力波 2:5度目は

 5回目の重力波の発見は、どんな現象によるものでしょうか。その観測は今までとは違ったことがいくつかりました。発見によって、どんなことを、私たちに教えてくれるのでしょうか。

 4回までの重力波の検出は、サイズこそ違っていたのですが、いずれもブラックホール同士の合体によって起こった現象でした。5回目の重力波は、4回目の現象からわずか3日後、2017年8月17日に起こったものでした。あまりに連続した検出で、研究者にも驚き持って迎えられました。
 単に驚きだけでなく、5回目の重力波には、2つの重要なことがありました。ひとつは、5回目の重力波の発生が、これまでの現象とは違っていたことでした。ブラックホールではなく、2つの中性子星の衝突によるものでした。次に、今回の観測は、70ヶ所に上る観測所で100基ありまりのいろいろな装置で、この重力波を発生した星の観測がなされました。その結果、その発生源を状況が、重力波以外の波長でも詳しく調べられたことでした。
 この重力波が発生した場所は、楕円銀河NGC4993の外れにあるGW170817と呼ばれる天体でした。1億3000万年ほど前に超新星爆発で2つ中性子星ができ、長い間、お互いの周りをらせんを描きながら回っていたのですが、衝突合体しました。この衝突によって重力波が発生しました。多数の観測によって、中性子星が衝突するという現象が、詳しく観測されました。
 重力発見の報告の10時間後には、観測がスタートしました。カリフォルニア大学のキルパトリック博士が、まず最初にチリの小さな望遠鏡で観測しました。その結果、NGC4993の外れに、それまで何も見えなかったところに、輝く天体を発見しました。この発見をすぐに世界に配信しました。1時間ほどで5つのグループで、この天体が確認されました。
 中性子星が衝突すると、金属元素が放射線を放出しながら飛び出します。この現象は、通常の望遠鏡で観測可能となります。また、放射線も電波からガンマ線まで、いろいろな波長のもので観測されました。その観測によって、多くの重金属が含まれていることがわかってきました。
 宇宙に存在する重元素の形成過程は、星が死ぬ時の超新星爆発でできるとされていました。しかし、宇宙の重い元素の存在比が、実際に観測とは合わないとされていました。もし、中性子星の衝突のような現象が、ある程度の頻度で起これば、重元素が大量に合成されて、宇宙空間に放出することが可能になるかもしれません。
 2つの中性子星の衝突の結果、太陽の約2.6倍の質量の天体が形成されたことがわかりました。その天体は、一体などんなものかはまだわかっていません。ブラックホールではないか、非常に大きな中性子星ないか、という説もありますが、まだ決着をみていません。また、衝突後のX線と電波は、地球に届く時間が予測より遅かったのですが、これは何故でしょうか。いろいろ疑問が生まれてきました。まだ、観測も継続されていくでしょうから、新しい発見もできるでしょう。

・科学の進歩のきっかけ・
ひとつのことがわかれば、多くの人が調べると、
さらに多くのことがわかります。
新しい現象が発見され、多くの人が観測することでも
同じようなことが起こります。
しかし、そこには必ず、新たな疑問が生まれてきます。
それが科学でもあります。
そんな繰り返しが、科学を進めてきます。
今回もそんな科学の進歩のきっかけになりそうですね。

・原稿執筆・
11月締め切りの原稿を1週間のばしてもらいました。
今年の後半ずっと作業していた書籍の原稿です。
本来なら夏休みに執筆作業を進める予定でしたが、
夏休みが忙しくて進みませんでした。
その代わり、完成原稿での入稿となりました。
原稿の完成度が、まだ不十分です。
しかし、時間的に間に合わないので、
校正作業をストップして、編集作業に集中しています。
InDesignというソフトでの作業になります。
このソフトは、以前チャレンジして挫折しています。
必要に迫られば、最低限でなんとかするしかありません。
金曜日には印刷屋さんに、データを渡します。
できれば、入校後、校正をしたいと考えていますが、
どうなるでしょうか。