2011年8月18日木曜日

6_94 課題:レアアース5

 レアアースの大量の資源の発見は、日本とって、そして人類にとって非常に明るい話題となりそうです。しかし、このシリーズ・エッセイの最後に少々苦言を呈したいと思っています。今後の課題とすべきことです。

 前回、海洋底の堆積物には大量のレアアースが含まれていること、それが有望な鉱床になりそうなことを紹介しました。その報告は、公海の広大な海洋底で、日本の領海内でもそれなりの資源量になりそうなので、日本にも人類にとって、いいことづくしのようです。しかし、手放しに喜べることばかりではなく、いくつかの課題がありそうです。それを考えていきましょう。
 まずは、堆積物が深海にあるということです。今回見つかったのは、3500~6000mほどの深さの海底です。そのような深度から、堆積物をどう効率的に回収するかという技術的課題があります。今、レアアースの価格が高騰してしています。半年で3倍にもなったようですので、かなりの設備投資は可能でしょう。紅海で1979年に、2000mの海底の鉱床を採掘するという開発テストがおこなわれたようです。ですから今の技術をもってすれば、6000mの深海からでも採掘が可能であろうと、加藤さんらは述べています。まあ、鉱業は経済的、技術的に可能であれば、実用化は案外短期間になされるかもしれません。しかし、現実に採掘可能かどうか、まだ不明です。
 次に、廃棄物の処理の問題です。レアアースを取り除いても海底の堆積物だ残るだけで有害な廃棄物はでることはないのですが、堆積物をそのまま海に戻すのは十分慎重になるべきです。細粒の物質(混濁物)を大量に海に流すことになります。もしかしたら海洋全体の生態系に、大きな影響を与えることもあるかもしれません。環境評価を十分検討なしに、開発を進めることはもってのほかでしょう。何らかの処理をして戻すにしても、海上で捨てるのではなく、深海に直接戻すべきせしょう。なぜなら、海上でばらまけば、深海底にそのまま貯まるわけではなく、海流に乗って広範囲に懸濁物をばらまくことなるかもしれません。
 そこまで配慮されたとしても、まだ深海の不可知の領域で環境破壊が起こる可能性があります。人類にとって深海はまだまだ未知の世界が広がっています。一部地域では、不思議な生態系があることがようやくわかってきましたが、まだまだ調査の目が届いていません。そこに、鉱業的に大規模に採掘が進めば、未知の生態系があったとしても破壊されるかもしれません。採掘後の環境回復の確認は、それなりに手間もかかるでしょうが必要となります。
 採掘することは、広域に堆積物をかき混ぜることになります。その行為は、非常に長い時間かけて蓄積されてきた貴重な記録を、ことごとく破壊してしまうかもしれません。深海底の堆積物は、長い時間かけてたまったものです。学術ボーリングによって、その堆積物が回収され、過去のタイムレコーダーとして重要な役割と果たしてきました。今回加藤さんらが調べたボーリングコアも学術目的でおこなわれたものを利用しています。ある資源だけ回収のために、ある国や企業の営利のために、野放図に採掘を進めていいのかということです。さらにいえば、上での述べたような様々な問題だけでなく、目先の利益のために、自然の資産を一気に食い潰してもいいのだろうかという疑問があります。
 加藤さんらの報告は、研究としてなされたものです。これは非常に重要な意義のある成果です。それをすぐに資源開発や営利目的、経済活動に結びつけるのは、慎重にやる必要があると思います。ただ、そこから先は科学者だけの判断ではないでしょう。政治や経済など複雑な要因があるでしょう。
 私は、レアアースに関しては、ふんだんにある素材を用いた代替技術の開発を優先すべきではないかと思います。日本、いや人類は、常に発展、経済成長を目指していますが、少しの停滞や我慢も必要なのではないでしょうか。そんな余裕とゆとりをもって技術開発はできないでしょか。最小不幸ではなく、最大幸福(≠最大利益)を目指すべきではないでしょうか。福島原発を教訓とすべきではないでしょうか。

・日本人の志・
科学と政治の役割分担が不明瞭になってきました。
技術を考える時、どうしても経済がからみます。
科学と政治が近づきすぎ、なんらかの関係ができ、
その関係が本来の役割より重要性を持ってしまいます。
その関係が本来の役割を歪めてしまいます。
悪循環を断ち切るためには、勇気が必要でしょう。
そのためには、金銭に執着することなく、
本質を目指す志が重要になることでしょう。
そこには強い精神力が必要になります。
多くの日本人が忘れてしまった心が
必要になるのでしょう。

・猛暑過ぎ・
北海道は暑さのピークは過ぎたようです。
昼間はまだ暑いですが、
朝夕は涼しく、北海道らしい快適な時間になります。
今週で大学の成績評価などの校務が終わります。
大学は夏休みから復帰します。
ただ、私は校務から解放され、
溜め込んでいた仕事にかかります。
少々溜め過ぎで、けっこう大変ですが、
頑張るしかありません。
今週は校務と休養をここらがけましょうか。