2015年4月23日木曜日

5_126 APT 2:最古の年代と疑問

 この論文は以前紹介しています。今回の目的は、その技術と装置の説明をするつもりでした。「最古」の話題は、このエッセイでは、何度も取り上げてきました。本題と少しずれるかもしれませんが、「最古」に関してこれまで書いてきたエッセイのまとめと、それに関連する質問を紹介します。

 前回は、APTを用いた論文のタイトルにある術語の説明をしました。この論文は以前にも紹介しているので、地質学的な内容に関する詳細はそちらを参照していただきたいと思います。「最古」については、「地球のささやき」で何度か取り上げてきました。私が興味をもっているテーマでもあるからです。まずは、これまでの「最古」の情報を、まとめておきましょう。
 地球最古の「岩石」は、かつてはカナダの北西準州のアカスタ地域のトーナル岩の約40億年前のもので、私も調査にいきました。しかし現在では、もっと古い岩石が見つかっています。「1_82 最古の岩石 1:ちょっと前の最古」(2009.10.29)のシリーズで紹介したカナダのケベック州北部ウンガバの「偽角閃岩」です。「偽角閃岩」という不思議な名称ですが、斑レイ岩の一種だと思っていください。詳細はエッセイを参照してください。この岩石は、Sm-Nd法によって、42.86億年前という年代がでました。
 最古の「鉱物」に関しては、「1_6 最古の鉱物のもつ意味」(2001年2月8日)や「1_12 最初の固体」(2001年10月4日)などで紹介しています。この鉱物は、西オーストラリアのジャックヒルの約30億年前の堆積岩の中にある鉱物の粒でした。鉱物はジルコンで、44億0400万年前という年代をえています。また、今回紹介する論文も、その鉱物の年代を検証したもので、「1_124 最古の認定 1:最古の信頼性」(2014.05.01)のシリーズで紹介しています。
 最古ではないですが、古い鉱物や岩石の年代としてジルコンを用いて報告されることがあります。これは、ジルコンが頑丈な鉱物であること、年代測定に利用できるウラン(U)が多く含まれていることです。ジルコンは頑丈で少々の変成作用でもジルコンは残ります。また、半減期の長い238U(44.68億年)と短い235U(7.038億年)を組み合わせて年代測定をする方法が利用できます。内部で少々の元素移動は起こっても補正可能です。しかし、マグマができるほどの高温になれば、ジルコンも溶けてしまいますので、存在自体がなくなります。
 古いジルコンの存在に疑問を感じたMoさんから質問を受けました。冥王代のあとに起こった後期隕石重爆撃(LHB)があったとされています。その詳細は「1_105 LHB 1:ないことの意義」(2012.08.09)のシリーズで紹介しています。Moさんの疑問は、LHBのエネルギー(運動エネルギー)よって、地殻が数kmの深さにわたって溶解してしまうのではないか。もしそうなら冥王代のジルコンが残っていることが疑問だという指摘です。
 重要な指摘です。次回、回答を紹介していきます。

・情報・
私は、古い岩石に興味があり、
その情報については、注意を払っていました。
ただ、身近に同業の地質学者がいないので、
なかなか最新情報を入ってこない環境であります。
それがつらいところでもあるのですが、
まあ、いろいろ思うところがあって
この環境にいるので仕方がありません。
自分で選んだ道でもありますから。

・急がずに・
このシリーズの元の論文は、
以前に紹介したものでした。
ですから、今回は、その技術や装置を
紹介しようと考えてスタートしたのですが
どうも脇道にいっているようです。
APTは製品としてもあるのですが、
その分析能力がすごいので、興味がありました。
APTを調べてみたいと思ってテーマにしました。
しかし、なかなか本題にいけないのですが、
まあそんなこともあるでしょう。
急がず、ゆっくりと進みましょう。