2017年8月3日木曜日

2_149 オルドビス紀末の大絶滅 3:米中、3層準、水銀

 オルドビス紀末の大絶滅の原因として、水銀が関係していたのではないかという報告がありました。なぜ、あまり多くない水銀という元素に着目されているのでしょうか。報告の概要を見ていきましょう。

 オルドビス紀という日本ではあまり馴染みのない時代におこった大絶滅について、これまで紹介してきました。その大絶滅の原因として、新たな説が提唱されました。
 2017年5月に、Geology(地質学)という雑誌に、
A volcanic trigger for the Late Ordovician mass extinction?
Mercury data from south China and Laurentia
(後期オルドビス紀の大絶滅は火山がきっかけか?
南中国とローレンシアからの水銀のデータ)
というタイトルの論文が掲載されました。発表者は、アメリカのアマースト大学やワシントン大学、そして東北大学の研究チームが発表したものです。
 この論文では、試料をアメリカと中国のオルドビス紀の堆積岩から採取し、水銀(Hg)に注目して分析しました。その結果、地層の中で3つの層準で水銀が濃集していることがわかりました。
 この論文において重要な点は、「アメリカと中国(米中)」「3つの層準」と「水銀の濃集」ということです。
 「米中」とは、現在、太平洋を挟んで2つの離れた位置ということです。アメリカの位置はMonitor Rangeというところで、中国はWangjiawanというところです。現在は遠く離れているのですが、オルドビス紀き形成された地層ですので、その時代にどのような位置関係にあったが重要になります。
 大陸の移動は、それぞれの時代で復元されています。オルドビス紀には、アメリカのMonitor Rangeは、ローレンシア大陸の東海岸で赤道付近に位置していました。中国のWangjiawanは、南極やその周辺に広がっていたゴンドワナ大陸から離れた赤道の少し北に南中国大陸(大きな島)にありました。両大陸の間には、パンサラッサという大きな海洋が入り込んでいました。つまり、両地点は、赤道付近ではあるのすが、地球の反対になるような位置関係でした。遠く離れた地点でした。
 「3つの層準」の層準とは、時間の違いを意味します。地層が形成される時、新しいものが上に堆積しているので、地層の一枚一枚の上下関係は、時間の違いを意味します。層準が違うとは、上下の違う位置の地層のことで、地層の形成時代が違っているという意味で使われます。この論文では、3つの層準とされているので、3つの時代で水銀が濃集が見つかったことになります。
 「水銀の濃集」の水銀は、もともと地表に少ない元素です。通常の堆積岩からできている地層は、水銀が少なくなります。ではなぜ、もともと地層に含まれていないような水銀が、濃集するようになったのでしょうか。その原因の推定が、この鍵となるところです。
 離れた2地点で、3度にわたって、地表でできた地層に、なぜ水銀が濃集したという謎を探る必要があります。そして、なぜ、それらが大絶滅と関連するのでしょうか。その謎解きは次回としましょう。

・努力・
現在、私の学科の学生が
教員採用の2次試験にむけての対策を
自主的に取り組んでいます。
いろいろなタイプの試験があるのですが、
いくつか訓練しておいたほうがいいものがあります。
教員もあいている時間で、協力しています。
学生たちも練習を繰り返すことで上達していきます。
またそこでした努力は、きっと将来報われすはずです。
でも、学生は将来より明日の結果に
向かって努力しているのでしょうが。

・帰省・
8月になりました。
北海道は、夏らしい日が続きます。
日中の研究室は暑いですが、
日陰は涼しいですし、
朝夕は窓を閉めなければ肌寒いくらいです。
そして、なんといっても大学の講義が
すべて終わり、あとは定期試験と採点です。
そのドタバタも今週で終わらせます。
来週は家内と私の実家に家族で
帰省することになります。
暑い時に横浜と京都です。
バテなければいいのですが。