2017年9月7日木曜日

5_149 光子顕微鏡 2:微小を見る

 小さいものを見るには、光学顕微鏡では限界がありました。もっと小さなものを見るための方法は、どんなものがあるでしょうか。代表的装置の特徴と弱点を見ていきましょう。

 前回は、光学顕微鏡の理論的な限界を紹介しました。光学顕微鏡以外で、それより小さいものを見る方法はないのでしょうか。いくつかの方法が実用化されています。その代表的なものとして、電子顕微鏡があります。
 電子顕微鏡とは、光のかわりに電子をあてて見る方法です。電子を連続的に照射して(電子束とか電子銃と呼びます)、反射した電子(二次電子と呼ばれています)や通り抜けた電子(透過電子)を見る方法です。
 ただし、電子線を絞っているので、分解能を上げるためには、微小の部分に当て、そこからの反射となります。像として見る場合は、電子束を左右に移動させ、少しずらして左右に移動を繰り返して、面、つまり二次元的に合成して画像とします。テレビの走査線のように操作するわけです。
 その結果、凹凸や二次電子や透過電子の性質によって特徴を知ることもできます。成分分析に特化したものを電子線微小分析装置(EPMA)として利用されています。
 電子顕微鏡の弱点として、電子を飛ばすために、空気などの分子は邪魔になので、装置内は真空にしなければなりません。そのため装置は大掛かりになります。真空なので、生体なのど水分を含んだものは変形、変質してしまうので、分析にはあまり向きません。また、電子は電荷をもっているため、電子線があたり続けると、物質の表面が電気を帯びてしまいます(帯電といいます)。帯電すると、電子が反発してしまい、目的のところに当たらなくなってきます。それを避けるために、試料をあらかじめ伝導性のある物質(炭素など)で薄くコーティングし、帯電を除去するようにしておく必要があります。
 私も、電子顕微鏡やEPMAを用いたことがありますが、コーティングが疎かだと、電子が跳ねていい画像が得られません。コーティングは、できるだけ薄く、まんべんなくしなければなりません。そのためには、カーボンの削り方もコツがあったのですが、最近はそのあたりはどうなっているのかは知りません。
 透過型電子顕微鏡では、透過させるために、試料はできるだけ薄くしていかなければなりません。電子顕微鏡では、透過型の方が分解能が高く理論的には0.1nm程度の小さなものも見ることができます。原子サイズのものを観察できます。
 他にも、小さいものを見る装置があります。物質を同士を近づけた時に流れる電気(トンネル電流と呼ばれます)を用いるトンネル顕微鏡があり、分解能は20~30nmだとされています。また、物質を近づけたときに働く原子間力を用いる原子間力顕微鏡があります。その分解能は、数nmとされています。原子間力ではなく発生する磁気を用いる磁気力顕微鏡、発生する電気による電気力顕微鏡などもあり、目的や物質の特性によって使い分けられています。
 これはらの顕微鏡は、可視光ではないでの色はわかりません。まあ、そんな小さい世界に色はありませんので、人工的に着色すればいいのでしょう。しかし、そんなごく微小の世界に、色が見える装置が発明されました。物質の特徴に基づいた色が見えるとわかりやすいので、楽しみな装置となります。詳細は次回に。

・まだ見ぬ分析値・
電子顕微鏡などの分析は、
大きな装置ですが、一人で使います。
そこは、暗室になるようになっていました。
また、X線を発生する装置があると、
重い鉛の壁、ドアに囲まれた部屋になっていました。
そこは、とても静かな環境になります。
装置が貴重な大学などでは、24時間、順番に使用してきます。
私も、何度も、真夜中にひとりで、装置を使って分析してました。
そんな時、小さな岩石の微小部分の中に、
まだ見ぬ分析値に思いを馳せていました。

・ノスタルジー・
私が使っていた頃は、装置も未熟で、
ほぼ手作業で分析をしていました。
後半には、補正計算はコンピュータ処理が
できるようになってきましたが。
今では、装置の性能がよくなり、
多数の分析ポイントを覚えさせて、
あとは、装置任せで、結果を待つだけとなっているのでしょう。
分析値1つ当たりに対する手間が以前と比べて格段に楽になりました
でもその分、データの値打ちが低くなってきたような気がします。
これは、昔を懐かしむ、ノスタルジーでしょうかね。