2017年3月23日木曜日

2_144 最古の化石 1:古い化石

 あるニュースが報道され、その後、それが真実として検証されたどうかについては、知らずにすましていることがよくあります。印象の強いものを記憶しがちで、仕方がないのでしょう。最近、最古の生物が発見されニュースになりました。はたしてその化石は本物でしょうか。

 2つの地域から最古の生命の発見について報告されました。その内容を紹介していきます。新発見の紹介する前に、これまでの最古の生命化石について、基礎的なところからみていきましょう。
 このエッセイでも何度か紹介しましたが、古い化石の認定はなかなか難しいしいものです。なぜなら、古い化石は、多くの人が想像する化石とは、全く違うものだからです。
 化石というと、骨や歯、貝殻、葉っぱなどの化石を想像します。これらは生物の体の一部です。さらに、恐竜の足跡も化石として扱われ、しばしばニュースにもなることがあります。生物の這い跡や巣穴など、生物が生活していた跡も化石とされています。多様な化石があります。
 しかし、ここで示した例は、いずれもかなり進化した生物の体の一部や生活痕です。あまり進化していない生物は、殻や骨、歯などをもっていません。多細胞ですらないのです。
 多分、最古の生物は、柔らかい体を持った単細胞生物だったはずです。ただし、単細胞生物でも群れや集合体になっていたことはあるかもしれません。これからの単純ば生物は、私たちが化石で想像した生物の形態、生活とは全く違ったものだったはずです。
 最古の生物探しは、単細胞生物の痕跡を探すことになります。化石は、堆積岩から見つかります。この条件は、化石を探すときに重要な手がかりとなります。最古の単細胞生物は、海で誕生したはずです。なぜなら、現在の生物の体をつくっている物質を化学的に合成するには、水が不可欠となるからです。地球には、少なくとも38億年前から海が存在することがわかっています。38億年前まで最古の生物の探査はできるはずです。
 残念ながら、最古の38億年前の海といっても、液体の水がそのまま残っていることはありません。海底でたまった地層を探します。もちろん、火山灰や、池や湖、砂丘の砂のように陸地でたまる地層もありますが、多くの地層は海底でたまったものです。海でできた物質が現在の陸地に地層としてあり、それを地質学者が発見するのです。ですから、最古の化石は、最古の地層から見つかるはずです。
 ただし、すべての地層に化石が見つかるわけではありません。地層の中にうまくすると化石が見つかる程度で、多くの地層には化石はありません。最古の化石も、地層から、運ければ見つかるかもしれないのです。ただ、ひたすら探すしかないのです。
 さらに、単細胞生物が、最古の化石となる場合、生物をつくっていたからだがそのまま残っているわけでありせん。体をつくっている有機物は、時間がたてば分解してしまいます。しかし、成分のほんの一部が、もしかすると残っているかもしれません。その痕跡が、生物しかつくれないものであれば、生物の存在を間接的ですが、証明したことになります。そんな化学物質をバイオマーカー(生物の痕跡)と呼んでいます。
 最古の生物探しは、基本的にはバイオマーカーを根拠にすることになります。

・最古の化石探しをする人・
生物を扱う生物学だけでは、
最古の化石を探すのは難しいものです。
なぜなら、生きた生物ではないからです。
地層の中に含まれている痕跡を探さなければなりません。
地質学の素養がなければなりません。
しかし、地質学だけでも難しいものとなります。
なぜなら、バイオマーカーは微量の成分を
精度良く検出、測定しなければなりません。
分析の能力も問われます。
最古の化石探しをする人は、
そのような能力を持った人となります。

・そのような季節・
大学は卒業式も終わり、
次は、新入生や新学期に向けての
準備のツメの時期となります。
私達の学科では、新4年生が実習にいくための
準備の授業が集中してはじまりました。
その講義を担当をしていますので、
なかなか忙しいものになります。
ですから、この時期、
他の仕事は、全く進まなくなります。
でも、しかたがありません。
そのような季節なのですから。