2016年5月12日木曜日

3_152 マントルの内部構造 5:核

 マントルの内部構造の紹介だったのですが、この際、核も紹介していきます。とはいっても、核はまだわからないことが、多いようです。それでも、新しい仮説は、今も提示されています。

 このシリーズは、マントルの内部構造についての紹介なので、核については書く予定をしていませんでした。しかし、ここまでマントル内部の深い部分までみてきました。前回は、マントルー核境界(CMB)やその直上に存在する謎のD"についても紹介してきました。そうなると、次はどうしても核について知りたくなります。ということで、今回は核の概要を紹介していきましょう。
 残念ながら、核については、マントルの下部よりさらに分からないことも多くなっていきます。深くなると、高温高圧の合成実験も難しくなります。地震波の解像度にも限界があります。そしてなにより、実証がしにくくなります。それでも、新しい仮説は生まれています。
 まず今まで知られている核の概要を、紹介しておきましょう。すでに紹介しましたが、地震波の縦波と横波の伝わり方の違いから、外核が液体で、内核が固体であることがわかっています。地震波の速度から推定される核の物質の密度は、岩石よりずっと大きいものからできています。さらに、隕石と比較から、金属鉄を主としてニッケルを少し含むと考えられています。精度の高い地震波速度の測定から、純粋な鉄ーニッケル合金よりは、密度が小さいことがわかってきました。密度を小さくするための成分として、硫黄や酸素、珪素、水素などが候補になっています。
 外核で、伝導性のある金属鉄が流動するので、電気の流れが生じ、それが磁力を発生していると考えられています。このような仮説を地球ダイナモ理論と呼ばれています。地球では磁力が、昔から常に存在していたことが古地磁気学からわかっています。そのことから、外核は、古くから液体として存在し、継続的に対流していることになります。
 対流の原因は、何度もでてきましたが、熱の放出です。核の熱放出は、当然、マントルを通じておこなわれます。核の熱が、マントル対流の原因ともなります。ただしCMBは物質境界であり、物質移動はほとんどないと考えられています。ですから、CMBでは、熱の受け渡しだけが、おこなわれる境界となります。
 核内とマントル内の熱の運搬は、対流によって起こります。しかし、CMBでは熱だけが受け渡されることになります。ここからが、新しい考えが導入されます。それはプルームテクトニクスです。プルームテクトニクスでは、マントル内の物質の対流は、定常的ではなく間欠的に起こることになります。このCMBの物質の不連続と、マントルの対流運動の不連続性が、なかなか複雑なメカニズムになります。少し説明しましょう。
 核からマントルへの熱の流れは、このシリーズで紹介してきたスーパーホットプルームになります。このプルームは、一度形成されると数千万から1億年のスケールで活動を続けます。一方、核を冷ますためのプロセスは、コールドプルームが担うはずです。コールドプルームも数千万年から億年で、冷たい沈み込んだプレートが、相変化により、遷移帯から落下していきます。
 落ちるコールドプルームから上昇するスーパーホットプルームは、どちらが原因で、どちらが結果かわかりません。しかし、物質の運動が、プルームテクトニクスでは、連続的はなく、間欠的な運動になっているのです。
 さらに、マントル内の遷移帯から落ちてくるコールドプルームは、2000度ほどだと推定されています。通常は4000度ほどあるCMBにおいて、コールドプルームの落下が起こると、大きな温度勾配ができます。この温度差が、外核を冷やしていきます。これが核の対流に、大きな影響を与えているはずです。その影響は、まだ充分観測されていないようです。
 CMBでは、連続的な熱の流れではなく、コールドプルームが温まると対流を起こす効果は減少します。そして新しいコールドプルームが別のところに落ちてくるたびに、核の対流に大きな変化が起こるはずです。
 この複雑さ不規則は、地球表層で地質現象として残っていないのでしょうか。それは、核や古地磁気の観測精度が悪いためでしょうか。それとも、このマントルの熱対流システムと核の関係の理解が、間違っているのでしょうか。まだ謎のままです。

・夏に向かって・
北海道はゴールデンウィークがあけけてから
急に暖かくなりました。
ゴールデンウィークには、少々肌寒い日があると
我が家ではストーブをたいていました。
しかし、今は、もう半袖の学生を見かけます。
うちの次男も、暑い暑いといって
自宅内では、もっと前から半袖と短パンでしたが。
いよいよ、北海道も夏に向かっています。
春の花、新緑と非常にいい季節になっていきます。

・好奇心・
核については、地質学者や岩石学者はあまり口出しできません。
でも、気になるところでもあります。
なぜなら、マントル対流の原因が
核にあることは明らかだからです。
そして、核とマントルの物質のやり取りが
全くないのか、それとも少しでもあるのか。
もしあるとすると、スーパーホットプルームで
どうのような成分として検出できるだろうか。
そんなことを考えてしまいます。
手の届かない深部や、見えないところを
なんとか覗きたいという気持ちが誰にもであるはずです。
深部は、好奇心がくすぐられるテーマでもあります。