2017年6月15日木曜日

6_142 女性研究者の比率

 今回は、少々、趣の違ったエッセイとなります。女性の社会進出についてです。日本での女性の社会進出が促されてきましたが、研究の世界では、どなっているでしょうか。そしてその原因は?

 女性と男性は、性差があり肉体的には明らかに違いがあるので、社会や家庭の役割の違いはあることでしょう。しかし、先進国では、個人の個性、志向、嗜好、信条など多様性を認めていく社会を目指す方向に進んでいます。一方、女性と男性で能力や適正の違いがない分野では、男女の果たす役割は同等であるべきでしょう。それを慣習や「社会常識」として差があるとすれば、修正する必要があるはずです。その修正を社会や組織にまかせていくとなかなか進まいことでしょう。
 日本では。アベノミクスの「成長戦略」の中で、「女性が輝く日本」がとり上げられ、女性の社会進出が重要課題の一つに挙げられました。それに関係した「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」が2015年に成立しました。組織内での女性の情報公開(見える化)が、国や地方公共団体、民間企業に義務付けられました。妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置義務など、女性の進出を促す政策もだされました。これらいくつかの法律により、女性が個性や能力を発揮できる社会の実現のための方針がだされました。これらがどれほどの効果を持つかは不明ですが、女性の社会進出は、以前から言われていますが、具体的に政策や数値目標が示されたのが一歩前進でしょう。
 研究の世界は、どうなっているでしょうか。研究の能力に男女の差はないはずです。ですから、半々の比率になるのが、理想でしょう。ところが、大学を思い浮かべても、女性が皆無の大学はないと思いますが、女性が占めている比率は少ないように見えます。実態は、どうでしょうか。
 学術出版社のエルゼビアが、論文の著者に関して調査をしました。それによると1996年からの5年間に発表された論文で、日本での女性著者の比率は、15%でした。2011年から5年間の最新の統計では20%になりました。日本では順調に女性の進出が増えているように見えますが、その比率は、調査された12ヵ国の中では、最も低いものでした。
 最新のデータで見ると、ポルトガルとブラジルが49%、オーストラリア44%、カナダ42%、アメリカとイギリス40%、メキシコとチリ38%なっています。いずれも日本より多く、半数近くになりつつあります。それと比べて、日本の比率はかなり低いといえます。そしていずれも国でも以前の調査に比べて増えています。
 研究分野での女性進出促進政策は進められています。「第5期科学技術基本計画」では、新規採用の研究者の女性比率を、30%まで高めるという目標を掲げていますが、どうなるでしょうか。そもそも、研究者の供給源となる大学院の男女の比率が対等になる必要がります。その前の大学の学部でも対等になるべきでしょう。理系の女性比率が対等になる必要があります。そこに原因があり、対策が必要になりそうです。
 ところが、政府は、国公立大学を理系に重点をおき、私立大学に文系をまかせるという考えを見せています。研究者養成である大学の属性に、差をつけようとしているのです。そうなると、養成される研究者の属性が、イビツな比率になっていくのではないでしょうか。研究者のピラミッド全体が、男女の比率で適切になるべきではないでしょうか。どうも政府のやり方に、一貫性が見えないようですね。

・夏へ・
6月も半ばになりました。
北海道も夏が深まっています。
快晴のときは、本当に心地よいですが、
朝夕は冷え込みがあります。
雨の日は、まだ肌寒く感じる日もあります。
季節は着実に夏に向かっています。
北海道の初夏の風物詩になった
5日間に渡るYOSAKOIも先週、終わりました。
いよいよ夏に向かっていきます。

・原因の連鎖・
我が学科では、男女比は日本の平均となり、
多くもなく少なくもなくですが、
半分にはなっていません。
大学全体では、女性比率はもっと少くなくなっています。
多分、多くの大学、研究所の組織で
女性のかなり低い比率をもっていることだと思います。
大学の教員の採用時、性別をつけることなく
業績や実績にて審査がおこなわれます。
大学の女性比率を考えて、性差をつけると、
そこに差別がはいることになります。
ですから、応募者の比率が半々になっているべきでしょう。
そのためには、研究者養成や大学で男女比が
半々になっていくべきでしょう。
どこまで原因の連鎖が続くのでしょうかね。