2016年9月8日木曜日

1_148 隕石と大気 3:27億年前

 隕石と大気、それも過去の大気との関係を調べた報告を紹介します。今回の報告では、27億年前の大気組成を推定したというものです。直接過去の大気組成の測定はできないので、どうしても間接的になりますが、なかなかニュニークな方法です。

 イギリスの科学雑誌「Nature」の5月12日号に、
Ancient micrometeorites suggestive of an oxygen-rich Archaean upper atmosphere
(酸素に富んだ太古代の上部大気を想定させる古い微小隕石)
という表題の論文として、オーストラリアのモナシュ大学のトムキンズと共同研究者たちによって報告されました。
 隕石(宇宙塵)は、オーストラリアのピルバラ地域の27億年前の石灰岩から発見されました。調査した岩石からは、60粒の隕石が見つかりました。隕石の保存状態も良かったようで、落下時の化学組成が残されており、27億年前の情報が読み取ることできました。
 27億年前という時代も、地球の歴史におては重要な意味がありました。というもの、地球に酸素が急激に増えてきたのは、24億年前あたりからで、それ以前は、大気中に酸素はほとんどなく、今とは全く違う大気の組成の時代でした。現在の大気中の酸素と比べると、その量は0.001%以下だったと考えられています。
 そもそも過去の大気組成を、直接分析することは、なかなか困難なことです。残された地層の状況から間接的な情況証拠で示されたり、シミュレーションなどによる推定によるものになっていきます。
 27億年前という時代は、落下した隕石の年代としても最古(これまでの記録より10億年近く遡る)となり、それだけでも価値があります。しかし、報告には、それ以上の意義がありました。隕石から、当時の大気組成を見積もったことです。
 では、どのようにして、過去の隕石から大気組成を見積もることができたのでしょうか。それは、この微小隕石ができる過程に秘密があります。
 もともとは大きな鉄隕石だったものが、地球の大気圏に突入する時、摩擦で溶けて、小さな粒になったというのです。今日と同じような大気の密度であれば、隕石は75から90kmの上空で溶けたと考えられます。溶けた後、冷えて固まった時、大気と反応して、その状態を記録したと考えられるのです。
 その詳細については、次回に。

・野外調査・
和歌山の調査から5日(月)に帰ってきました。
台風の合間の晴れの期間が、調査の日程とピッタリと合いました。
予定していたところは、一通り回ることができました。
非常に幸運でした。
1週間も調査していると、何日かは雨に降られます。
そんな時は、予定通りに、調査は進みません。
重要な場所を見る時は、天気が非常に心配になります。
時には干満の様子も調べていかなければなりません。
干潮でも、海が荒れていたら行けないところもあります。
今回もそんな所があったのですが、
なんとか無事たどり着くことができました。
満足できる調査になりました。

・著書出版・
ライフワークにしている研究のひとつが
この度、成果として実を結びました。
2月から執筆していた著書が、野外調査中に印刷され納品されました。
出勤して、早速、受け取りました。
少部数の印刷ですので、最初は自費出版を考えていたのですが、
公費で賄うことができました。
PDFでも、データを貰う予定ですので、
一般にも配布しようと考えています。
少々、専門的になりますが、
「地質学における分類体系の研究」
というタイトルの本です。
PDFファイルが送られてきたら、アドレスをお知らせします。