2012年2月9日木曜日

5_100 隕石年代 3:合成鉱物

科学は、いろいろな発想でおこなわれます。その発想のなかに、既存でないものはつくれというものがあります。「つくる」という言葉は、いろいろな字があてられますが、そのすべてが科学の発想の現場では使われます。今回の発想は、「創る」でしょうか。

 炭酸塩鉱物として、方解石(炭酸カルシウム、カルサイトとも呼ばれています)がよくみられるものです。カルシウムとイオンとしてのサイズが似ているものとして、マグネシウムやマンガンがあります。カルシウムとマグネシウムが混じっている苦灰石、ほとんどマグネシウムになっているものは菱苦土石(炭酸マグネシウム)、ほとんどマンガンの菱マンガン鉱などがあります。いずれもよくある鉱物です。
 一方、マンガンには、半減期370万年の放射性核種(質量数53の53Mn)があり、クロム(53Cr)にかわります。このような放射性核種は、今の太陽系に材料をもたらした超新星爆発によって形成されたものです。短い半減期のものが、なくなるまでに鉱物とりこまれ、崩壊でできた核種も鉱物にのこされているようなものであれば、それは年代を決めるために利用できます。53Mnが炭酸塩鉱物として取り込まれた後、崩壊して53Crになっているものがあるとすると、超新星爆発後、非常に短い時間で鉱物ができており、その年代を決めることができます。
 Crには、もともとからあった53Crも含まれています。それに53Mnが崩壊して加わった分があります。この崩壊による53Crが量、過剰分を、正確に測定できれば、年代測定に利用できます。原理と実際の測定とは違います。
 まず、分析の精度を上げるために、放射性核種の比を用いることがあります。分母には8割をしめる52Crを用いて、53Crを分子で測定します。分析は二次イオン質量分析計を用いるのですが、Crの同位体比はある程度精度よく測定できます。
 Mnの量が多いと、53Crの量も多くなります。その見積もりは、Mn/Crの比によって決められるのですが、実は、この比を精度よく測定することが難しかったのです。
 違う元素同士の比であるMn/Crは、正確に比のわかっている試料(標準試料)と未知の試料の測定をして、補正して決めていかなければなりません。未知の試料が炭酸塩鉱物であれば、標準試料も炭酸塩であるべきです。ところが、Crを測定に充分な量を含んだ鉱物はありませんでした。それが、精度を上げることができない理由でした。
 今までの研究でも測定はされてきたのですが、精度が悪く、太陽系の年齢より炭酸塩鉱物の方が古いという、矛盾した結果もありました。
 藤谷さんたちの今回の研究では、クロムとマンガンを含んだ炭酸塩鉱物を、人工的に合成しています。もちろんMn/Crが正確にわかったものをつくっています。それを標準試料として分析に用いたのです。なかなか面白い発想ですが、多分、合成にはいろいろな苦労があったのでしょう。
 その結果は次回としましょう。

・雪まつり・
先日、久しぶりに2、3日、暖かい日が続き、
道路との雪が溶けて、べちょべちょになる
春のような陽気となりました。
でも、すぐに寒さと積雪で冬に戻りましたが。
札幌では今週から雪まつりです。
いつも一番寒い時期なのですが、
今回の温かさの影響はなかったのでしょうか。
我が家では、雪まつりはテレビでみることにしています。
以前、出かけたこともあるのですが、
人が多くて、寒い日だったりすると、
誰かが風邪をひいてしまいます。
だから、テレビだけで見ることにしています。

・与えられた時間・
大学では後期の定期試験も終わり、
現在は、大学の入試の時期となっています。
もちろん、大学教員はそれだけではなく、
レポートやテストの採点、評価。
来年度のシラバスの作成などが必要となります。
講義がない分、時間はあるのですが、
締め切りや大きな校務がつぎつぎとくるので、
落ち着かない時期もであります。
では、いつ落ち着いて研究ができるのかというと、
?????となりますね。
与えられた時間は公平ですから、
どう使うかだけが問題となるのでしょうね。